人は音になるの?〜WRECKING CREW ORCHESTRA『BEAT BUMPER』感想〜

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2014年8月23日(土)〜24日(日)、六本木ブルーシアターにて、WRECKING CREW ORCHESTRA(レッキンクルー オーケストラ、以下「WCO」)の公演『BEAT BUMPER』が上演されました。その感想を書いていきます。

WRECKING CREW ORCHESTRA BEAT BUMPER
開演前の説明「撮影可、フラッシュ禁止」「フラッシュが出てしまうか不安な方は私を撮って試してください」という説明がとてもわかりやすく親切でした。

私がWCOを見るのは、昨年(2013年)末の『COSMIC BEAT』以来の2回目です。その時も思ったのですが、WCOを見ると、ふと、どうしようもなく悲しくなる瞬間があります。
そんなこと、ありませんか?

公演『BEAT BUMPER』とは?

2003年に旗揚げし公演活動を始めたWCO。10年目にあたる2013年に、新作として大阪で上演されたのが、この『BEAT BUMPER』です。東京では今回初の上演となります。
WCOの公演は、セットを組むものやストーリーのあるのもなど、毎回趣向が異なります。今回はダンスそのものをみせる公演。セットも無く、演目によって椅子がある程度。このシンプルさが美しい!

WCOといえば、おなじみ「光るダンス」ですが、本公演でもEL SQUAD演じる光るダンスがたっぷりと登場します。
では、ここからは特に印象に残った演目を取り上げていきます。

オープニングナンバー

この公演は、激しくパーカッションの鳴る音楽と、それぞれのソロではじまります。
この選曲が意外でした。
オープニングで使われていたのは、マーチング・バトルを描いた映画『ドラムライン』のマーチングシーンで使われた、『マーチング・メドレー』。その名の通り、マーチングバンドが奏でる曲です。

アナログなバンドの音が、セットのないシンプルなステージによく似合い、小細工の無いまっすぐな力強さを感じます。
曲前半のパーカション中心の部分では、そろって踊るのではなく、一人一人違う踊りをします。激しく動き、高く飛び、それぞれが打楽器みたいにはじけて圧倒されました。

何も無いステージに驚き、この先この公演がどんな色に染まっていくのか、とてもワクワクしました。

手拍子と足踏み

この公演では、手拍子と足踏みで観客が参加できる演目があました。

U.Uさん、HANAIさん、TAKEさんの演目で、観客席を上手と下手にわけて、片方には手拍子をさせて、もう片方にはその場で足踏みと手拍子をさせてます。そして最後に合奏でできたビートで3人が踊ります。
上手と下手で別のことをするので、合わさった時のおもしろさがあったし、私たちが作ったビートがダンスのきっかけになるので、達成感がありました。

これをやりながら「劇場の良さだなぁ」と思いました。
この公演は着席指定席でした。席で自分のスペースが確保されているから、周りにぶつかることを気にせずに手拍子ができる。着席だから体の弱い人でも思いっきり足踏みができる(運動が苦手な私でも転ばずに足踏みができる!)。
他の演目で公演中ダンサーが客席通路に出てくるシーンが結構ありましたが、これも通路が確保されている指定席の劇場だからできることです。

以前、エムオン!の「Dancer’s WORLD」というダンス番組でYOKOIさんのインタビューが放映された時、公演をはじめた時の心境として、「当時HIPHOPをイスに座ってみること自体もうダセーよ!みたいな感じだった」「老若男女皆がイスに座ってダンスを楽しめる」ものを目指したと話していました。
それを思い出して「ああ、楽しいなぁ。きっとこういうことなのかなぁ」と、WCOの目指すものに触れた気がしました。

ところで、この3人の演目で、手拍子や足踏みをする前に、しばらく椅子を使って踊る場面があります。ここのTAKEさんがすごくおもしろいんです。
順番に一人ずつ、椅子を持ってステージに現れます。衣装はハットをかぶったシンプルなもの。
TAKEさんは最後に登場してきます。しかし、かぶっている帽子がメキシコ帽子のソンブレロ。 他にもコック帽だったり笠だったり。
出てきてババーンとポーズを決めては「なんか違うな」というジェスチャーをして帰っていきます。

特にコック帽姿の時は手にオタマを持って、ジャンプして舞台に飛び出してきます(文字通り)。そのジャンプの高いこと高いこと!
TAKEさんは、たたずまいというか、かもし出す空気がおもしろいという発見がありました。

YOKOIさんのソロ

公演のところどころでメンバーのソロナンバーが披露されました。
その中で、ピアノバージョンのマイケル・ジャクソン『Human Nature』を使ったYOKOIさんのソロがすごくすてきでした。

まず、速く、美しく、正確に動く技術のすごさがあります。しがしそれ以上に、もがくように踊るYOKOIさんの姿に心を打たれました。
この曲は、部屋から出られない運命の主人公が、外の世界である街に憧れて「神様はどうして僕をこうしたんだろう? なぜ?」と嘆く曲です。
ピアノバージョンなので、歌詞や言葉は無いですが、ダンスを通じてこの曲の持つ苦悩や悲しみが流れ込んできます。
曲が終わりに近づくにつれ、だんだんYOKOIさんのダンスも静かになっていき、もがくことをあきらめてしまったように見えて、とてもやるせない気持ちになりました。
そして曲が終わり動きが止まった時、何かが死んでしまったような気がしました。

YOKOIさんのソロの時は、観客が一つの固まりになって、じっとYOKOIさんのダンスに見入っているのを感じました。圧巻でした。

EL SQUAD

衣装についたELワイヤーを光らせながら暗闇で踊るWCOの代表作、「光のダンス」について考えていきましょう。
『BEAT BUMPER』では、王冠をつけたダンサーが中央で踊るおなじみのタイプの他に、スーツとハット姿の演目『PHANTOM』が披露されました。
光のダンスは世界が確立されているので、ダンスや演出の巧みさを超えて、いろんな想像をかき立てます。

もともと、「ELワイヤー付き衣装を着たダンサーが踊っている」という感覚で見ていたのですが、何回か見ているうちに、中のダンサーの存在を忘れて「あれはああいう生き物」みたいな感覚になってきました。

すると考えてしまうのは、「なぜ?」ということ。
「この光る生き物はなぜ生まれてきたんだろう?」「なぜ光るのだろう?」「彼らは敵なのかなのか?」などなど。疑問が生まれてきます。
『BEAT BUMPER』を見るまでは「近未来の新興宗教のお祭りダンス」のようなイメージを持っていました。
例えば真ん中で踊るダンサーについて、衣装の王冠のデザインがインディアンの酋長みたいだとか、中央に登場してきた時の、おなじみの姿勢を低くして首をカクカク傾ける動きが、獅子舞みたいだと思っていました。
他にも、半身を光らせて膝を抱えて空中浮遊のように見せる時の姿勢が、胎児みたいで神秘的だと思っていました。

WRECKING CREW ORCHESTRA BEAT BUMPERつまりこんな感じです。
戦争により文明が失われた未来の地球で、ひっそりとELワイヤーを光らせる技術を受け継いだ集団がありました。彼らが神をたたえたり、人々を威かくするために踊ったのがあのダンス。そんな設定を勝手に作ってました。

でも、『BEAT BUMPER』では別の仮説が浮かびました。
光るタイヤの車に乗ってご機嫌にドライブするシーンがあったので、彼らは私たちの住む現代社会と割と近いところにいる、気のいいやつらなのかもしれない。
一方EL SQUADが観客席の通路に出てきて走り回るシーンがあり、私は通路側の席にいたので顔をのぞき込まれ、すごく怖かったです。彼らは悪いやつらかもしれない。
でもひょっとしたら、ただのいたずら好きで、本当は人間と仲良くなりたいのかもしれない。そう思うと、後から「怖がるべきではなかったのでは?」と少し後悔をしました。

『PHANTOM』の方は、衣装が気になります。人間もEL SQUADもスーツ姿ですが、EL SQUADの方は衣装のポイントとして腕章がついています。

過去に上演された『PHANTOM』

この腕章がまた意味ありげに思えてしまいます。腕章をしているのはきっと、特別な役割を表しているのでは?と考えたくなります。
生身の人間として舞台で踊るWCOに対して、EL SQUADは人間の理性や善意を表しているのか? 「こうなりたかった自分」を表しているのか? もしくは彼らの生死をつかさどる死神だったりして……などなどいろんな想像が膨らみます。

ラストナンバー

『PHANTOM』が終わり、公演はそのままラストナンバーであるダフト・パンク『Get Lucky』に続きます。
これが何といっても泣けてくるんです!

例え公演のプログラムがわからなくても、全員で踊るナンバーなので、これがラストだと曲のはじまりでわかります。すると、公演が終わってしまう寂しさ、ラストナンバーの高揚感、ダンスのかっこよさなど、いろいろなものが混ざり合って、とにかく心がかき乱されました。

その上この曲は歌詞に「All ends with beginnings」(終わりはすべて、何かの始まり)という言葉が読み込まれています。
楽しい公演が終わるのは寂しいです。でも、WCOが「さあ、元気をだして」と現実に戻るのに優しく背中を押してくれている気がして、熱いものがこみ上げてきました。

振付がまたかっこいいんです。
曲の展開に合わせて、どんどんいろんな動きが出てきます。その一つ一つが、素数みたいにランダムで特別。次にどんな振付がくるのか予想ができません(突然YOKOIさんボーカルのエアバンドが披露されたり)。「この音でその動きをするんだ!」という意外性があるのに、音楽とぴったり合っていて、胸にすっと入ってくるんです。

思うに、WCOが8人全員で踊っている時、私たちが見ているのはここなんですよ。

WRECKING CREW ORCHESTRA BEAT BUMPER

一人一人の「個」に対して、重なってる部分はこんなに小さいのに、こんなにすごい!
全員で踊るパートを見ていると、今目で見えているダンスはきっと氷山の一角で、見えていない部分にも、それぞれのダンスのすごさ・個性・哲学などなどが、ものすごくたくさんあるんだろうと、びんびんと伝わってきます。


記事のはじめに「WCOを見ると悲しくなる瞬間がある」と書きました。
悲しくなる理由の一つは、私がWCOを見て、「はかなさ」を感じるからなんじゃないかと思います。
「屈強な男性達が身体能力を駆使してダンスやお笑いに取り組んでいるのに、どこがはかないんだ?」と思うかもしれませんが、WCOを見てると、「この人たちはこのまま8人音楽と溶け合って、消えてしまうんじゃないだろうか」と思ってしまう瞬間があるんです。それがはかなくて、悲しいんです。
今回の『BEAT BUMPER』では、ラストナンバーでそれをとりわけ強く感じました。
きっと、音楽やダンスの持つ力やチームメイトを心から信じて、おおらかに心を開いているから「溶け合ってしまいそう」と錯覚するんでしょう。

WCOの方々は年齢的に私より一回り上で、人生の先輩です。そして、見ていると「こういう大人になりたい」と憧れを感じます。
社会人になり、その後年齢を重ねて感じるのは、自分が守らなければいけないものが生まれてきて、それを守るために自己主張しなければいけない機会が増えたり、人と利害の衝突が増えたということです。数年前は、何をやるにももっと自由でした。

「譲れないものがある」といえばかっこいいですが、そのせいで自分は、刃にあたった物はなんでも刈り取ってバリバリと進んでいく芝刈り機のような人間になってしまったなぁと思ったことがありました。
「はかなさ」とはまったく違います。だからWCOを見て「こうありたい」と願ってしまうのです。

WCOは来年春に新作公演を発表します。そちらは今回の公演と打って変わって、大掛かりなセットを組んだものになるそうです。精力的にさまざまな表現の公演に挑戦するWCO。次回の公演も楽しみです。

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ストリートダンスと女性アイドルの熱いファン。
サークル・KAFLY(http://kafly48.minibird.jp/)で女性アイドルのミニコミ誌を定期発行しています。今一推しのアイドルは東京パフォーマンスドールの橘二葉ちゃん。
苦手な食べ物はなすびとマンゴー。

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