「エンジニアを経験したからこそ、ダンスでカマす側の人間でありたいと思った」/【FINALIST INTERVIEW HAYATO1編】マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL

 『アライブ』の名で親しまれ、今年で17年目を迎える「マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL」。ストリートダンス界最強ヒーローを決めるダンスイベントとして、数多くのダンサーたちのドラマと才能を花開かせてきた。
 毎分毎秒が歴史の転換点となるこの日に向けて、多くの新世代ダンサー達が過酷な予選に挑戦し、ファイナル出場を勝ち獲った。令和ジェネレーションとも呼ぶべきファイナリストたちは、何を思いあの舞台へ上がるのか。

今回はCHARISMAX IにてBREAKING SIDEに出場し、計算されたギミカルなフットワークに、その体勢からそれが可能なの!?と思えるパワームーブを織り混ぜたダンスで、見事ファイナル進出を決めたHAYATO1(BDKMV / StruggleZ / HEROES)へインタビュー。

現在大阪で活動されてるとお聞きしているのですが、ダンスのルーツや現在の活動を教えてもらえますか?

高校まで鹿児島に住んでいて、ダンスをしたくて大阪に出てきました。
鹿児島時代にダンスはほぼ独学ではじめて、鹿児島シーンの中心メンバーの一人であるMARUさんのレッスンに通っていました。Bboyでもありながら、スタジオの経営もされている多才な方です。大阪ではレッスンなどには行かず、TOPROCK KINGDOMというチームに所属して、先輩たちと一緒にひたすら練習をしていました。その後、同世代でチームをやろうということになり、Mark by Mahkというチームで活動を始め、UK B-BOY CHAMPIONSHIPなどで実績を残すことができました。そのチームも僕が抜けてしまい活動を休止しました。現在の活動はBDKMV、StruggleZ、HEROESという3つのCrewで落ち着いているという感じです。

それぞれのチームについて想っていることを教えてください

BDKMVは、2014に結成しました。当時学生か社会人なりたての年の、関西でいうとイケてる、勢いのある若手が揃っていました。それから7年経って、皆いい大人になって、活動をがっつりできているのは僕含め数人なんです。なので、今はそのチームでがっつりやるというよりは兄弟みたいな感じ、居心地の良い場所ではありますね。「Bitch,don’t kill my vibe」という意味なんですが、イベントでそのまま掲載することもできない場合があるので略して表記することが多いです(笑)。
Strugglezに関しては、僕からしたらコミュニティというイメージです。LINEグループがあってあまり絡んだことない人含め20人以上が入っています。ボスであるBboy SEIJI(STYLE VALE-TUDO)さんが好きで集まってできたCrewです。みんなお酒の席が好きな人ばかりで、僕もその流れで入りました。昔は関西・関東ってバチバチだったイメージがありますが、今はかなり仲が良いですし、Crewも関西・関東のメンバーがごちゃ混ぜになっていて面白いなと思いますね。僕らが関東に行けば関東のメンバーとCrew Battleに出ることができますしその逆もできますから。すごく良いコミュニティだと僕は感じています。
HEROESは僕からしたら、ダンスの活動をプロフェッショナルに、同じ目線、同じ熱量で一緒に戦えるCrewだと思っています。メンバーもKAKU(MORTAL COMBAT)さんやm0nm0i(AIR REAL)さんなど、よくしてくれている兄貴的な存在です。家も近いし一緒に練習するんですが、その兄貴らと同じ熱量で高め合いができているので、HEROESが一番チームメイトと僕は思っていますね。もちろん僕もおふたりも所属するオリジナルクルーは別にありますが。結成当初はユニットユニット、と言われていました。認めてくれる人もいましたが、強い奴らの寄せ集めだ、と叩かれることもありました。けど今でも活動は続いていますし、僕個人は他の2つのCrewより活動をしているくらいです(笑)。

活動されてきた中で、挫折などを経験したことはありますか?

…挫折はないんですが、強いていうと遠回りをした経験は2回ほどありますね。
ダンスをしに大阪に来たんですが、当初の肩書きは専門学生でした。ダンスがしたいという理由で、鹿児島の母親にA4サイズびっしり4枚位の手紙を書き頭を下げて学校を1年でやめました。しかし、当時の彼女の家に入り浸って、練習も週1しかせずにいた時期がありました。自分ではクズ時代だと思っています(笑)。その後彼女に振られてしまい、残ったものがダンスだけだったので、そこからは僕なりに色々試行錯誤していきました。当時頼っていた先輩が自己啓発本などにハマっていて、紹介してもらった本を読んで、これはダンスに置き換えれるな、当てはまるな、自然にやってたことにはこういう意味があったんだ、といろんな発見があり、徐々に血と肉になっていった感じです。それからダンススタジオで働いたりレッスンを始めて、大会に出続けて結果もついてきて世界にいくことも増えてきて。
2018年の終わり頃に、プログラミングを始めたんです。ダンスだけじゃ限界があるわ、と思ってしまったことがきっかけです。マネタイズ(収入)も含め、これでいいのかと考え、別軸の柱も自分の中で持ちたいなということで、アンテナを張っていたら、ウェブ制作などのコーディングを見つけました。それからコツコツ勉強を始めて、2020年にフロントエンドエンジニアという仕事で正社員になりました。
エンジニアを経験し、フリーランスになってワークライフバランスや収入源もしっかり確保しつつ、エンジニアとして得た知見やテクノロジーを使った事業などを、ダンスに還元したいな、という目的がありました。これからの時代テクノロジーに強い方ができることが増えるよね、とその当時から思っていました。会社はポテンシャル採用が増えていましたし、テクノロジーもダンスと掛け算ができる分野です。そうして初めて社員になって働いてみたんですが、やっぱりダンスなんだな、とつくづく思ったんです。自分はダンスでカマす側の人間でいたいなと。それでダンサーに戻ってきた、という感じです。どちらかというとダンスではなくエンジニアを挫折したという話かもしれません(笑)。

ダンス以外の道を通ることで見えてくる部分や広がる世界もあると思うのですが、何か変化はありましたか?

フロントエンドというのは人が見える部分を扱う分野で、動きのあるウェブサイトなどを考えて作るのは楽しめてやれていたので、性に合っていたのだと思います。
また、プログラムの勉強と同時並行して映像制作の活動も始めました。 YouTubeも勢いが乗ってきた時期でもあったのでアウトプットできる場所も用意されています。ブレイキンのレッスンなどで培ったノウハウなどを動画にまとめて公開しようと勉強してきました。結果的に、友達からウェブサイトの更新の依頼がたまにきたりもしますが、増えたのは映像制作の依頼でしたね。インスタにも自分が編集した動画を上げ続けています。
今は構想段階ですが、チュートリアルの体系的なものを作りたいな、と企画しています。それを形にして、僕の収入を安定させたいというのもありますが、ブレイクダンサーの仕事、食いぶちが広がるのかなとも思ってます。今は自分の興味があるものを検索できるし、インスタでリールで流れてきた断片的なものを見たり、良くも悪くも情報過多な時代です。知識がない、はじめたての人からすると、どれがどれかが分からないと思うんです。そんな人が僕を知ってくれて、体系的なチュートリアルを見て綺麗なプロセスで上達するようなものが用意できたら熱いんじゃないかなと思っています。

自分の好きなダンススタイルや理想の姿みたいなものがあれば教えてください

昔は全然違ったんですが、ロジックのあるような動きが好きになっていったんです。元々高校2年生までは縦系と言われる、例えばJUJU(MORTAL COMBAT)さんのワンハンドラビットのような、逆立ち専門だったんです。その時に培ったフィジカルを生かしてスタイルにどんどんのめり込んでいきました。2018年位からまたフィジカルに目を向けてやり出したら今のスタイルに行き着きました。世界に行き出した影響が大きいかもしれませんね。
フィジカル面で培ったものをマニアックな知識やロジックを組む頭を使って、総合的によく見せるのが理想だなと思っています。僕はマニアックさを売りにしてるイメージだと思うんですが、エンジニアを経験して一般人の目線でブレイキンを見て、全部できた方が良いな、と思うようになりました。もちろん何かに特化したものも好きですし、両方高めたいなと思っているんです。
フィジカルの面でいうと、ジャックハンマーという技があるんですが、パワームーブの中で好きな技で今ギネスを狙っています。2015年から記録が更新されてないので、せっかくならギネスを持ってるくらいのダンサーになるのを目標としています。
誰もが分かるようなパワームーブのコンボや誰もやっていないようなコンビネーションを僕のスタイルに落とし込み形にしたいと思っています。

最後にFINALへの意気込みをお願いします

今回FINALへの出場は2回目で、前回よりも良い結果と良い踊りができたらと思っています。バトルはギャンブルな面もあるので、ドライと思われるかもしれませんが、自分の踊りとしてやることをやる、納得のできる踊りをする、それしかないと思っています。
もちろんバトルは好きなので、ガチガチに勝てるようなものを組んで準備していきますし、自分の狙った勝ち方や勝ち筋がハマることを期待して頑張りたいと思います。僕のようにマニアックなやり方、スタイルがあるんだなというのを、オーバーグラウンドの方々にお披露目できたらな、と思います。
バトルに勝ちづらいスタイルではあると思うんですが、僕のスタイルでもバトルに勝てるというのを後世に伝えたいですね。偏っているから勝てないというよりは、いろんな変数があると思うんですけど、アップデートして、バトルに勝つための説得力をバランスよくバトルのムーヴに落とし込めたらと思っています。自分が挑戦し続けることで、(同じようなダンサーが)やり続けることができる土台を作り続けたいです。そうすればいつかマト(優勝)に当たると思います。持続力が大事だと思っています。

マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINALは2022年4月17日(日)!

ダンスバトルの他にも、豪華なゲストダンサー、ダンススタジオ/高校ダンス部/ダンス専門学校/大学生・社会人ダンスサークルによるショーケース、さらには高校ダンス部の頂点を決めるダンスコンテストなども同時開催。世界最大規模のダンスフェス「マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL」、今後も続々と更新される出演者情報をチェック!

名称:マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL
開催日:2022年4月17日(日)
会場:両国国技館(東京都墨田区横網1丁目3番28号)
開催時間:OPEN 11:00 / START 11:30
主催:株式会社アノマリー
特別協賛:株式会社マイナビ

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