ヒップホップの文化、歴史、種類など詳しく知りたい人はこれを読むべき!ゼロからはじめるヒップホップ読書4冊をわかりやすくレビュー

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本日のコラムは、書評です。ヒップホップに関する以下の4冊を順にご紹介します。

『文化系のためのヒップホップ入門 』 長谷川町蔵・大和田俊之
『ヒップホップはアメリカを変えたか? もうひとつのカルチュラル・スタディーズ』S.クレイグ ワトキンス
『ヒップホップ・アメリカ 』ネルソン・ジョージ
『ヒップホップ家系図 vol.1(1970s-1981)』エド・ピスコー

本を読もうと思ったきっかけは、あるヒップホップダンサーの方の言葉。「ヒップホップは単なるダンスの1ジャンルではない。音楽・文化・ライフスタイルを全部ひっくるめたもの」。それを聞いた時から、「じゃあ、多くの人が目指し・憧れるヒップホップとは、そもそも何なんだろう?」と疑問に思うようになりました。
今回紹介する4冊は、Amazonのレビューを見たり、図書館や書店で実物を手に取って見ながら選びました。読んだ順に感想を交えながらご紹介していきます。

■『文化系のためのヒップホップ入門 』 長谷川町蔵・大和田俊之

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1冊目に読んだのがこの本です。
「文系」「入門」というタイトルを見て、「私のための本だ!」と思って読みました。ヒップホップの楽しみ方を知ることができる1冊です。
「楽しみ方なんて人それぞれ、本で学ぶ物ではない」と思うかもしれませんが、この本は私が以前からヒップホップに対して持っていた疑問に、わかりやすくおもしろく答えてくれました。

この本は、ライターの長谷川さんとアメリカ文学者の大和田さんの対談形式で書かれています。
長谷川さんが、「興味があるのに聴き方がわからない、どこから手を出せばいいのか分からない」と感じている人を想定してレクチャーを行い、大和田さんは聞き役として初心者の気持ちを代弁してくれます。
章立てとしては、初めにはヒップホップの創生期を語り、その後は東・西・南の地域に分けて、楽曲やアーティスト、曲が生まれた背景などを解説していきます。

対談なのでテンポ良く読めます。会話自体もおもしろいのも、入門者にはありがたいところ。
例えば、ヒップホップが誕生した時期の有名なエピソードとして、クール・ハークが屋外パーティ(ブロック・パーティ)でDJを行いブレイクビーツを発見したというのがあります。これを、クールハークがムキムキに体を鍛えていたことから「ジャイアン」に例え、屋外パーティが妹の洋服代を稼ぐためのものらしいことから、「ヒップホップはジャイアンのジャイ子への愛から始まった」と語ります。
こんな感じで、日本人になじみやすい例をたくさん出しながら話を進めてくれます。

本の終盤、「第6部 ヒップホップとロック」「第7部 ヒップホップの楽しみ方」では、独自の視点でヒップホップを日本人になじみのあるものに例え、その世界をわかりやすく解説します。
何かに例えることはそれそのものを見つめているわけではないので、邪道だと思う人もいるかもしれませんが、私はこの章で以前からの疑問が解決しました。

私がそれまでヒップホップに持っていたイメージは、お金、女性、暴力などへの欲望をそのまま言葉にしたような過激なラップや、大量のアクセサリーとブランド品で身を固めた高級ファッションなどです。それが即物的な気がして、価値観が理解できず、なじめないものを感じていました。
そんな私の疑問にずばり答えてくれたのが「第6部 ヒップホップとロック」。
この章では、ヒップホップを「資本主義に参入していくための手段」と解釈します。だからラップのリリックにお金が出てくるし、成功したラッパーは高級品を買う。本の中の言葉を借りると「そこに自己矛盾はまったく無い」。
普通に暮らしていると、自分の野望は胸に秘めてしまいがちですが、その点ヒップホップというのはとてもまっすぐで、裏表のない音楽なのかもしれません。だから聞くとなんだか力が沸いてくるような感覚があるんじゃないかなぁと思いました。
他にも発見がたくさんあり、第6部と第7部は興奮しながら読みました。

こうしてヒップホップを楽しみ方を学んだ私は、次の本へと読み進めたのでした。

■『ヒップホップはアメリカを変えたか?もうひとつのカルチュラル・スタディーズ』S.クレイグ ワトキンス

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この本のテーマは、ヒップホップがアメリカ人の暮らしにどのような影響を与えているか。前半はヒップホップの誕生からメジャーになるまでを振り返り、後半ではメジャーになったヒップホップが、アメリカ人の暮らしや政治に影響を与えた事例が紹介されています。

と書くと、ヒップホップが政治やビジネスに利用されるネガティブな想像をするかもしれません。が、そうではありません。
草の根団体の運動がヒップホップ世代の若者の協力で成功したエピソードや、黒人の女の子が自分たちのための雑誌を作るエピソードなど、ヒップホップにより若者の視野が広がり、自分たちで考え、行動する例が紹介されています。彼らの成功ストーリーは、読むと心が震えます。
本を通じて、著者の「ヒップホップはアメリカを変えたか? いやいやもっと変えられる!」という熱い意思が感じられます。

前半である4章までの第1部では、ヒップホップの黎明期から、2003年あたりまでのヒップホップの音楽ビジネス史が書かれています。
音楽史というより、音楽ビジネス史といった方がしっくりきます。というのも、ヒップホップレーベル設立の経緯や、当時の制度や法律が音楽業界にどのような影響を与えたかがくわしく書かれているからです。それにより、ヒップホップが社会に揺さぶられながら支持を得ていく過程がわかります。

取り上げられているエピソードはおもしろいし、訳もシンプルで読みやすいのですが、私があまりにも無知すぎるので、固有名詞が章をまたいで出てくると「これなんだっけ?」と思ったり、人名なのかレーベル名なのか混乱してしまったりだったので、気になったエピソードと章番号をピックアップして年表を作りながら読みました。

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せっかくなので清書しました。各項目の横に書いてある数字やアルファベットは出てきた章です。(P=プロローグ、I=イントロダクション、1〜4=第1章〜第4章)

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前半である第4章まではだいたいこのようなエピソードが取り上げられているので(もちろん他にもあります)、ピンとくるものがあれば読んでみることをオススメします。

後半である第二部では読み心地がガラッと変わり、2000年以降、大衆に支持されるようになったヒップホップが、アメリカの政治や若者にどのように影響を与えているか書かれています。

印象深かったのは「第7章 『私たちの未来は、いま、ここにある!』」。「ヒップホップ市長」のあだ名がついたデトロイト市長・キルパトリックについて書かれた章です。彼はエミネムのライブ映像にも出演しました。
「エミネム」「デトロイト」といえば、思い出すのは映画『8 Mile』。以前この映画を見た時に、なぜ主人公・ラビット(エミネム)以外は黒人ばかりが出てくるのか、ラビットから感じる底なしの投げやり感は何なのかと思いました。それが、この本でデトロイト市の抱える問題を知り、理解することができました。

この本で直接ダンスが取り上げられているわけではありませんが、漠然と「自分のダンスを社会の役に立てたい」と考えている人、ダンスに関係なく何か社会の役に立ちたい人、だけど自分に合った行動の仕方がわからない人には、本の中にヒントがあるかもしれません。

■『ヒップホップ・アメリカ 』ネルソン・ジョージ

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著者のネルソン・ジョージさんは、長くアメリカで音楽ライターをされている方。前に紹介した2冊でもこの著者の名前が出てきたので、「これは外せない」と思って読みました。

著者は、十代のころはブルックリンの屋外DJ盛んな地域で育ち、その後は仕事で最先端の音楽の現場に身を置く、まさに生き字引。
ヒップホップに関する本は数あれど、創生期の重要人物であるアフリカ・バンバータ、クール・ハーク、グランドマスター・フラッシュを3名まとめてインタビューした経験がある人物が書いた本は、そうないでしょう。その著者が、リアルな思い出を交えてヒップホップのトピックを語っていきます。

内容は濃く、幅広いです。
一般的な同サイズの書籍にくらべると、一回り文字が小さいです。さらにページも多いので、合計文字数は結構なものだと思います。しかし頑張って読むといいことがある。

この本の良いところは、著者の生の体験談が読める点。
例えば、著者がファッションの動向をさぐるためにハーレムのアパレルショップを覗き有名ラッパーと遭遇したエピソードでは、当時のヒップホップの現場の雰囲気がわかります。
また、ある女子大の公開討論会に呼ばれた時に、女性蔑視要素のあるラップを批判したところ、女子学生からラッパーを擁護する意見が多数出て驚いたエピソードでは、アメリカの若者達がラッパーをどのような存在と思っていたかがわかります。

うなりながら読んだのは、「第3章 ギャングスタ・ラップの真相と深層」。暴力的で過激なギャングスタ・ラップの歌詞は、従来の道徳観や美意識とはずれたもの。ではなぜ、ギャングスタ・ラップがあんなに支持されたかを、当時のドラック事情や人々の心理から生々しく解説します。
特にここで書かれている、コミュニティがいわゆるホモソーシャルっぽいものになっていく集団心理は、読んでいて「なるほどな」と思いました。

私がこの本を読み始めて、本題に入る前から「いいなぁ」と思ったのは、著者がこの本について「ヒップホップとアメリカとの間の愛憎関係であり、そしてヒップホップとぼくとの愛憎関係でもある。」と書いているところ。
「愛」がある故に、著者は愛情が感じられないヒップホップの批判記事を読むと、どんなに正論が述べられていても腹が立つそうです。そういう感情的な部分を見せられると、私の気持ちは懐いてしまいます。
反対に「憎」もあります。著者はヒップホップを愛していますが、時々その考え方や表現に共感できないところもあり、そこは本の中でも批判的に書かれています。
しかし、長年音楽業界の最先端にいた著者だからこその見識ある意見が書かれていて、それも一つの意見として勉強になります。
何でもかんでもアメリカのヒップホップの出来事を肯定するのではなく、自分の中で「私はどう考えるだろう?」という問題提起が生まれます。

■『ヒップホップ家系図 vol.1(1970s-1981)』エド・ピスコー

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最後にご紹介するのは漫画です。CDショップの書籍コーナーで見つけ、物珍しさから購入しました。オールフルカラー。風合いのあるラフ紙。A4よりもちょっと大きな大型本。ムード満点のアメリカン・コミックです。
「漫画でわかる○○」のような実用的なものではなく、アート性の強いマンガ。
漫画が約90ページ分あって、1970年代のヒップホップの誕生から1981年春までの出来事が、絵巻物のように描かれます。ストーリーに派手な起承転結があるわけではありません。ヒップホップ誕生の時代を生きたたくさんの登場人物とその交流関係を、糸を手繰るように連綿と描いていきます。
キャラクターの描き分けや、コマの端のちょっとした小ネタに、著者のヒップホップ愛を感じます。

漫画なので、どこまで事実なのか判断しかねる部分もありますが、漫画だからこそわかることもあります。
例えば1970年代は、音楽はレコードで売られていた時代でした。有名なエピソードで、アフリカ・バンバータは自分の使用しているレコードを他のDJに知られないよう、ラベルを貼り替えていたというものがあります。
現代人にとって音楽はPCやプレーヤーに入っているものですが、物として大量のレコードを持っていたDJにとって、その管理は大変な物。部屋一面につるされたラベルと、かごにどっさり入ったレコードという絵を見て、アナログ時代の凄まじさを感じました。
4冊目として読みましたが、あまりにも発見が多くて、自分の無知さを改めて知りました。
漫画というのは、やはりあなどれません。


本を4冊読み、まだまだヒップホップの扉を開けた段階ですが、何となくヒップホップについて感じたのは、「みんなでたくましく生きる」ということ。
仮に社会に不満があったとして、世をはかなんで一人自殺するのはきっとヒップホップ的ではないし、ものすごくラップやDJなどのヒップホップの要素に長けていても、無人島で外からの情報を遮断して、培ったものを誰にも披露せず自分だけのものにしていたら、それもヒップホップ的でないような気がします。
人から影響を受け、人に影響を与え、そうやってみんなと一緒に進化していく感覚が、ヒップホップには流れているように思いました。今後この感覚が正しいものか、見聞を広げて確認していきたいです。
そして、ヒップホップを知ることにより、ダンサーが表現したいものを、より深く理解できるようになっていきたいです。

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ストリートダンスと女性アイドルの熱いファン。
サークル・KAFLY(http://kafly48.minibird.jp/)で女性アイドルのミニコミ誌を定期発行しています。今一推しのアイドルは東京パフォーマンスドールの橘二葉ちゃん。
苦手な食べ物はなすびとマンゴー。

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