ダンスイベント

半世紀生きてもまだ進化が止まらない!「50祭」レポート

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開催日
2018年 02月 03日
場所
渋谷SHIDAX CULTURE HALL
ジャンル
公演

2018年2月3日渋谷SHIDAX CULTURE HALLにてダンス人生50歳を記念したストリートダンスエンターテイメントショー「50祭」を開催した。160名程度の小ホールで手の届く距離で行われた今回の舞台のキャストは、HORIE、YUKI、YANAGI、TAKEO、KAGIYA、HIDEBOH、DJ mikimasaと、ストリートダンスがネーミングされ細分化される以前、映画によって入ってきたHIPHOPから、ファッションとしてのHIPHOP、ダンスの一ジャンルとして広がったHIPHOP、エンターテイメントとしてのHIPHOP、それぞれの時代・段階で手探りで多くの選択肢を創り上げてきた重要人物たちだ。日本のダンスシーンのみならずエンターテイメントシーンを牽引してきた豪華なメンバーにより50歳という節目を祝う全身全霊のエンターテイメントが披露された。客席にも日本中から各地域・各ローカルダンスシーンのキーマンたちが集まる豪華な舞台となった。

映像による回顧で盛り上がるワクワク感

オープニング映像ではレインボーブリッジの見える公園に集まり、各々のダンス人生について語り合う。ショーを成功させまたここで合おうと誓い、ジェイムズ・ブラウン(JAMES BROWN )の「Get Up」が流れ出しショーが始まる。六角形の舞台で、ただ立ち位置に集まりルーティーンを始めるも、この1ステップ1ステップに背景や歴史があるのだな、と重みを感じさせる。HORIEのコールアンドレスポンスに待ってましたとばかりに客席も声を出し、キャストの名を呼び、ステージと客席の空気が混ざる。HORIEのラップでは故・YOSHIBOWの名が出るなど、ダンスの教養があればさらに楽しめるサンプリングが舞台中いたるところに埋め込まれていたことが見て取れる。
 舞台は映像をはさみながら進んでいく。映像の中ではそれぞれが質問をし過去を語り合い、想いや哲学を語り、称賛しあう。「これから」を聞かれると、それぞれがダンスにかかわる想いとして、このまま踊り続けたい、ネクストステップに進みたい、家族を幸せにしたいなど、ありのままの気持ちを語り合い、客席も大きくうなづく。技術やネームバリューだけでなく、ついていきたいと思わせるカリスマ性や人柄が、その言葉を語る表情からあふれ出ていた。

ダンスだけでなく芝居にも挑戦!ショートショートは話題どころ満載


映像の後は「HORIE式80年代HIPHOP専門学校」と称し、6人のダンサーたちがメインで芝居が始まる。ダンスマナーとして大切なものはなにか、という大喜利からはじまり小気味良いテンポでボケとツッコミを繰り返しては会場を笑わせていた。数多くメディアに出演してきたHIDEBOHやHORIEだけでなく、全員が役者としてセリフの間や発声も整っており、DJ mikimasaが絶好のタイミングで効果音を鳴らす。間違いを拾って笑いに変える台本や天丼など笑いの定石がふんだんに盛り込まれ、ダンス、ラップ、モノボケなどお互いに無茶ぶりをしては堂々と笑いに変えてゆき、なんとYUKIとHIDEBOHによるGIRLS HIPHOP、そしてYANAGIとKAGIYAによる恋ダンスまで披露され会場から大喝采が起きた。ダンスとダンスの間に挟まれるこの芝居は、HIDEBOHのMCによる客いじりや手品、YUKIによるマイムなど笑いどころ満載で、サプライズもふんだんに盛り込まれていた。

職人?達人?圧巻のソロ


ダンスのアスリート的な側面から言っても、身体は年々動かなくなっていく印象があるが、6人のダンサーたちは全くその気配を見せない。VTRで個人の経歴やジャンル、所属チームが紹介され始まるソロショーは、気持ちの良い音どりから指先のこだわりまで匠と言わんばかりの技術に加え贅沢に各ダンサーを定義づけるムーブを繰り出す。
パンキングの第一人者として一世を風靡したKAGIYAはSOUL、LOCK、WAACKのステップやアームスイングを用い、弾力感と精密さが混在するムーディーなソロを見せつけた。YANAGIのソロは達人と言わんばかりの切れ味抜群のハードヒットとバイブレーション、時折見せるセクシーさや音楽に合わせた表情・表現が観る者を深淵のような世界に誘い込む。ボディーウェーブや膝の強さも健在だ。一番年齢に影響を受けそうなB-BOYINGだが、TAKEOは軽快なエントリーからのブレのないパワームーブを披露。脚の開き具合や綺麗なエートラックスに客席から「すごい!」との声が聞こえてきた。YUKIのソロは丸椅子を車のハンドルに見立てたクリエイティブなテーマではじまる。ステップを中心としたスマートで正確無比なダンスと、丸椅子という小道具の不安定さ逆手に使った見事なソロだった。HIDEBOHは曲に合わせて持ち前の高速タップとワイルドな振付、いくら足が動いてもぶれない上半身の浮遊感とどこから音が出ているのか理解しがたい不思議さ、世界レベルのタップダンスに鳥肌が立つ。DJ mikimasaのスクラッチショーケースは既存の曲からリズムを崩し新しいリズムを創り出す。ソロだけでなくイベント中も端々で行ってきたであろう選曲、縁の下の力持ちとして分厚い存在感を見せつけた。HORIEはオリジナルのラップを用いたライブで会場を沸かせる。コールアンドレスポンスのような客席との輪唱、おしゃれで瞬間的に爆発するダイナミックなダンスは、幽玄なHIPHOPを体現していた。

終盤での全員によるPOPPIN’でのルーティーンではHIDEBOHがヒットを打つ姿を見ることができるだけでなくまさかのDJ mikimasaもステージに上がり、見事なBOOGALOOを見せるサプライズ。最後はHIDEBOHが振付し世界中で話題となった座頭市のタップダンスシーンの楽曲「Festivo」のリミックスで踊るという粋な選曲。ダンサーたちに後光が指して見えた観客も多いのではないだろうか。

奥田民生率いるカリスマバンド「ユニコーン」がメンバーの生誕を祝ったイベント名も50祭で、ユニコーンは自分たちを半世紀少年ともじっていた。まさにこの日集まったダンサーたちも、少年の遊び心と長年のダンスキャリアで培ったものをリミックスし、最高の祭りを創り上げてくれた。公演は昼の部、夜の部と行われたが2回公演とは思えない惜しみなく全力を披露してくれた50歳のダンサー達は、エンターテイメントとしてわかりやすさや楽しさをシンプルに追究しこの日の公演を成功させた。六角形のステージで踊った6人と1DJだが、六角形はハチの巣など、自然界で一番壊れにくい構造だ。DJの音楽という蜜の詰まった強固な六角形のステージは、六人をはじめとした先人達が創り上げた今日のストリートダンスシーンの象徴のようだ。また、HORIEは舞台前日に腰を痛め、立ち続けると全身が痺れてくる状態でこの舞台に臨んだ。舞台に挑戦してくれただけでもファンや後輩たちからすればリスペクトしかないうえ、そんな痛みを全く感じさせないショーケースで目の肥えた観客を存分に楽しませてくれた。終演後、数名のダンサーに感想を聞いてみたが皆口をそろえて「面白いしカッコいいとしか言えない」と語っていた。公演後もアフターパーティが開催され、大いに盛り上がったようだ。

83世代。ダンスライター。中学から独学でダンスを始め、三重でダンスを中心としたイベントや舞台を主宰。プログラミングからメディアアートまで趣味を持ち、現在は講師業の傍らいいダンスを世界に広めるダンス批評を執筆中。イベント告知などどんどんお寄せください。