【Dewspeak vol.05】ヒップホップシーンに絶大な影響力を持つ関西のカリスマHONGOU(HEXBEX)

長きに渡り関西ヒップホップシーンを牽引するチーム「HEXBEX」に所属、ダンスは勿論の事そのライフスタイルそのものがシーン全体に絶大な影響を与えて続けている人物HONGOU。ダンサーとして第一線で活躍する傍らダンススタジオ経営や、様々なコンセプチュアルなイベントをオーガナイズ、自身のアパレルブランド「MAPLE COMICS」を運営、近年はオンリーショップを立ち上げるなどその活動は多岐にわたる。絶大な影響力ある彼のダンスやブランド等々はどのような想いやバックボーンから成り立っているのか?また現在のシーンをどのように見ているのか?等、東京にて同じくダンスを軸に様々な活動を展開し続けてきたTAKUYA(SYMBOL-ISM)が本音を引き出す!


TAKUYA
以前に俺とHONGOUはやってる内容は違えど、同じようなアプローチしてますよね、みたいな事を言われた事があり、それはなんだろうなって考えたことがあって。で、パーティーやイベントを始め、ショップ、スタジオ・・・つまりダンスじゃない部分とダンスを結びつけてカルチャー全体を盛り上げたい、しかもそこに一貫してブレない自分の色を出していきたい、みたいな動きをお互いに形は違えどしてるのかなと。
で、なんでHONGOUはそういうやり方でやっているんだろう?とかなぜそうすることにしたんだろう?とかね、そういう部分を引き出してみたいなと思って。

はじめたキッカケと初期時代

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TAKUYA
ただそうは言ってもまずはHONGOUのバックグラウンドを聞いていきたいなと思ってて、自己紹介じゃないけど。俺も細かい部分は正直知らなくて。
例えば俺ら2000年代は「JAPAN DANCE DELIGHT」で一緒だった時とかね。あと俺や代々木とも親交が深いMETH(XXX-LARGE)がいたから「HONGOUってやつがいるんすよ」みたいな話も昔から聞いてて。その辺の時期からは知っているんだけど初期はやはり知らなくて。どう始めて、どうなんだろうみたいなのをちょっと最初に聞いてみたいんだけど。

HONGOU
ダンス始めたのは高校ですね。メンバーのKUCHA君が一緒の高校で。

TAKUYA
大阪の?

HONGOU
いや、滋賀県です。滋賀出身なんです。
KUCHA君がダンスやるって言ってて、「お!いいな!とりあえず、俺も一緒に行くわ!」って、そこからですね。KUCHA君も一緒の大阪芸大で。けど大阪芸大っていっても、結局田舎なんですよ。もう滋賀と変わんないんですよ。アメ村出るまで1時間ちょっとみたいな。

TAKUYA
ほぼ県外だね。

HONGOU
県外ですね。もうすぐ奈良みたいな感じですね。

TAKUYA 
その時はどういうスタイルを踊ってたの?

HONGOU
ヒップホップです。ずっとヒップホップです。

TAKUYA
それは影響元っていうか、先生はいないの?

HONGOU
滋賀県の時は、ダンスの先生っていうのがほとんどおらんくて。細かく言うならば一人だけ、KEISUKEさんの後輩にあたる人。nylonのコータさんですね。

TAKUYA
KEISUKEさんとはBUTTERFLYの?

HONGOU
はい。ちょっとお世話になってたって感じですね。レコ屋で商品を全部はけて鏡のないところでレッスンしてました。
1,000円でコーラ付き。

一同
(笑)。

TAKUYA
でもいい環境だね。

HONGOU
鏡ないから、まあまあって感じですけど。

TAKUYA
鏡があるとかないとかで言うと勿論いい環境とは言えないかもだけど、考え方によってはレコードとかに囲まれてて。レッスンの環境というかヒップホップ的環境だね。

HONGOU
そうですね。
その後、その練習してたダイナミックレコードっていうところが壊れるってなって、次は、MOVEっていう滋賀県のクラブでレッスンを始めたんですけど、そこも鏡がないんですよ。
要は鏡がないところでしかレッスンしてなかったですね。今思えば。(ダイナミックレコードは今もあります。)

TAKUYA
なるほどね。その後、大阪に出てからは師匠はいないんだ?

HONGOU
そうですねー。基本いないんすかね?
KEISUKEさんのレッスンにはKUCHA君がよく行ってたから、チョイチョイ顔は出しに行きました。

TAKUYA
それは正にBUTTERFLYの時代?
スタイルに関しては、BUTTERFLYとかキーワードが出てるけど、踊り方自体は全然違うよね?
どっちかっていうと、俺のBUTTERFLYの印象って歌モノとかで柔らかく地に足つけて踊る感じでさ。けどHONGOUどっちかっていうと。

HONGOU
んー、少し違うんすかね?
でももう少し、跳ねてますかね。

TAKUYA
大阪のその時代で言うとGANG JAPとかの方が近いんじゃない?

HONGOU
かっこいいと思ってました。。。
いや、好きやったですよ。ラッパーしてたオキ君とか、GANG JAPめちゃかっこよかったすね。でもGANG JAPの人らは、俺らが大阪のシーンにお邪魔しに行った時に、もう結構みなくて。
でも覚えてるのは俺がクラブの入り口で入ろうとしてたら、オキ君が「はぁ~おもんない。ちょっとパンク狩りしてくるわ」とか言ってました。ギャグやと思いますけど(笑)!!

TAKUYA
怖(笑)!

HONGOU
パンク人たちがその当時アメ村でいっぱい居たんで、なんかちょっとパンク狩りが流行ってたんですかね。

TAKUYA
何の話だよ。

一同
(笑)。

HONGOU
けどBUTTERFLYって意味ではよくクラブに連れて行ってくれたんはKEISUKEさんですね。すげー連れ回してくれたんは。感謝しかないです。

TAKUYA
なるほど。

HONGOU
あの人、根っからのクラバーなんで。

ダンスとカルチャーについて

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TAKUYA
HONGOUはブランドとかをはじめ多角的にやってるよね。スタジオもやって、勿論ダンスチームHEXBEXもやって。
ここからは個人的な印象なんだけど90年代、俺らが子供の時、大人を見た時に、何というかトッポイ人とか言うのかな、エッジの効いた人がシーンのトップにいて影響力もあって、格好いい服も着て、格好いい音楽も知ってて、みたいな全部セットでアンテナ高い人たちがシーンのトップにいた印象があって。確かに夢見させてくれたっていうか。
で俺も俺でダンスだけじゃなくやってる理由の一つとしては、こういう多要素があって、全部セットじゃないと意味なくない?ダンスって、みたいな考えがあって。
音楽一つをとっても、ダンサーってもっとアンテナが高かった。

HONGOU
確かに昔はDJの人らよりもダンサーの方が音を知ってたって話を良く聞きましたね。

TAKUYA
そうだよね。
なんかそういう匂いがHONGOU・・・他の人と比べるわけじゃないけど、そういうダンスだけじゃない全部で一つで、みたいなアプローチを今の時代にしてるのが面白いなって思うんだよね。

HONGOU
結果、普段自分が遊ぶ人って、所謂ダンサーじゃなくなりましたね。いつも遊ぶにしても、クラブ行くにしても、どこに行くにしてもダンサーじゃない事が多いですね。知らんことも色々喋ってくれるし、バイブスも高いし。

TAKUYA
何年か前にHONGOUに呼ばれて行ったイベント「LOST BLOCK」とか正にダンサーだけじゃなくあらゆる人達、要素巻き込んでてコンセプチャルで面白かったなと。

そこにはMC漢とかHIDDADYが金網の中でバトルとか。今のメディアでのラップブームに関係なくさ、もうあの時期に既に仕掛けてあってみたいなさ。ああいうものをダンサーが集まる中で見せていくって健全な形だよね、俺から見たら。
本来予算だけで言ったらそういう部分てダンサー的には掛ける必要もないかもしれないじゃん。ダンスだけで完結しても人がいっぱいにもなるし、変な話。けどそこは見せたい!そこに掛けていくっていうのが良いなって。

HONGOU
純粋にかっこいいものを、いろんな物を見て欲しいんですね。、今のダンサーの感覚が面白くない気がしてて。色んな場所には色んな感情があるのに。
もちろん全員ではないんですが、でも面白い人なんて少ないです。
自分をプロモーションする力が全くないんじゃないかなって。自分を作るというか、自分を魅せるというかその感覚が全くない人が多くて。チームを長く続けることもできないし。
そういう所が出来て、作れる物でもあると思うんですよ。

TAKUYA
なるほど。

HONGOU
昔とかそんな話ばかりしたらダメかもですけど、昔って漫画みたいな人ばっかりだったじゃないですか?今とか漫画にするような奴って一切いなくて。ショーにしても昔はキャラ重視だったし、その方が見てて面白いじゃないですか?
例えば五人チームでデブ、ノッポ、チビ、メガネ、頭切れる奴、女の子。ドラえもんで言ったらしずかちゃんみたいなのと粒が揃って一個の絵になるじゃないですか。
けど今はみんな一緒じゃないですか。なんでそんな一緒なん?みたいな。

TAKUYA
確かにね。

HONGOU
例えば、セッションするとかよくあるじゃないですか?練習会とか。練習会を否定してるわけじゃなくて、自分のムーブの共有とか。なんでそんなそこで自分の全てをみせるん?そこまで共有するん?みたいな。凄い動きあったらちょいとマネしちゃったりするじゃないですか。逆に隠す美学もあるからみたいな。
俺はそう思ってしまいます。これは俺の動きやしフローやしみたいな。昔の映像と一緒ですね。いや、俺らだけで見るから共有しない的な。
凄いイケズすけど。

TAKUYA
隠す美学。

HONGOU
とにかく皆が一緒に見えてて独自のアンテナ張れてないような・・・。

TAKUYA
ダンス自体に関してはどうなの?誰々を見てるとかいうのはもうあまりないだろうけどさ。音からのものなのか、ファッションからなのかとか。わりと90sとかミドルっぽく括られちゃうじゃんHEX BEXて。けど俺から見るとHONGOUっていうかHEX BEXって90sとは全然違うように見えるし、新しい音楽とかガンガン使うし、むしろ新譜寄りだよね。

HONGOU
そうですね。新譜探しますね。みんなの使わないB面ぐらいのノリの。

TAKUYA
それはなんか90sの焼き直しみたいにはやりたくないみたいな意識?それとも新しいものから、何か得られるから面白いみたいな?

HONGOU
そうですね。基本は新しい方がいいですね。ちょっと、90sとか使っちゃうと頭がそっちになっちゃうじゃないですか?見てる方もなんかそんな感覚になっちゃうから、新しいのやったらこいつら何すんのやろとか、ワクワクさせることもできるし、その流れも作りやすいかなって。人の心を動かす感覚では新しい方がワクワクするかなあと思って。

TAKUYA
やっているブランド「MAPLE COMICS」もそういう感覚感じるもんね。
「MAPLE COMICS」は始めたのはいつごろ?

MAPLE COMICS : http://www.madebymelanin.jp/

HONGOU
MAPLEとしては10年。店出して3年かな。元々はサンプリングTシャツを作ろうみたいなノリから始めました。
一緒にやってるTAKENOはDJもやってる奴なんですけど。彼と知り合って服が好きっていうのをお互い思ってて喋ってたら、やろうかみたいな。
サンプリングTシャツから始まりですね。

TAKUYA
当たり前だけどデザインってこのカルチャーで重要な要素だよね。けどその当たり前と思っている部分がダンスシーンだとすごい抜け落ちてる気がするんだよね。
まあこういう美意識の話は難しいけど、、けど相対的に見て意識は低いような気がして。

HONGOU
そうですね。HIPHOPのダンスはダンス人口が増えるに伴い一人歩きしちゃって、HIPHOPダンスしてますって言ってる人全然HIPHOPじゃない人いますからね。
その延長上でダンサーは今カッコいいとは一般的には思われてない感じがします。なので自分は基本ダンサーがやってるっていうところを初めは隠したかったんですよ。ダンサーがやるブランドと言う事を。
ダンサーのイベントでの物販であったり、ファッションショーとかも全部断ってて。

TAKUYA
分かる分かる、ていうのもあれだけど、俺も正直さ、店やってるけどあまり自分がダンサーってことを使ってプロモーションしようって気にはならないんだよね。お客さんも9割は一般だし、そのつもりで始めたし。残念ながら今の時代でいうとスケーターが店出したらさ、別にイメージ悪くないのにね?

だけどさ、ホントはダンサーがカッコ悪いとは言わせたくないよね。色んな原因で確かにダンサーがクールなイメージが一般的に低いのは正直否めないかな。けど悔しいから良くしていきたいよね。

HONGOU
悔しいですよ。良くしていきたいすよ。もっとオシャレして皆んなクラブに行きましょう!!よ!!!!
バーカンでガン踊りしてるのとかあり得んし、そういう部分をかっこよくあしらったりとか。そういうところも含めダンスが活きてくると思うんすよね。観られるっていう行為で。そういうのが全く感じれない空間が多い気がする。

TAKUYA
極端な話いきなりクラブ入ってガンガンストレッチして踊り始める、みたいな。

HONGOU
いやもうダメですね。

TAKUYA
ていう考え方は、今のシーンとは程遠いところにいるだろうね。

HONGOU
そうですね。

TAKUYA
今更ながらシーンがスポーツ化していってる事は否めないもんね。

HONGOUみたいなタイプは例えばバトルに出て負けたとしても大して傷つかないじゃん?まあ一応は傷付いてもいるはいるのか(笑)。
けど何ていうかただ勝てばいいとは思ってなくて、何だったら、毎日そのものの方がバトルだし、毎日の演出の方が重要だし。だからとにかく優勝というものがカッコいい!となっている?今の若い子とはだいぶ考え方がズレてるかもね。いや若い子だけじゃないか?

HONGOU
どうなんすかね?

TAKUYA
自分的なかっこいい事で形創っていきたいし、まあかっこいいっていう言葉も人によってで色々あるけどさ。けどHONGOUそういった細かい所を拘ってダンスもビジネスもやってそうだなっていうのは出てるよね。

HONGOU
そうですね。ただお金儲けだけ考えてビジネスしようと思ったら、合わせに行きますもんね。
それだったらこのカルチャーの中でやらなくていいです。

遊びから生まれるクリエイティブ

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