「BE BOP CREW40周年のこの年に活躍することが、先輩方への恩返しだと思います。」/【FINALIST INTERVIEW YOSHIE編】マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL

 『アライブ』の名で親しまれ、今年で17年目を迎える「マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL」。ストリートダンス界最強ヒーローを決めるダンスイベントとして、数多くのダンサーたちのドラマと才能を花開かせてきた。毎分毎秒が歴史の転換点となるこの日に向けて、多くの新世代ダンサー達が過酷な予選に挑戦し、ファイナル出場を勝ち獲った。令和ジェネレーションとも呼ぶべきファイナリストたちは、何を思いあの舞台へ上がるのか。

今回はSEED DANCERとしてALL STYLES SIDEの舞台に立つYOSHIE(BE BOP CREW/ebony)にインタビュー。ダンスアライブFINALで2度の優勝のみならず、DANCE@LIVE TAIWAN 2009優勝など世界的な実績を残し続け、日本を代表するアーティストの振り付けやサポートダンサー、そして次世代ダンサーの育成など、さまざまな顔を持つYOSHIEの今と本音に迫る。

今回シードダンサーとして出場を決めた時の気持ちを教えてください

お話をいただいた時、直感的にバトルに出たい!と思ったのが正直な気持ちです。コロナ禍でも振付やバックアップダンサーなどオーバーグラウンドでの活動はできていましたが、アンダーグラウンドのステージに立つ機会が減ってしまいました。ストリートダンスの本質的な部分が大好きなので、その部分でチャレンジをしたいなと思いました。私は根っからサプライズが好きなんです。バトルで名を馳せてきたいわゆるバトラーの人達とは違って、バトルに出たいと思うタイミングを大事にしてきました。バトルに出ることは覚悟のいることです。ダンス歴も長く、色々な方が私に注目してくれるので、どんなふうに見られるかはもちろん分かっています。でも自分が出ることで、生徒や周りの方達がワクワクしてくれるのであれば、エンターテイナーとして期待感を上げるようなことを提示したくなってしまいますね。

今でも現役でバトルに挑戦し続ける理由はあるのでしょうか?

ダンサーの進む道として、振付師になったり、次の世代を育てる人になったり、イベントの主催者になったり、様々なキャリアがあります。それでも私は踊り続ける人に執着しています。なぜかと言われたらダンスが好きだからです。人前で踊ること、ステージに立って、自分が感動して、人も感動して、踊ることのエネルギーで何かが動く感じが、本当にたまらなく好きなのです。それだけ好きなら、言い訳せずに頑張れよ、とコーチのように自分に語りかける自分もいます。チャレンジは何歳になってもいいなと思います。

ダンスが大好きな自分と、その自分を客観視して応援している自分がいるイメージでしょうか?

そうですね。隣でホイッスルを吹いて伴走してくれるイメージです。自分のことをどれだけ客観視できているかはすごく大切にしています。年齢などで年々身体は衰えてると思いますが、それでも深まる自分があります。カルチャーの勉強、ダンスの歴史、音楽の身体への浸透率。若い頃に味わえなかった感覚が年齢とともに研ぎ澄まされていきます。この年だからこそ味わえる何かがあり、「第2章」「第3章」と自分のステージが刷新されていくのを楽しんでいます。例えばプロ野球の世界では有名な選手でも戦力外通告がありますが、ダンスは感性の部分やアートの部分もあり、明確な引退はありません。だからこそ現役にこだわる限りは、(衰えないよう)バロメータを維持したいなと思っています。

昔すごかった人、ではなく今でも実力をキープし続けたいと努力されているのですね

過去の貯金で生きたくないというのがずっとあるかもしれません。自分は天才肌ではないので、センスだけには頼りたくないと思い努力を積み重ねてきました。自分は自分以外の何者にもなれないし、今は自分が最高の研究材料になっています。この年でこれだけトレーニングしたらどんな結果が出るか、そんな研究の結果を知るためにバトルに出ているところもあります。ファイナルに向けて、このトレーニングをしたらこの踊りに活きるよなー、と頭を使って鍛えています。人がやらないであろう、間違いなく笑われそうなトレーニングもしてますが、、成果があるのか?自分でもわかりません(笑)

活動されてきた中で、スランプやそれを乗り越える方法などはありますか?

海外遠征をはじめ色々な壁を経験してきましたし、壁に当たっては「私絶対乗り越えるよなこれ」と思ってましたね。実際にそれで積み重ねてきました。どうやって、と言うのは、その時々で違いますし、私のやり方が他の人にも当てはまるとは思いませんが、自分の心のあり方だけは自分で決められます。色々なことが起きた時に、これをどういう状況に変えるかは自分次第。その考え方の勘の良さと、状況をプラスに持っていく力はあると思っています。基本的に最悪の状況を常に考えて動く人間なので、乗り越えることが好きなんだと思います。ピンチに直面して困っている自分とそれを乗り越えることを楽しむ自分の両極が存在します。

今こういうダンサーになりたいという理想はありますか?

唯一無二でありたいとは思っています。どんなダンスをされているんですか?と質問され「うわ、なんて言ったらいいんだろう」と悩む自分が好きですね(笑)。一言で言えないな、と思うことが好きです。形のない、説明できない踊りを、ノンジャンルミュージックのような感じで音と共に共存できたらいいなと思うのと、YOSHIBOWさんやSEIJIさんBe Bop Crewそして近年ではToni Basilや江守藹さん方に教えてもらったパーティーグルーヴが好きで、それをみんなで共有して、揺れてるだけが本当に楽しいダンスだというのも絶対にずっと伝えていきたいと思っています。一般の人も肩を振ったら気持ちよくなれる、音に乗るってどういうこと?パーティーグルーヴをベーシックとして知っていると音楽って一生死ぬまで楽しいよね。というのを伝えられる人でいたいです。
今超初心者の人向けにダンスを教えていたり、60歳の人にパーティーグルーヴを教えていますが、とても楽しいんです。それは若い頃にはなかった自分です。昔はダンスが上手い人しか興味がありませんでした。レッスンでもダンスを本気で上手くなろうと思っている人しか受け入れられない尖りきった自分がいたのですが、今はハッピーになる人をみると、パーティーグルーヴってこれよね、と感じるようになりました。バトルとかショーとかそういうところじゃない、誰かと一緒に楽しむ事も大事にしていきたいですね。
この間、お母さんに初めてダンスを教えたんです。楽しい楽しい、もっと早く知ればよかったと喜んでくれました。YOSHIEはこんなに楽しいことをしていたんだね、それは続けるよね、と言われた時は嬉しかったですね。

今回、YOSHIEさんと関わりの深いファイナリストが出場していることにどんな想いがありますか?

偶然ってすごい、運命だと思いましたね。私が選んだ場所に、シナリオができた、やっぱ持ってるわ私!みたいな(笑)。HJM、Soraki、DAIちゃん、RYOMAも、残っているFINALISTみんな最高なダンサーじゃないですか。かっこいいと思える素敵なダンサーなので、そのジャンルとのバトルが盛り上がるのはドキドキするしワクワクしています。以前は、例えば教え子に負けるということが、嫌だなと思う自分もいました。今は、、そこじゃないなと思える様になりました。(もちろん負けたくないけど)相手が誰であろうと、自分がどうあるべきかが重要だし、Sorakiに当たってもHJMに当たっても、素敵なドラマがそこにあるから、ありがたいなと思いますね。バトルするからには、実力があって、みんなが「こっちだね」と言われる状態で勝ちたいですし、準備や努力を重ね、誰にも失礼にならないように整えたいなと思います。本番はどうなるかわかりません。どんなメンタルがきて、どんな曲がきて、どんな動きになるかわからない。自分のみっともないところも下手こいたところも、見せてもいい、どうぞ、と言う感じになってきました。それが今の自分だから。あの舞台は嘘なんかつけん!(笑)

かなり心境の変化があったのでしょうか?

ありましたね。昨年、SUMMER DANCE FOREVER 2021の日本大会が大阪で行われ、大先輩であるREI(R-LOCKS)さんとKAZU(STRUT)さんが優勝しました。REIさんは年齢もかなり上ですし、大病を乗り越えた方です。SUMMER DANCE FOREVERはジャッジをコールアウトしてバトルができるのですが、そのバトルをマスクの中がぐしょぐしょになるくらい号泣して見ていました。生き様やダンスを愛し抜いた先の美しさが見えましたね。REIさんは1分という持ち時間のカウントダウンが終わるまで踊り抜いていました。あのREIさんは一生焼き付いて離れない姿だなと思います。
そういうシーンで涙を流したというのが本当の自分なんだと思います。バトルシーンは裸の自分を見せるところだし、尊いなと感じました。若手と呼ばれなくなって、レジェンドと呼ばれる方の感覚も少しずつわかってきたからこそすごいなと感動しました。おふたりはSNSで積極的に活躍している方達ではなく、それなのに見せつけられる人って強くないですか?承認欲求とかじゃなく、ずっとダンスを愛していただけ。とてつもなく喰らいました。自分もそうありたいです。

最後にファイナルへの意気込みをお願いします

アライブはやはり、とても思い出の深いイベントです。確実に転機になったイベントの一つです。34歳で優勝して、味を占めて勝って負けてを繰り返してそれでダンスも技術もメンタルも、成長した部分はとても大きいです。アライブに感謝の念があります。それから両国国技館という場所でやっている意味もとても大事に思っています。去年も見に行って、AKANE(BE BOP CREW)さんとショーに出たり、毎年何らかの形で関わりたいと思っているお祭りです。バトルは結果より日々そこに向かうための過程が大事かなと思っています。それが結果に結びつければなお嬉しいというスタンスです。
この年齢にもなって、ダンス歴も30年になって、こんなに思いが強く掻き立てられるイベントはないし、毎日練習をしている自分はすでに優勝かなと思っています(笑)。YOSHIBOWさんも亡くなって、長谷川先生も亡くなって、SEIJIさんが闘病していて、今、踊れるのは奇跡の様な時間かもしれないと、ありがたみを痛感してるし、博多の人に教わったダンスの心、純度のようなものは核にあります。YOSHIBOWさんの教え+αで自分の人間ドラマを通して人生の栄光と苦難、それを乗り越える力となったダンスへの感謝が伝わればと思います。
BE BOP CREWは今年で40周年です。世界でも40年続いたCREWは稀ですし、私は何より誇りに思っているので、40周年のこの年にめっちゃ活躍してやろうと思います。それがYOSHIBOWさんやSEIJIさんをはじめとした先輩方への恩返しだと思っています。

マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINALは2022年4月17日(日)!

ダンスバトルの他にも、豪華なゲストダンサー、ダンススタジオ/高校ダンス部/ダンス専門学校/大学生・社会人ダンスサークルによるショーケース、さらには高校ダンス部の頂点を決めるダンスコンテストなども同時開催。世界最大規模のダンスフェス「マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL」、今後も続々と更新される出演者情報をチェック!

名称:マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL
開催日:2022年4月17日(日)
会場:両国国技館(東京都墨田区横網1丁目3番28号)
開催時間:OPEN 11:00 / START 11:30
主催:株式会社アノマリー
特別協賛:株式会社マイナビ

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