「招待してもらったことが夢のようだった」国境を越えつかんだ優勝の軌跡!マイナビDANCEALIVE 2024 FINALレポート HIPHOP&HOUSE編
百戦錬磨のベテランを崩した若手世代。Dリーガー対決も実現
MYNAVI STAGEで行われたHOUSE SIDEベスト8ではダンスアライブをキッズの頃から庭として駆け回ってきた世代のダンサーたちの活躍が際立っていた。SEIYAが九州の重鎮NEW YELLOWのKINHUEに、KEINが優勝候補筆頭のshu_heiに勝利するなど、キャリアをひっくり返す見事な結果を残していく。
また、前日予選で勝ち上がり見事FINALの舞台に初出場となったSAKI も、勢いをさらに加速しシードダンサーKwameにエネルギッシュなスタイルで立ち向かうが、Kwameの浮遊感溢れるスタイルに飲み込まれ敗北を喫することとなった。
YOUTEEとTONYの対戦カードは、Dリーガー対決ということもあり注目が集まった。過去には活動を共にし、切磋琢磨した二人の特別なバトルは、握手した手を繋いだままセッションで踊り始めるという型破りなスタイルで始まる。
体躯を生かしたダイナミックなステップと他ジャンルをミックスさせたスタイルのYOUTEEのムーブに対し、TONYはステップだけでなく脱力とトリッキーなフロアムーブで会場の空気を一気に動かし見事勝利を掴む。準決勝でKwameとの対戦が決定した。
キーワードは脱力。火花が散るようなハイスキルが炸裂した。
今年からHOUSE SIDEでは、バトル前から音楽がかかり、そのまま流れでバトルに入るようなシステムとなった。より現場のサイファーに近い形でHOUSEというジャンルが持つ「流れ」の美学にしっかりと配慮されている。
準決勝では4度目の国技館で優勝を狙うKEINと、若手代表SEIYAのバトル。SEIYAは音どりのバネや上半身の揺らぎ、ハンドウェーブなどのバリエーションを駆使しスマートさを崩さず自分のスタイルを見せる。
後攻のKEINも、腕を振らずにツイストだけで跳ねるステッピング、フロアでのフットトリックとターンで玄人まで唸らせた。ジャッキンをベースにした心地よい音遊びとアクロバットを決めて会場を沸かせ、見事KEINが勝利した。
TONY VS Kwameの対戦は多くのダンサー達が、Kwameの快進撃を止めることができるかと注目していた。
赤コーナーKwameは先攻で丁寧なステップに足から頭に抜けるような音どり。ボディバランスをキープしながら、緩急あるステップやターン、腰を振るグルーブで独自の雰囲気を作り出していく。
TONYはニュートラルにステップを踏みながらバイブスを上げていく。体の至る所から弾けるビート、高速のフロアステップ、肩を脱力させ王道から逸れたシルエット、ティッキングなどの音遊びと、面白い試みを並べ化学反応の火花を起こしていく。この火花が連鎖し爆発すれば、Kwameにも勝てるかもしれないと多くのダンサーが予想していた。
シンプルなステップを繰り返しながらもインサイドからアウトサイド、キックからバックステップなど、少しずつ軸をずらし巧みなステップのスキルをアピールし、TONYにアンサーするように独自のバイブス、コンテンポラリーなシルエットを返していくKwame。
TONYのラストムーブ、少しずつスタンスを広げ、テクニカルなステップとフローを展開。フロアでの脱力でエネルギーをためていき、瞬間的に密度の濃いバイブスをみせる。お互いに実験的なバイブスを引き出しあうバトルとなったが、結果はオールレッドでKwameの勝利となった。
何をやっても敵わない。KEINが感じたKwameの愛
アメリカでダンスにHIPHOPというジャンルが生まれ、いち早く取り入れたのは日本とフランスだという。そうして90年代に新たなジャンルであるHOUSEと枝分かれし、それぞれの国が独自の進化を形成してきた。決勝戦はそんな日本とフランスを代表する、進化の遺伝子を引き継ぐ申し子達の最先端なスタイルによるバトルとなる。
ダンスアライブのファイナルの舞台に何度も立ち、バトルのたびに進化してきたKEIN。セコンド席にもDリーガーや同世代で活躍してきた仲間の顔ぶれが並ぶ。
シードダンサーとして招待された、全世界で最も勢いに乗っているダンサーKwame。家族や仲間たちが見守る中、日本での栄誉ある優勝を目指す。
バトルはKEINの先行。竹のような粘りとしなりを同時に成立させる芯のある身体能力を遺憾なく発揮し、さまざまな要素をミックスしたステップやフロア、スタイリッシュなターンまで、綺麗なサウンドコントロールを貫く。後攻のKwameは、小幅ながら緻密なステップから加速して音への独自のアプローチを見せ、カポエイラアクロバットやハイスキルな音遊びでKEINに対しセッションを誘っていく。Kwameの説得力のあるステップにKEINも頷き、時折笑顔を見せる。
Kwameのターンに合わせるように同じターンからムーブに入るKEIN。触発されてか、小刻みで不規則な音どりで、まるで球体の音がフロアへ飛び出し体を駆け巡り、じゃれ合うようなアプローチ。安定のツイストステップでの細やかな足運びから、得意のフロアムーブのスキルセットを成功させる。
KEINと対話するようにKwameのラストターン。スケーティングをベースに時折膝でのスウィング、足首でのストンプなどを使いながらマニアックに打音を表現していく。しなやかな膝や腰、サルサのようなグルーブ、バレエとはまた違った上品なシルエットで音を操り、最後はフロアに倒れ込みポーズを決め終了。
KEINは試合後にこの時のことを「Kwameのダンスから愛のようなものを感じて、これに返せるモノが自分の中に見当たらなかった」と述べている。ダンスのスキルではなくハウスへの愛、ダンスへの愛で相手を納得させるKwameの勝利は、会場に晴れやかな爽快感をもたらした。