【新企画】ヒップホップショッキング:第一弾「太華(たいか)」編

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ダンスの世界とは切っても切れない関係にあるHIP HOPという文化。この企画は日本のHIP HOPにまつわる音楽シーンや、ストリートカルチャーに関わる様々な人物にとって「HIP HOP」とは何か?独断と偏見を交え、持論を語って頂くコーナーである。往年のお昼の番組の如く、そのバトンを「こいつはHIP HOPだぜ」と思う人物に繋いで行き、伝播させていく。

第一弾目となる本日は日本におけるヒューマンビートボックスの第一人者の一人であり、日本のHIP HOPミュージック界においてレジェンド的存在である太華(たいか)さんにお越し頂いた。

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太華(たいか)
MSC(エムエスシー)に所属するヒューマン・ビート・ボクサーで、SharLee(シャーリー)、櫻井響とのビートボクサーユニットであるケルベロスや、ケルベロスとAfra(アフラ)率いるIncredible Beatbox Band(インクレディブル・ビートボックス・バンド)による東京過呼吸倶楽部などでも活躍する他、多くのアーティストの作品に参加してる。また、数多くの有名ダンサーとセッションしており、各方面から絶大な支持を受けている。
太華:facebookページ

記念すべき第一回目、大いに語って頂こう。

「太華×HIP HOP」その出会いとは?

俺は昔からHIP HOPのことを解ってる訳でなくて、初めてHIP HOPに出会ったのはRUN DMCのIt’s Trickyとかいう曲で、それを出来立てのMTVで初めて見たときに、映像で見てんねんけども、ミュージックビデオっていう文化が出始めた頃で、俺が中学ケツぐらいかな。それでその時にRUN DMCのラップを聴いて、「わ、めっちゃ言葉の科学や」って思って。言葉を演奏しちゃってるっていう。母音を合わせなくちゃとかじゃなくて、分からん筈の、文章としておかしい筈のものが伝わっていってしまうのがライミングという手法で、要は法則性を持たせてスウィングさせていくっていう。文章として実はおかしくてもライミングによって情景が繋げられて、頭の中で勝手に思い描かれていくみたいなのがラップの面白さやと思うんやけど、それが初期衝動になって今でも続けてる感じやな。

大阪でくすぶってた頃はもう嫌うしか方法が無くて、逆にそれをモチベーションにしてた

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なるほど。正に衝撃的な出会いだったわけですね。ではあなたにとってHIP HOPとは何なのでしょうか?

楽しいね。HIP HOP面白い。日本語のラップに関しては俺はどっちかっていうたら、大阪でくすぶってた頃はもう嫌うしか方法が無くて、逆にそれをモチベーションにしてたな。唯一「真田人」っていう、MICADELICっていうクルーの奴、そいつらとラッパ我リヤだけは超好きだったな。日本語のデリバリングが全然違う。それで東京に30歳で出てきたはいいが、友達もおらんかったし、ビートボックスでもやらんと芽が出えへんわと思ってやってた時代に、MC漢の居るMSCっていう新宿のクルーに声掛けてもらってって感じやな。そっからビートボクサーやからいろんなミュージシャンとかダンサー達とかスケーター達とか、クリエイティビティーに溢れた奴らとすごい仲良く、どっぷり。そういうのが続いてた時に今の日本語HIP HOPのMCバトルのやり方を作っていった感じやね。

え、太華さんが発明した方法なんですか?

発明したっていうか、整えた感じやな。見たことある?あれ。昔って元々アメリカのバトルとか、それこそ8MILE(EMINEM主演のHIP HOP、ラップを題材にした自伝的映画で社会現象にまでなった)もそうやねんけども、先攻が何小節とかグルーヴに関係なく1分とかで笛吹かれて「はい終了」って止めて、後半スタートして。4つの独立したものがあって”ぽんぽんぽん”ってあっただけやったのを、当時UMBっていうMCバトルの運営を仕切らせてもらってた時に、「これちゃうな、こっちの方がおもろいやん」て考え出したのが、小説で区切ってセッションになる様にしたのが始まりやな。やっぱこうバトルっていってもそんな悲惨なものぶつけ合ってもあかんやろと、実際に日本人同士のあの当時の20代の子らの言い合ってることが幼稚すぎて、その顔で言われてもどこにかっこよさとかグルーヴとか黒さとかにじみ出る感じの物が出てくるのか全然理解できなくて。この子らとはたぶん話合わんなと思って。

でも導く方法と導く手段はあるから、とりあえず自分がかっこよくなってしまえることに気づかせる為にはこっちが仕掛けるしかない。もともとおかしなところは小節で比べてないっていうのが公平性を欠くし、むち打って(ただディスりあって)終わるようなもんは見せて欲しくないから、ドラムスクラッチで繋げたら互いに先攻後攻2回ずつで4つに別れてるものが一つになるやん。だから楽曲と化す瞬間もあるわけ。一生懸命10時間くらいかけて書いたリリックじゃないものが2人がその場の即興性を尊重し合うことで、しかも自分の中で踏んでいかなければ即興で面白くないっていうインプロの楽しさっていうのを、日本語でやってるもんやから全員に分かっちゃう。オトンにもオカンにもわかっちゃうっていう。

す、凄いですね…今や誰も何も言わずともMCバトルっていうとそんな感じになりますもんね?最近やっているテレビなどでの影響はどうなのでしょうか?

今で言うフリースタイルダンジョンっていうジブさん(ZEEBRA)がやってくれてる番組の前にバズーカっていう番組が高校生ラップ選手権っていうのを仕掛けてくれたおかげで状況がすごいバズったって言われてたんやけど、デカいとは言えリキッドルーム満タン千何百人、これではバズってることにはならない。それがその流れで全国ツアーとかだったらあれやけど。
でもそこをもっと切り開いてくれてて最近MCバトルが凄い面白い。やっぱりテレビは巨大やねん。

実は6月28日にフリースタイルダンジョンで俺のライブが流れんねん。それと7月3日に俺が新しく編み出した「AsONE(アズワン)」ていうタッグマッチのシステムみたいな感じなんやけど、それもジブさんから電話がかかってきて「太華がやってることが一番楽しいからそれ(そのルールで)テレビでやらせてくれないか」って。人の上げ方が上手いねん(笑)んで、わかりましたって言って軽く紆余曲折あったけどもそれをやることになって…そんでジブさんも頑張ってくれたっていうところがあって、凄い好きになった。この人こんな人だったんやって。個人的に20年越しに毒が抜けるっていう。

先日のフリースタイルダンジョンの模様。太華のLIVEは19:50〜

※動画は削除される可能性があります。

と言うと…前に何かあったんですか(笑)?以前はどのような感じだったのでしょうか…?

いや、俺も分からへんねん、知り合ったのが最近やから。でも同い年やし、ギラギラしてる感じの人なんかなって思ってたら、めっちゃ良い意味でゆるいねん(笑)。こんなノリの人やったらめっちゃ好きやわと思って。それで、俺の考えたシステムを使ったモンスターズウォーっていう特番があってAbema TVで流れる(7月3日放送)んやけど、ダンサーの人に知ってもらいたいし、ダンサーに教えてもらいたいことも山ほどあるんよ。はむつん(現TRIQSTAR)のだーよしとか、ひとりでできるもん、エグスプロージョンとかと昔八丈島に旅行に行ってんけど、普段はホンマにアホやけどあいつらボディーミュージシャンやと思うし、ライブショーケースに関してだけは随所に、こいつらホンマに天才やなって思う所が全員にあったから、楽しくてしゃーなかった。何気なく遊びながらダンスの動き入れたりしてるの見て、多分自分等的にはしょうもないことしてんねんけど、俺からしたら「あいつらめっちゃやばい」ってなってた。

ダンスに関しては少年チャンプルっていうメジャーな物があったが故にめちゃくちゃに賛否両論だったやん。でも「否定」っていうのはそんなに真に受けたらあかんねんな、俺らみたいな職業って特に。どんなことも賛否両論は当然あって然るべしなんやけど、俺らはこだわって貫ぬかなあかんことがあるから。

HIP HOPは口にいろんなもの入れた奴が勝ちな気がする。

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日本のHIP HOPの文脈ってなんやろうな。それこそダンジョンの司会席の横にいとうせいこうさんがいて。この人が日本で1番最初にラップした人で、ネットでは色々言われたりしてんねんけど、あの人番組とかでマイク握らせたらグルーヴさせんねん、全然声でかいし張るし。ジブさんとかも自分のショーでビートに乗ってオーラ出してるあの感じとか出来上がってる瞬間とか、凄いなこの人って。バチギメやねん。とはいえカラーリングも多種多様で、やってる方向はどうあれ、「いや、でもダサいやんけ」って言うやつは絶対いるし…。でもやっぱりHIP HOPは口にいろんなもの入れた奴が勝ちな気がする。「(どんな文化の物も)え、全部食えるっす」みたいなそういう奴が得してる気がする。

なるほど…そういう観点で言えば、ダンスの世界で言うと、HIP HOPは特に若いダンサーの中では「こういうもの」とカテゴライズしてしまっている傾向がありますね。

どこを抽出してジャンルにしてるんやろ?どういうことがHIP HOPなの?音を使ってることがそうなん?ファッション?多分彼らには無視された時期が長かったとかあるんやないの?ダンサーの世界として。テレビに出れないとか人気が出ないとか。どの社会もそうやけど、アンダーグラウンドにいる奴らってアンダーグラウンドに居ることが嫌なんよ、ほんとは。そういう意味でアンダーグラウンドの姿勢のまま(メジャーシーンに行けるように)焦りたいんよ。でも自分の中でそれが出来てないって思う奴らが違う方向に行ってしまうのも受け入れて欲しいなって思うよね。どう優しくしあうか、向こうにも優しくしてもらわなあかんし。シーンの為って思うんやった尚更そう思うけどな俺は。カンタロー(カリスマカンタロー)もそうやろ?もろ賛否両論あって「否」が9割みたいなことあんねやろ?でも乗り越えて来てるんやろな。「負ける気がしねぇ」Tシャツまだ売ってるん(笑)?

最近まで売ってたみたいです(笑)!

売れとったん(笑)?

いや、もう欲しい人は一通り買ってしまって、決して「売れてる!」という感じではなかったみたいですが、通算で生産は1万らしいです…売れてますね(笑)

なるほどな(笑)ていうかダンサーってみんな何で食ってんの?

一番多いのは恐らくレッスンですね、きっと。ダンサーで食べてるって言うと7割くらいがレッスンがメインでたまに発表会をやる感じで、2割がバックダンサーや振り付け、ショーで食べている人は1割とかだと思います。少し独断が入っているかも知れませんが、プレイヤーとして考えるとざっくりそんな感じだと思います。

先生をやりながら自分のショーがバッチリめの人っているの?俺、多分凄い奴が周りに居るのが当たり前すぎて恐らくありがたみが変になってると思うんやけど、TAKESABURO(XXX LARGE)とかYOSHIO(S.A.S)とか、あの2人って俺にはHIP HOPに見えんねやんか。去年くらいにYOSHIOとセッションして、その時はSORI(SHUFFLE!!)とかTECCHY(GONZO)とかも居たんやけど、あいついきなり指定してきたのがファットジョーで、こいつほんまにリアルな脳みそからかっこいいB-BOYやなって。あいつらはやっぱ違う?

そうですね。彼らは東京のダンス界でも本当に一目置かれている存在だと思います。「ファッション・トレンド」じゃなくて、ハートから楽しんでるのが出ちゃってるというか。生活の一部になっているというか。

一番セッションすんのあいつらやし、いやほんまラッキーやな、めっちゃ良いダンサーと友達やなって。ありがとうございますほんまに(笑)。ほんでさっき問題にしてたHIP HOPをカテゴライズしてるっていう人は?

ダンスの世界だと最近は習い事という側面もあって、例えばランニングマンっていうステップがあって、それを音に合わせて踊るのがHIP HOP(というジャンル)なんだよ、みたいな。なので、HIP HOPという言葉の響きは一緒ですけど、全く違う意味で使っていると思います。何かで上手く言い分けられればいいんでしょうけど。

なるほどな。そもそもダンサーが「ダンサー」たる所以とか、ダンサーとして一番いい瞬間て何なんやろ?やっぱり感動を与えられた瞬間とか?

結構、定義するのは難しいと思います。全くダンスをやってない人を連れて来て踊って貰って、例えばその人を見て笑顔にして貰ったら、ダンスでパフォーマンスされてるじゃないですか。プロダンサーとアマチュアダンサーの違いは、それを極度にどこかのベクトルに振り切ってやってる物なので、だからダンサーっていう定義はまだ曖昧なのかもしれません。

やっぱり大事なことは極度ってことやんな。0からの距離をどんだけその方向に稼いだかっていう。もはや詐欺とは呼べない。これはえぐい、びっくりさせたら勝ちやん。みたいな。でもそれで飯食えてない奴がダンサーじゃないってことはないもんなぁ?(他の仕事をしていようが)余裕でダンサーやもんな。ていうかこの話むっちゃ長なるな多分(笑)。

そうですね(笑)。ダンス界の先輩方も、HIP HOPを「文化」として捉えているからこそ、思うところがあると聞きもしますし、SNSで話題に挙げたりされてます。

破壊から再生

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では次の質問に行きましょう。今までの人生で一番HIP HOPだった出来事は何ですか?

破壊から再生っていうのを目の当たりにした時かな。例えばとんでもない喧嘩から友情が芽生えて後ろから見たときとか、音楽的にグダグダになったセッションから誰かが突発的に走り出していきなりそれがグルーブを持って会場全体が揺れるとか、そういうものを見た時に「これはHIP HOPや」って思うし、俺にとってはダンスでもなくグラフィティでもなくラップだけでもなく、ラップを含んだ音楽的な作業。そこにダンサーが居れば尚良し、そこの壁にでっかいタグが入ってればそれも尚良し。そこにビートボクサーとして参加してて、そこにいる人と譜面も読めへん俺が明らかに共有できると思ったものを体感したときにHIP HOPを感じたな。答えかっこ良すぎるけど。でもほんまに自分にとって大事なんやなってなってた。若い当時の、2Pacがかっこいいとか、SNOOPのズボンが太くてかっこいいとか、そういう所からもうちょっと精神的な感じがHIP HOPやって思うようになってきたかな。

なるほど…本当に良いお話をありがとうございました。では最後に、こちらの企画に則って太華さんが思う「HIP HOPな奴」をご紹介頂けますか?

KOJOEっていうラッパーやねんけど…そいつはずっとNYにいて、4,5年前に日本に戻ってきた奴で。黒人の生活に、社会に入りこんじゃってる奴。こいつは凄いラッパーで、KEN KEN(RIZE)が惚れ込んでしまって俺に「繋いでくれ」って言われて繋いでブルーノートで会わせて、その時一緒に居た金子マリさんが(彼のラップを聴いて)吹っ飛ぶみたいな。「あんたヤバいよ」って。

い、いきなりそんなに凄い方を…ありがとうございます!凄く楽しみです!また機会があれば是非お話を聞かせてください。今日はありがとうございました!

毎週水曜更新!太華&SharLeeによるHIP HOPなプログラム:http:ブレス式
太華オフィシャル:Twitter


ご紹介頂いた次回の登場はKOJOE氏の予定。
お楽しみに!

KOJOE:facebookページ