【中編】マドンナツアーの中身を徹底解剖!だーよしによる今だからこそ明かす世界トップのツアーとは?

渡米後はすぐにリハーサルが始まりました。
プロモツアーに参加したメンバーに数名加えて、ダンサーは合計16人。ここから半年以上家族のような生活をすることになります。

足掛け二ヶ月間、月曜から土曜まで朝9:00〜夜9:00で行われます。
何せ世界一のショーを作るという名目のリハーサルですから首脳陣の妥協が無い様にじっくりと行われます。

正に「缶詰め」状態ですね…自分だったら頭がおかしくなりそうです。

だーよし
はい(笑)。とは言っても作成している箇所によっては相当な空き時間も出来てしまうこともありました。絶えず踊っているわけではなくて、創るところからなので。
で、リハ期間中、毎週土曜日はスタジオの外でBBQが行われます。スタッフさんがでっかいセットを持ってきて皆で外で食べます。恐らく気分転換の為なんでしょう。
だからキツかったですが何とか大丈夫でした。夜はほぼ毎晩近くの和食屋さんでご飯食べてましたし。確か…伊勢とかいう名前だったかな?
大道具、小道具、衣装等も同じスタジオで作業が進んでいる為、各スタッフさんとも次第に仲良くなっていきました。

それで僕がまず仲良くなったのは白人で大道具の太っちょ兄さんのシャーピーです。彼はある日僕に「お前にアメリカで生きていく為の基本的な英語を教えてやる」と言われました。
それほど当時は喋れなかったんですね(笑)で、教わった言葉が

Eat(食べる)、Shit(大便)、Wipe(拭き取る)、Flush(流す)

この四つでどうにかなる。と(笑)。
そんな陽気な彼ですが、大道具を作っている最中、何かを板から引き剥がしたかったけど上手くいかない、みたいな時に僕が良かれと思ってふと板を押さえると、すごい剣幕で「降りろ兄弟!お前がこんなことを手伝って怪我をしたらどうするんだ?俺の代わりにMADONNAが座る椅子を作る奴は居るけど、お前に代わってTabi socks(足袋)を履ける奴は居ないんだ。」と。時間をかけて説明してきました。

ツアーが終わり、こいつと別れる時はそれは泣きましたね(笑)。汗をかいても酸っぱくならないタイプの兄貴でした。

何ともシャレの効いた…そんな会話もアメリカというか、海外ならではなのでしょうか?やはり仕事の仕方や姿勢は結構違うものなのでしょうか?

だーよし
生活の中で感じた日本とアメリカの一番の違いは、物凄くハッキリと遊びと仕事の時間を分けるということですね。
振り付け師でさえ、さっきまで頭を抱えて演出を練り、ピリピリしたムードの中で進行していたかと思えば昼休憩の時は率先してふざける。みたいな。
彼らの立ち振る舞いは僕が自分で現場を回す時の現場作りの基盤になってもいます。

が、ダンサーもそうですが、さっきまで椅子を蹴るほど激昂していたかと思えば数分後に地面を転がって笑っていたりする姿を見ると「やっぱ外人やべえな」と思いますよね(笑)。もちろん全員じゃないですが。

確かに最早それはギャップとは呼べないですね。若干情緒不安定みたいな(笑)週に1日のお休みの日は何をしていたんですか?

だーよし
休日は皆それぞれが羽を伸ばす為に色々な場所に遊びに行きます。本当にそうなのか、そういうイメージを植え付けられているだけなのか、アメリカはやはり「カッコいい」国で、居るだけで自分を酔わせてくれる国です。「俺、今、アメリカ」みたいな(笑)

ただのチェーン店の靴屋さんにも日本では見たこともないモデルが売っていたり、日本で買うと結構な値段のする服が凄く安く売っていたり…さっき(前編で)も言ったマジソン・スクエア・パークにあるSHAKE SHACKのハンバーガーを無駄に並んで買うことに楽しみを覚えたり。あとは、ブルックリンの集合住宅を見て、「これ、映画でよく見るやつじゃん」とか、コンビニの店員の態度が悪くても「おお、アメリカン!」とか思ったり、思い出せばキリがないですが、全てが新鮮で毎日が最高でした。

そんなこんなでリハーサルが進んでいく中、僕達が出る曲、演出、衣装と、様々なことが決まっていきます。
プロモツアーでやった4minutesも大幅にバージョンアップするのですが、それは後ほどとして、やはりこのツアーで僕らの最大の名誉な瞬間である、Rain / Here Comes The Rain Againで、和服を着て数分間僕らだけで何万人規模のステージを任される。これが出来ていく過程で、「本当にMADONNAのツアーに来た」と段々感じていきました。
衣装は僕らのDVDで使用された物と全く同じものが採用され、曲に合わせて振り付けが決まっていきます。それに合わせて映像チームが映像を制作。「派手にやれ!」が主流のショービジネスにあって中々に侘び寂びがピリリと効いた仕上がりになりました。
このシーンがメインでツアーに呼ばれたような物なので、変な意味で上からとかそういう意味では無く、所謂「バックアップダンサー」とは少し意味合いが違かったように思います。ツアー映像のエンドロールでもそういう紹介をされていますし。

※Rain/Here Comes The Rain Againは0:47:10から

ですがある日、衣装に関して事件が起きます。4minutes、そして僕らがもう一曲がっちり出演するRay Of Lightに関して…

事件、ですか…凄く気になりますね。もったいぶらずに教えてください(笑)!

だーよし
Sticky&Sweet Tourは全4つのパートで構成されていて、この二曲は「近未来」がテーマのパートです。
衣装試着の為と言われワードローブに呼ばれた我々の目に飛び込んできたのは北斗の拳的なイメージ写真、プレスリーやYAZAWA的なリーゼントの写真。
ツアー映像を見たことがある方はもうご存知でしょうが

「体の動きが見えなくなる」
「頭が重すぎて踊れない」
「我々の国にはこれと全く同じ格好をしたツボを突いて殺し合う、愛をテーマにしたMANGAがある」

という訴えも虚しく、あえなく衣装さんの

「But She Likes It(でも彼女がそれが好きだから)」

の一言で衣装が決定します。今でこそショーにはフィットしていたかなと思いますが、当時は結構粘って反発したものです。見た目は置いておいたとしても、はむつんサーブの天敵のような衣装でしたから。スタッフさんゴメンなさい(笑)。ちなみに、この衣装さんは雑誌「VOGUE」の編集も手がける方とのことでした。

※その衣装がコチラ(これはマドンナ本人の物で、ダンサーの物は黄色バージョンらしいですが、石は全て手作業で付けられたスワロフスキーのクリスタルだそうです。)
【中編】マドンナツアーの中身を徹底解剖!だーよしによる今だからこそ明かす世界トップのツアーとは?

そしてリハーサルも残すところあと3週間といったところで、NYを後にしてイギリスはウェールズの首都、カーディフに向かいます。
そして、そこでまたも度肝を抜かれることが判明するのでした…

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