世界一のダンサー達と日本が魅せたジャイアントキリング!マイナビDANCEALIVE 2024 FINALレポート BREAKING&ALL STYLES編
全員が主役級。火花を散らす駆け引きとバトル
今年のBREAKING SIDEも、映画やコミックから飛び出したようなドラマを背負ったダンサー達が並ぶ。初戦はKIDS SIDEで2021、2022と2連覇の実績を残し現在はD.LEAGUEでも活躍するTSUKKIと前日予選を勝ち抜きそのまま大会優勝を狙うISSIN、共に同世代でJDSF全日本ブレイキン選手権強化選手として切磋琢磨してきた好敵手だ。レベルの高いパワームーブのぶつかり合いで会場を沸かせるもISSINの勝利となる。
同じく強化選手として昨年も大活躍を見せたTOAと、現在D.LEAGUEで絶大な人気を誇るYU-KIの対決は、YU-KIのフィジカルとTOAのエナジーがぶつかり合い、結果TOAが勝利。SHO VS Ryo-spinも、Dリーガー対決として高いレベルの試合になると予想された。トライバルなシルエットと、強力な背中を武器にしたトリッキーなフットワークで魅せたSHOに対し、リズムを外さない高速スピンと正確なパワームーブで対抗したRyo-spinが勝利した。
Mako VS Gravityの試合は予想がつかない。今回のシードダンサーにして世界が誇るB-BOYのGravityと、D.LEAGUEでも強烈なキャラと意表をつくムーブで人気になり、今年初めてFINALの舞台に立つMako。
「Gravityには裏ではお互いにいいバトルにしようと優しく言われたが、バトルになったらメンチを切ってきて、怖いと思った」とMakoがバトル後に語っていた通り、Gravityはバチバチのバトルアティチュードを見せる。Makoも負けじとメンチを切るために追いかけるが、Gravityが振り返った瞬間何もなかったかのように振る舞い、会場から笑いが起こる。両者が踊る前から、空気を自分のフィールドに引き寄せる駆け引きは始まっていた。
強烈なキャラクターとそこから派生する常識にとらわれないムーブを連発するMako。身体の強力なばねと高速なステップで音を尖らせるようなムーブを繰り出し続けるGravity。Makoが大きな爪痕を残したものの、結果はGravityに軍配が上がった。
TOA VS ISSIN、FINALの舞台での同チーム対決が実現!
セミファイナルではISSIN VS TOAの同チーム対決が実現した。この数年、頭角を表してきた若い2つの才能は、何度もバトルでぶつかり、共闘しており、お互いがわかっているからこそ出てくる特別な駆け引きが期待された。
先攻のISSINはランニングマンなどしっかりリズムを掴んだ立ち踊りをし、これから出すムーブがアクロバットや体操でなく”ダンスである”ことをアピールしていく。シームレスに定石を崩したフロアムーブ、パワームーブ、ステップワークを披露し、間に遊びを入れたスキルセットの波状攻撃だ。
対して肘や膝を巻き込む細かくテクニカルなスピンを多用するTOA。常に攻撃的かつ勢いを殺さないバトルスタイルで、TOA独自のシルエットと柔軟性をベースにしたムーブ、最後には音ハメも飛び出し会場が歓声を上げる。
ISSINの2ムーブ目はロールを多用したステップ、ビート以外の細かな音も取っていくスタイルでダイナミックなパワームーブからヘッドスピンのバリエーションを見せる。ステップでの音ハメ、立ち・フロアともにスキのないダンスで勝負の流れを引き寄せるISSIN。お互いにタイミングを合わせてハンドスキップで詰め寄るチームならではの場面もあった。
細やかな音ハメとパワームーブ、スキルフルなフットワークで対抗するTOA。どちらも良く知る仲間だからこそ、お互いの良さを引き出し合うようにしっかりと相手のムーブを見つめ楽しむ、密度の高いバトルだ。結果は2-1の僅差でISSINの勝利。前日予選からの勝ちを引き寄せる流れが味方してか、ISSINが勝負をものにした。
もう一つの準決勝Ryo-spin VS Gravityは、パワームーブ、アクロバットを得意とする二人の対決。
銃を抜いて足元を撃ち遊びじゃないぞ、と威嚇するようなマイムでGravityからバトルが始まる。パワームーブ一つとっても足の位置の高いトーマスやエアー、正確なフリーズ、バネを生かしたノーモーションからの背面跳びなど、様々なスキルが飛び出した。
対抗するように高速トーマスからヘッドスピン、トーマス、クイックストップで会場を沸かすRyo-spin。スピンとスピンの間を変則的なムーブで繋ぎ、フリーズまで攻撃力の高いスキルコンボで会場を沸かせる。
その攻撃力に触発されたGravityの2ムーブ目は帽子を脱ぎパッションを爆発させる。お互いが爆発力のあるムーブを披露した熱のこもったバトルは、Gravityに軍配が上がった。
EXHIBITION CREW BATTLE、そしてISSINの快進撃。自分を高め自信を持てたからこそ掴めた勝利
今年のダンスアライブは新しい試みとして、決勝戦を前に、MYNAVI STAGEでEXHIBITION CREW BATTLEが行われた。九州男児 × FOUND NATION × ROCK STEADY CREW VS GOOD FOOT × THE FLOORRIORZという豪華なメンバーでの勝敗をつけないバトルで、先程まで緊張感の中で戦っていたファイナリストも、笑顔でこのお祭り騒ぎに参加している。こぼれ落ちそうな人数のダンサーたちがステージに登り、各々が世界レベルの際立ったムーブを炸裂させ、会場を一気に沸騰させた。
そうして迎えた決勝戦、 ISSIN vs Gravity のバトルが始まる。二人は2024年4月末時点で、パリオリンピックのブレイキン世界ポイントランキングで10位、11位と並んでいる。パリオリンピックの出場枠は16名。世界大会の前哨戦となる一戦だ。
選手入場から握手をスルーするバチバチのバトルアティチュードで登場のGravity。パワームーブ、高速スピンからのストップ、打点の高いアクロバットなど、バランスよく高いスキルを見せつけていく。
後攻ISSINは、音ハメからトリッキーなパワームーブを繰り広げる。エルボでのスピン、片足を持った状態でのスピン、クイック&キャンセルを多用するフットワークも見せ、何より楽しそうに踊る姿で会場の空気を味方につけていく。
すかさず反撃のGravityは、爆発的なアクロバットからのパワームーブ、勢いを殺さず力技を繰り返す。重力を味方につけたかのように、困難な体勢からのプラス1を何度も盛り込みシードダンサーとしての格を見せつける。
ISSINのラストムーブは技にフォーカスしたGravityに対抗するかのように音楽にフォーカスし、ハンズアップで会場を盛り上げ、ラッパを吹くようなマイムからスワイプス、2捻り加えたスピンからボム、足をつかずにフロアムーブからラビット、ヘッドスピンから脱力。アーティステックなムーブを賞賛するかのようにGravityもフロアを叩く。困難な体勢からの音ハメも飛び出し、最後は握手とハグを交わす二人。
敵対する相手に「俺が一番だ」とアピールしバトルの最後には相手を認め和解する、そんなブレイキンの精神を綺麗になぞった名勝負となった。ジャッジはISSINが3-0で優勝。ISSINは試合後に「2年前は勝てる気がしない相手ばかりでしたが、去年色んな経験を経て、自信を得て勝てると思って挑めました。」と語り、今後のさらなる成長と活躍が期待される。