第一生命 D.LEAGUE 23-24 ROUND.8!Legitの進化が見せた今シーズン初のスウィープ勝利。MVDはTAKUMI。
SPダンサーは一発屋ではなかった。
今回のラウンドは、各チームがスタメン発表に合わせ次々とSPダンサーの起用を発表しSNSを賑わせていた。
レジェンドと呼ばれ、Blue Printの主宰としてダンス、振付、舞台と現役で幅広く活躍しているJUNをはじめ、加賀谷 一肇、碓井 菜央の3名のSPダンサーを起用し話題を集めたALT-RHYTHM。
また、dip BATTLESは、餓鬼レンジャーでアーティストとしても活躍するタコ神様がSPダンサーとして登場。ある意味ネタに振り切ったかのような作品で、今シーズン初のオーディエンス票を獲得し、勢いに乗るKDのスウィープ勝利を阻止した形となった。
KOSÉ 8ROCKSは、トリッキングチームにも所属するムーブメントアーティストRikubouzをSPダンサーに迎え、コンテンポラリーな世界観を展開する。武器である高いシンクロ率のダイナミックなフロアムーブだけでなく、HarukaとRikubouzのコンタクト・インプロヴィゼーションからの軟体フリーズ、雷鳴のようなスポット照明をはじめ衣装、メイクと様々な演出による工夫を凝らし、ブレイキンを脱構築し新しいアプローチに挑戦し続けたことが結果につながるようになってきた。
MONOLIZはSPダンサーにWAACKダンサーのRyujiそしてニュースタイルハッスルなどのジャンルで活躍するZabuを起用し、サイファーラウンドで披露した新スタイルを作品として披露。埋め込まれた伏線はしっかり回収された。
SPダンサーの起用は難しい。SPダンサーは「知る人ぞ知る」ダンサー、パフォーマーであることが多く、ダンスファンにまで広く知られたダンサーは数が限られている。
見慣れた顔のDリーガーの出場枠を一つ削ってそこにSPダンサーを配置することはそのラウンドの勝敗だけを考えるとハイリスクハイリターンな選択だ。
SPダンサーを起用しながら結果が出ない場合、噛み合いがうまくいかなかった、と思うファンもいるかもしれないが、SPダンサーの役割はインパクトのあるスキルだけではない。
長年そのスタイルと向き合ったキャリアや経験値、考え方、哲学、そうした精神的なものも練習を通してDリーガーにシェアすることで、レギュラーダンサーたちの表現の幅が広がり、新しいアプローチが生まれる。
同じ技やステップを繰り出すにしても、フォーメーション、流れ、間の取り方や照明などいろんな要素を変えることで見え方が180度変わるのだ。
強み、追加点、音楽
Legitの作品はコンペティションの視点から見ても見事だった。最後のルーティーンの畳みかけで、黒レジット作品らしく余韻を残して終わるかと思いきや、ストリングの音で一気にその余韻をかき消すという終わり方。テーマ通り心の琴線、もしくは緊張の糸を切るようなサプライズで会場を沸かせた。
こうしたダンスに追加点となる+αを加えることは難しく、このチームはここが強い、というベースが伝わっていなければ成り立たない。だからこそ、そのチームがどこで追加点となる難易度の高い構成を入れているか探してみるのが楽しい。
例えばINFINITIESはステップやフットワークの中に膝から先をくるっと返す小技を用いてターンをさらにダイナミックなものにしている。
体の関節をバラバラに動かすことをアイソレーションと呼ぶが、RAPTURESは音にインパクトを与えるための独自のアイソレーションの色を確立しつつある。チームがまとまりRAPTURESアイソレーションとでもいうべきスタイルが共有されてきたからこそ、アレンジひとつで追加点が狙える。
そして各チームの音楽とのコラボにも再度注目してほしい。Benefit one MONOLIZは今回soul/R&BシンガーTinaとのコラボ楽曲「One Night Only」を製作。
DYM MESSENGERSは国内を代表する稀代のビートメイカーBudamunk & 東京最高峰のMC仙人掌とコラボし、令和のB-BOY STANCEと言わんばかりのメッセージをドロップ。歌詞に合わせたスローな6ステップに会場中のダンサーたちは痺れた反応を見せていた。
ダンサーをパフォーマーとして心からリスペクトしてくれるアーティストたちがいるからこそ、D.LEAGUEは飛躍を続けることができる。そんなアーティスト達や音楽も含めて、D .LEAGUEを楽しんでいただきたい。