規格外のフットワークを見せたBREAKING!超人対決が実現したALL STYLES!マイナビDANCEALIVE 2023 FINAL BREAKING&ALL STYLES ハイライトレビュー!
1stムーブ、先行はPEET。soul&funkの名曲「Funkin’ for Jamaica」のベースやリリック、ドラムに合わせ音で遊びつくす貫禄のムーブは奥深く、この後に来る特徴的な一つの音やビートに魂を込めるためにグルーヴ感や体の硬さなどの見せ方を変え、ダンスの密度をチューニングして踊っている。ロックダンスは極めるとベーシックが必殺技になる、という言葉通り、PEETのポイントはその指を伸ばすだけでかっこよく感じてしまう。
一方GUCCHONはビートを刻みながら揺らぎ、一つの音も取り逃がすことなく全身で音を取り込み奏でていく。スローモーションやウェーブを多用し音の質感を変え、ボーカルに合わせるようにゆっくりと体内を通すボディーウェーブは、セクシーな雰囲気を纏わせ、まるで身体が唄っているような動きである。
2ndムーブはアップテンポなfunkに合わせ、PEETもエアーからボディーウェーブへとつなげるが、ティッキングやわざと各部位にブレを作るようなエフェクト、そしてソウルのステップをゆっくり踏んでいるように見せかけ、細かなバイブレーションをボディウェーブとして通していくという神技を見せる。オールドスクール、ファンキーグルーブ全開でまるでジャズの即興のように踊るPEET。
GUCCHONのラストムーブは対抗するように変則的なビートを刻み、ブガルースタイルから徐々にギアをあげていく。時折くる特殊な音に合わせて飛び跳ねるなど、予測不可能な動きと、ヒットを打った後の余韻まで完全にコントロールされた身体操作はまさに神技だ。そのまま音を体に取り込み静止し、ゆっくり膨らんで爆発するというムーブで会場は大きく湧き上がった。結果は6対1でGUCCHONが勝利。ジャッジの後はともに感謝とリスペクトを表明し合う長い抱擁が見られた。
もう1つの準決勝では、2014&2018シーズンにKIDS SIDEで優勝を飾り、現在はDリーガーとしてさらに勢いを増した活躍を見せる優弥/YUYAが、チームメイトをセコンドに引き連れALL STYLESの舞台に帰ってきた。対するは韓国代表、世界の大会で実績を残すHozinだ。双方1つの音も逃さず、バトル中の駆け引きやレジェンドダンサーたちの動きをオマージュしたムーブも飛び出し、また違った味わい深さを見せた勝負となった。そして見事Hozinが勝利を手にし、決勝でGUCCHONと対決することとなる。
超人対決で見せた成長の証。Hozinの挑戦と躍進が見せる未来
GUCCHONは「GUCCHON & KEI」として2008年、2011年に世界最高峰の2on2バトルの一つである「Juste Debout」で優勝を経験している。また、Hozinも同大会で「BOOGALOO KIN & HOZIN」として2014年に優勝。まさに世界最高峰の超人バトルがこの決勝戦で行われることになる。HozinにとってGUCCHONは「小さな頃からビデオで見ていた憧れの存在。16歳の頃にバトルをしたことがあり、その時からの成長を見せるためにベストを尽くすつもりだった」と語っていた。
1stムーブ、クリスティーナ・ミリアンの「AM To PM」が流れ、Hozinはビートレスな部分からボディウェーブで音に入り込み、ビート一発目の爆発的なハードヒットから2連続ターンまでパワフルなコンビネーションを決めていく。わざとキックを止めるトリックや、高速のハンドウェーブやタットなどの遊びを入れた音ハメの数々にGUCCHONも嬉しそうだ。
Hozinの動きに合わせるように細やかな動きから踊り始めるGUCCHON。音を取り逃がしているように見えてしっかり静かにウェーブや各関節のヒットで音とシンクロし、首のロールやウェーブを入れながらのターンも高い技術が見て取れる。後半のシルエットをあえて崩しながらステージを駆け回り体全体から音を発するようなダンスは、よく見ると難しい足先や胸、背中の使い方をしており、ダンスに対して本気で楽しみながらもしっかりバトルをしている。
2ndムーブ、「Knights By Nights」がかかり、会場の熱気が一段あがり、Hozinもそれに呼応するようにブラス(管楽器)に合わせて踊り始める。目の前のGUCCHONのムーブに刺激を受けたのか、音を取る前に脱力することで、さらに音が分厚く響くようなダンスと、流れるようなフロアムーブ、そして楽曲の雰囲気を掴んで対応するセンスも抜群に研ぎ澄まされ、気持ちの良い音ハメに会場が湧き上がる。
ラストムーブでもGUCCHONによる独自性は揺らがない。そこに何かがあるように見えてくるダンスに、ロボットやパペットスタイルの要素を融合させ、音楽やダンスをとびきり楽しんでいる姿と、難しい体勢をキープしながらのハイスキルなボディコントール。二人の熱い試合への大きな拍手が鳴り響き、結果は6対1でHozinが勝利。実力者たちとの本気の勝負を勝ち抜き、映えある優勝を手にした。
イベント後のインタビューでは「いつも日本に来るたびに刺激を受けている。優勝したから実力が上がるわけではないので、もっと自分を磨き、また、自分の後輩のダンサーたちが(世界で)活躍できるようにサポートしていくのが夢だ」と語ってくれた。来シーズン以降、韓国をはじめとした海外からの挑戦者が増えていくことにも期待したい。
マイナビDANCEALIVE 2023 FINAL 優勝者コメント