「SNSじゃなくて直接伝えたい。」ダンサーKEITAが全国でワークショップをやる理由

STAFF
楽しいダンスから仕事のダンスになったわけですね。

KEITA
仕事のダンスが悪いわけじゃ全然ないんだけど、それが毎日継続して覆いかぶさるようになって本来の楽しむ時間がなくなってしまったんです。
そんなときに皆が練習してる深夜練にちょっと遊びに行ったんです。
そしたらそこで見た自分らの仲間がすごい楽しそうだった。
でも自分はここにいないんだなーって思って、ポツンとした感じになって、すごい大切なものを失った気になってしまいました。
なんか物質的なもので満たされてたけど、精神的なものを置いてかれちゃったなって思うようになって、そこでチームのありがたさとかを改めて知ることができたから、仲間に救われたなと今でも思っています。

STAFF
KEITAさんは仲間や繋がりを大切にするイメージが強いですがそういったエピソードがあったんですね。
現在は、何をメインで活動されているんですか?

KEITA
DREAMS COME TRUE(以下ドリカム)をバックアップするパフォーマーとして活動しながら、自分のダンスっていうものをショーケースやワークショップだったり色々な形で発信しています。
カリスマカンタローとかを見てるといい例なんだけど、ダンスっていうものから派生して、それを広げる作業っていうのは、スタジオで踊ってるだけではできないんですよね。
勉強しなきゃいけないし、色んな人と会って、何かを膨らます作業をしたり。
そういうのに自分も魅力を感じるし、今までは、ワークショップにしても自分の格好いい姿さえ見てもらえれば良くて、仕事としてできればよかったんです。
だけどそうじゃなくて、ある時から自分のやってきたことを人にしっかりと伝えたいと思うようになりました。
そう思った原因の一つとして、SNSが発達してTwitterでよく見るんですがダンサーが「こうあるべき」みたいなのをつぶやいてたりするじゃないですか?
ネガティブな表現の文章も多くて。それって少し違うかなとも思っているんです。

STAFF
確かに発信が容易いからこそネガティブも目立ちますよね。

全国ワークショップをやる理由


KEITA
ダンスも、「この曲を知らないんだったらヒップホップって言えない」とか、そういう持論をそこで表現するのがとっても嫌なんです。
それはダンスで伝えるべき。とはいってもダンスで伝えるってなかなか難しいじゃないですか?
だとしたら自分から出向いてワークショップの中で、自分の考えはこうなんだていうのをダンスと一緒に伝えたいなと。
それが去年からやってるワークショップの意味で、自分のテーマは温故知新というか古いものを調べて、それを新しく繋げるっていう作業がすべて先人たちへのリスペクトでもあるし、自分が先人になってもリスペクトとかもらえると思っています。
今の時代だからこそ、それをSNSじゃないところで伝えたいなって思います。
告知の方法としては、SNSとWEBっていうのはもちろんフル活用しますが(笑)。

STAFF
その考え方はとても素敵だと思います。
やっぱり押し付けがましい発言やネガティブ発言を沢山する人は、どこか満たされてないものがあるのかなーと下の世代に不安を与えてしまうと思うんです。

KEITA
そうですね。けど自分も世代が上になってきて、その気持ちはすごい分かるんです。
「なんでそんなんも分かんないの?」って気持ちは分かるけど、やっぱり「分かんらないもんは分からない、興味ないもんは興味ない」んです。
なので自然と歴史を知らないことが格好悪い、知ってる方が格好いいと思われるシーンになるように伝えていけばいいと思うんです。
例えば、Cウォークのステップをやっている人がいて、女の子が「CウォークのCて何か知ってる?」って言ったときに答えられなかったら「知らないの?超ダサいんだけど」みたいになれば、男たちはみんな勉強するし自然と学ぶようになる。

シーウォーク (C-Walk)
ロサンゼルスのギャング「Crips(クリップス)」が敵対ギャングに勝利した時に相手の血をつま先に付けリズムに合わせ「C」の文字を書いたのが始まりと言われている。

そういう風になっていくのが自然だし、格好よくっていうので自分らも始めたから、伝えるべきことは、格好よく伝えるというのが大切かなと思います。

STAFF
ワークショップの話がでてきましたがSNSでも告知されてましたね。
去年からやられてるんですか?

KEITA
はい。去年、全く同じ時期に20か所ぐらい行かせてもらいました。
ただ去年のワークショップが終わったときにただ格好いい振り付けを持っていくだけじゃ他と同じで、“伝える”ということはできていない。というの感じたんです。
やっぱり今の自分が他のダンサーと違うものって経験値だと思うんですね。
アイデアとか、体のつくりとか、体力とかそいうのはそんなに違わないか、もしかしたら年齢が上がれば上がるほど下がっていくもの。そこももちろん一個の柱としてはいいけど、それをメインじゃなくて、自分の経験を来てくれた人に落とし込みたいんですよね。
例えば、世界を見た人には世界のことが伝えられると思うし、自分が経験した以外のことは伝えられない。
自分が経験したことは何かっていうと、さっきのMISIAの話じゃないけど、22歳の時にプロとしてのキャリアをスタートして、現在39歳まで17年間、それをずっと継続してきた。
あんまりない例だと思うんですよね。
お店や会社もそうかもしれないけど、1年、2年、5年、10年、続けることで全然違った意味合いを持つじゃないですか。
それを継続していかない限り、生活するっていうことはできないわけで、夢を描いて夢の中で生きていくっていうことと夢を達成するっていうことは似て非なるものというか。
継続していくのには、何が必要だったかとか、どうしてきたかとか、沢山失敗したけど、そういうことって皆に落とし込めるんですよね。
踊りの部分ももちろん大切。だけど自分が築いてきた仲間とのことだったり、自分のテンションを継続することだったりとか、そういうことを全部ひっくるめた、いわばダンスライフのワークショップみたいなことになったらいいなっていうのを考えていて、今年はそういう風にダンサーへアプローチしたいと思っています。

STAFF
確かにそうですね。
もちろん仕事がなくなってしまった人もたくさんいるわけですもんね。

KEITA
きっと20代後半ぐらいになった時に、一番ぶつかる壁がそこだと思うんですよね。
自分より下の世代が出てきてもっとフレッシュで、ムーブメントをつくるやつ、自分たちが除外されるような、追われる立場になってから。
自身もs**t kingzやKING OF SWAGのような若手のカリスマが出てきたときにそれを感じたんです。
不安感とかにすごくかられると思うんだけど、不安感をネガティブな方向じゃなくて、ポジティブな方向に変える。
その経験値をいかに次の世代に受け継がせる、サイクルをつくるじゃないけど、そういうことの一つとして、成り立ったらいいなと思います。

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