第一生命 D.LEAGUE 23-24 ROUND.14!レギュラーシーズン決着!CS残り2枠、そしてランキング2位はどのチームが掴んだのか!?MVDはBBOY SHOSEI!

TAKUMIへの最高の誕生日プレゼント。成長と結束を象徴するスウィープ勝利

Dリーグ史上初のレギュラーシーズン2連覇となるCyberAgent Legitだが、昨年はCSで優勝を逃す苦い経験をしており、今年はその悲願を実現すべく、CSまでの良い流れを作っていくプランニングだ。

いわゆる期待値コントロールと呼ばれるもので、常勝チームほど「これくらいは見せてくれるだろう」という期待が際限なく高まり続けるため、それをストレートに上回るか、裏切るような角度からのアプローチが定期的に必要となる。白Legit、黒Legit、そしてSPダンサーやSPデイレクターとのコラボを交えたLegitの戦略は見事にハマり、加えて新たなスキルの獲得や個々の成長を実現した。

2nd MatchのCyberAgent Legit VS Benefit one MONOLIZではチームのエースであるTAKUMIが欠場。ファーストシーズン以来の欠場であり、体調など万全の状態かつCSを見据えた戦略的欠場だという。CSでは短期間に2つ、ないしは3つの作品を作らねばならず、リソースが限られているからこそCSの準備をTAKUMIに託し、他のメンバーが勝利を獲りにいく。

作品は鼓動と波長をテーマに、メロディのない和太鼓の響きに合わせて起承転結のある世界観を紡いでいく。冒頭ハードヒットで全員が一つの鼓動を表現する中BBOY SHOSEIが静かに飛び出し旋風を巻き起こすようなソロを成功させる。enaのパワーロッキンからデュオ、ロッキンでのルーティーンへと続く。サイレントパートではバチの音に合わせたフットトリックのユニゾンに会場がどよめく。1chの雷のようなソロと照明が、起承転結の転の合図となり、ポッピンのルーティーンパートでは、彼らが一番気持ちの良い音に合わせ強調・脱力することで変拍子にルーティーンが気持ちよくハマっていき、最後の鼓動までLegitらしい練られた構成で勝負していた。

対するMONOLIZは「CAT’S」をテーマに、猫のシルエットを強調したヒールとVOGUEを主軸とした作品を披露。椅子を使った印象的な一枚絵と照明を使った妖艶な始まり。リリックに合わせ世界観を表現しながらも前半は女性らしいシルエット、後半のVOGUEならではのパワフルなダンス。

柔軟性のある大技のユニゾンやボーンブレイキングなどわかりやすい見どころの裏で、筋力のあるメンバーがリフトや立体的に組まれた椅子などをしっかり支え、照明が当たっていない場所でも姿勢をそろえてゆっくり移動するなど、照明や配信画面に映らない部分でステージングスキルの高さがしっかりと見て取れる。

テーマが「CATS」ではなく「CAT’S」であること、最後のポーズに猫要素を用いなかったことなど、深読みできる要素が多々ある作品を提示してきた。戦略の上手いMONOLIZだからこそ、これは原点回帰作品であるとともに、来シーズンの伏線の可能性もある。

CATSと言えば劇団四季の看板作品であり、それにあやかってシアタージャズや演劇など新しい要素を取り込みさらに進化するのかもしれない。もしくは全く別視点からのアプローチもありうるため、オフシーズンにはぜひ過去の作品を見返してほしい。

ジャッジの結果Legitがスウィープ勝利。この日はTAKUMIの誕生日でもあり、事前にメンバーがSNSにスウィープ勝利をプレゼントしたい、と宣言していたが、見事有言実行、最高のプレゼントとなった。

試合後のインタビューでTAKUMIは「和太鼓を用いてのチャレンジ精神、仲間を信じての欠場、自分が不在の中での勝利は、今年のチーム全体の成長を象徴するような結果だった」と語っていた。

勝利するも涙、届かぬCSの舞台。そして新規参入チームの躍進

CS進出をめぐってDYM MESSENGERS、avex ROYALBRATS、KADOKAWA DREAMSの3チームが残り2枠をかけて争う最終ラウンド。運命のイタズラかこの3チームの試合は後半戦に固まっていた。

4th Match、KOSÉ 8ROCKSとDYM MESSENGERSの 対戦カード。8ROCKS は今シーズンを通して「ファンデーション」と呼ばれる「ブレイキン特有の技術と歴史や哲学を組み合わせた基礎」をわかりやすく提示してきたが、今回のテーマは「squad」。

語源は軍隊の分隊だが、一番仲のいい仲間、を表すスラングでもある。今風に言うならいつメン、といったところで、自分たちの絆の強さを表すため、派手さのある技よりフォーメーションにフォーカスしてそれぞれのソロやコンビネーションをどう強調するかを追求した作品という印象だ。

対するDYMは「KAI-HO」をテーマに、フレーバーや色気など、ダンスの本質である「目に見えるけどさわれない」ものを伝える。

今シーズンほぼダンス一本槍できたDYM MESSENGERSだが、パワーのあるダンスに合わせて、ムービングライトなど照明効果をしっかり演出として取り込んだことで、メリハリのある余白や抑揚を産み出した。人間くささを大事にし、わざとダーティに踊ることで、全力で踊った末のよろける姿すらかっこよく見える上、それすらも計算としか思えないボディコントロールを見せつける。

試合結果はドローとなり、5th MatchのFULLCAST RAISERZ VS avex ROYALBRATSで、aRBはスウィープ勝利をしなければCSに進出できないというドラマティックな展開に。スウィープ以外の結果となればDYM MESSENGERSは、新加入チームとして加入年にCSに進出する快挙を達成することとなる。

RAISERZは今シーズン新体制となり、新生RAISERZの完成を象徴するパフォーマンスを披露。ビートレスなストリングのループに合わせ、体を揺らしジャケットを着用するKTR。ジャズのようなしなやかさを取り入れ、aRBに対抗してかコレオグラフを意識した構成。

パワーあるクランプのソロと濃密な音へのアプローチはそのままに「これをやりたかった」が詰め込まれた完成度の高い作品を展開した。途中でジャケットを脱ぎ捨てることで、今までの自分たちにまとわりついていたモノ、ハードルや壁、覆っていた殻を脱ぎ捨てるようなメッセージも深読みできる味わい深い作品だ。

対してaRBは「straight」をテーマに真正面からぶつかる。椅子を使った立体的なフォーメーションで、KING OF POPS、マイケルジャクソン(MJ)リスペクトの作品。MJオマージュは擦られ過ぎ(多用され)ているため、再現度は言うまでもなく、どれだけ斬新さや面白いアプローチを見せるかが必要なハイリスクなテーマとなる。

MJのシルエット、オマージュしこだわった音ネタでの合わせ、二人でのハットスローイングも見事に決め、持ち味である高いシンクロ率、丁寧なストッピング、プラスアルファとなる余韻まで、作品の完成度としてはかなり高い印象だ。

aRBがスウィープを決めればCS進出ができるという条件の中、4-2での勝利と、願い叶わず悔しい勝利となった。上を向いて涙を堪えるメンバー、笑顔を見せながら大粒の涙を流すメンバーもいる中、潔く「申し訳ございません!来シーズンは必ず(CSに)帰ってきます!」と頭を下げるJUNPEI。

ステージ脇からサポートメンバーも飛び出し抱き合い、ピュアなダンスへの愛と絆、勝利への執念を見せる姿に会場は大きな拍手を送った。

試合後、「今シーズンの(審査の)傾向が今までと違うと感じました。この方程式だったら勝てる、というのが180度変わった。」と語ったJUNPEI。

常に高いパフォーマンスとアイデアを出してきたaRBだが、対戦相手との相性や、何より高い期待値に翻弄された印象だ。どんな苦境でも観客を笑顔にしてくれるショーを見せてくれた彼らが、ファンの応援と共に苦悩を乗り越え来シーズンはどんな輝きを見せてくれるのか、期待したい。

関連記事