日本に影響を受けた海外勢が優勝。最高のセッションが繰り広げられたマイナビDANCEALIVE 2023 FINAL HIPHOP&HOUSE ハイライトレビュー!
Frankie Jのムーブの途中、機材トラブルにより音が途切れてしまうハプニングも発生したが、すかさずKAZUKIYOがフロアで一緒に踊り出し、二人のスペシャルセッションタイムが始まったことで観客も大いに喜んだ。ライブである以上トラブルはつきものだが、トラブルをここまでハッピーな空間に変えてしまうバトルも珍しい。
この時のことをFrankie Jに聞くと「初めての経験だったが音が止まっても踊り続けろと教わってきた。KAZUKIYOという特別な対戦相手がいるのだから一緒にこのままショーを作ってしまえと思った。ステージに新しい光を作りたかったし、その後仕切り直して最初から踊らせてくれた運営に感謝しています。」と語っていた。仕切り直したFrankie Jのムーブも、ストップやティッキングやタットなど、多彩な音どりを見せながら、音に導かれるままに気持ちよさそうに踊り抜き笑顔を見せていた。
2ndムーブでは、ピアノと不規則なビートが重なった音楽が流れ、KAZUKIYOは全身を大きく使ったダイナミックなステップに、表情や脱力を織り交ぜストーリーを展開していく。長い手足を使ったトリックを巧みにまぜ、最後にきめた滑らかなターンは見ている側も気持ちよくなるほど音楽を楽しんでいるのが伝わってきた。
Frankie Jのムーブではサルサやラテンのようなフレーバーから入り、精密なステップのコンボを並べていく。柔軟性を活かしたフロアムーブと、緩急のあるステップで会場を引き込み、最後にダイナミックなハンドスプリングで会場を沸かせバトルは終了。3対4の一票差でFrankie Jの勝利となった。「日本のダンスシーンが世界に与えた影響は大きく、自分も日本のハウスシーンに影響されて踊ってきたからこそ、今日ここで優勝できたことを喜んでいるし感謝している」と述べた。
若干16歳の刺客、ONLINEによる海外からの参戦
HIPHOP SIDEでは、2つのニューウェーブを感じることができた。一つは若干16歳にしてFINALのステージに立ち、Atsukiと見応えのある勝負を繰り広げていた龍だ。REAL AKIBA BOYZとしても活躍し、取るべき音を取りこぼさない胆力に、足腰の柔らかさ、音どりの強さ、独創的なステップの数々に会場は大きく歓声を上げていた。惜しくもAtsukiに敗れたが、ワクワクさせてくれる次世代への期待は膨らんでいく。
2つ目はONLINE予選を勝ち抜き、スペインからRuthがFINALの舞台に登場したことだ。情熱的でパワフルなバイブスを見せる彼女はBEST4まで進出したが、こうした海外からの参戦をはじめ、今まで参加できなかったまだ見ぬ才能たちが、各地から集まってくる未来が訪れるだろう。
関西シーンを代表する2人による激戦に、会場が揺れる。
3度目のFINAL出場で優勝を狙うAtsukiと、SEEDダンサーであり関西HIPHOPシーンの重要人物、HONGOUとの試合が準決勝で行われた。二人とも重い音どりを得意とするダンサーで、海外のヘッズからはJAPANESE HIPHOPと呼ばれ、注目が集まっているという。
曲が始まるとHONGOUが飛び出し、荒々しくも繊細な音の表現に会場がどよめく。歩いているだけなのに振動が伝わってくるような深い音どりとステップ、オリジナリティの高いサウンドアプローチが特徴的だ。それに対して、職人のような正確な音どりとより大きなシルエットで対抗するAtsuki。二人を包む空気も含めて音に合わせて動いているような感覚だ。
2ndムーブでは、ハーレムシェイクの要素も取り入れ所狭しとステージを駆け回るHONGOUに対し、ボディウェーブを多用し音を纏うようなダンスを披露し、フロアムーブで会場を沸かせたAtsuki。ジャッジの結果3vs4とわずかなリードでAtsukiが勝利した。
決勝戦、相撲の聖地で見せた四股
一方SEMI FINAL2試合目では、音楽に溶け込むようなボディコントロールと、スプレーアートのジェスチャーでバトルの流れをコントロールしたBATALLA CLがRuthに勝利し決勝へ進んだ。
決勝戦は、一挙手一投足に音が重く乗るよう磨き上げられたスキルを持つAtsukiと、どんな音でも体の関節と揺らぎをコントロールし乗りこなすスキルを持つBATALLA CLによるバトルだ。
1stムーブ、決心していたかのような表情からAtsukiが先行で大きくリズムを刻み始める。重い音どりをキープしながら、ビート、SE、リリックまで全ての音にハメていく繊細なテクニックとボディコントロールや意表をつくターンなど、出し惜しみなしだ。バトルアティチュードとして座って見ていたBATALLA CLも立ち上がり、Atsukiのグルーヴに合わせて体を揺らし始める。
BATALLA CLのターンでは、あえて脱力し、独特の浮遊感のあるステップと、ボディウェーブを2つ交互に通すような高度なフローを見せつける。滑らかに使えるボディウェーブをあえて引っ掛かるように使い音を強調し、時折見せるジェスチャーや表情などの遊び心で独自の世界観を作り上げていく。最後はボディウェーブを途切れさせることなく体が音に合わせて揺らぎ続けるようなムーブとなった。
2ndムーブ、少しテンポの早い音楽に変わると、Atsukiもそれに合わせギアをあげていく。足でリリックを取りながら上半身でシンセサイザーの音を表現するという高度な技を見せ、変形したタットやステップで、突発的に入ってくる効果音を外すことなく掴み続け、BATALLA CLにバトンを渡す。
Atsukiの密度の高いムーブに流されず、独自のグルーヴをキープしステップを踏み始めたBATALLA CLは、頭の高さをぶらさず足腰だけで円を描くようなステップのコンボを決めていく。時折オールドスクール、パペット、バイブレーション、キスのジェスチャーなどを盛り込みながらボディウェーブのように切れ目なくリズムを表現し続ける。最後に相撲の四股を模したムーブを見せ、二人で構えて決勝戦は終了。ジャッジの末3対4の僅差でBATALLA CLが優勝の栄冠を手にすることとなった。
四股は元来、大地を踏みしめることで大地の邪気を祓い鎮め、神様を呼びやすくするという意味のある動きだ。BATALLA CLは優勝コメントで神様に感謝を述べたが、最後に見せた四股に、彼の神様が応え、力を与えてくれたのかもしれない。そんな神秘まで感じさせるような、二人それぞれの熱い想いの籠ったバトルだった。
マイナビDANCEALIVE 2023 FINAL 優勝者コメント