「招待してもらったことが夢のようだった」国境を越えつかんだ優勝の軌跡!マイナビDANCEALIVE 2024 FINALレポート HIPHOP&HOUSE編

全国から強豪が集う、HIPHOPの首都争奪

HIPHOPには地元や自分を育ててくれた故郷を背負って踊る「レペゼン」という文化がある。今年も広島、兵庫、大阪、愛知、静岡、東京、イギリスと、様々な地域をレペゼンするダンサー達が集まった。以前までなら東京のダンサーが中部予選で優勝、関西のダンサーが九州予選で優勝など、ダンサー人口の多い都市の強さが目立つ印象があったが、ここ数年は動画やSNSの普及、そして日本各地でのバトルイベントの定着もあり、どの地域からも良いダンサーが埋もれずに頭角を表す時代になった。そうしてその才能が世に知られるきっかけとなる大きなイベントがダンスアライブの舞台だ。

ベスト8での戦いは、4度目のファイナルYoukiと、10年ぶりに参戦したというULSDの渋さ際立つバトル。研ぎ澄まされたベーシックを武器にクリアに渋く空気を震わせる、踊れるビートメーカーULSDに対し、細身のシルエットながら太くクリアな音どりでオールドスクールを渋くミックスしたYoukiに軍配があがる。

2回戦目はTenju、SEIYA、Runa Miura、Karimなど強豪たちの集う前日予選を突破して登場したHJM に対し、ULSDと同じVIBEPAK、そしてDYM MESSENGERSとして躍進を続けるKが登場。フローの中に独特のグルーブと爆発力を上乗せするKと、オールドスクールまで幅広く踊るオールラウンダーのHJM。

ジャッジの結果Kが勝利し、初戦で惜敗した昨年からの成長をしっかり見せつけた形となった。

3回戦目はSusumuSpaniel VS TakE/SlasHの対戦カード。音楽へのアプローチが面白い二人の勝負は見事TakE/SlasHが勝利。4戦目のYUUSHIN VS Evion Mantisの試合では、会場がシードダンサーの実力を一目見ようと注目が集まる。YUUSHINは3度目のFINALの舞台。躍動感のあるステップと途切れのないボディコントロールで縦横無尽に自己を表現していく。

イギリスから来た刺客、Evion Mantisは若干23歳ながら、古きも新しきも様々なHIPHOPの要素をオールラウンドに並べ、相手をしっかり見た上でバトルを行うスタイルだ。YUUSHINのムーブへのアンサーもしっかり返し、自分のスタイルを上乗せした駆け引きの強さでEvionは見事BEST4へ進出する。

一音入魂のHIPHOPと、ダンスを通した熱い対話

準決勝のバトルはお互いのムーブに触発され、実験的なサウンドアプローチに挑戦したくなるいいバトルが続く。こうした触発の相互作用はダンスでの対話などと呼ばれる。Youki VS Kのバトルはお互いに音を分析し、自分でも何が出るかわからないハイな状態でのバトルであった印象を受けた。

先行のKは頭にタオルを被せ目の見えない状態でステップを踏み始める。顔を隠すことで、ムーブのリスクが上がるだけでなく、敵として眼中にない、自分は音楽と向き合っている、などのヒール(悪役)なスタンスでのバトルアティチュードを示していく。タオルがフロアに落ちると、片足でのロングターンで会場が沸き立つ。常に音の中の揺らぎを取りこぼさず、ロールやバタフライを踏みながら上半身で深く音を取っていくK。その揺らぎに合わせてリズムをとりながらYoukiのムーブが始まる。

全身を通り枝分かれするウェーブ、ネックを中心に大きく動かしているのに全く不安定にならず、逆にバイブスやスモーキーさを表出していくYouki。深いバタフライなどしっかりサウンドに合わせた攻撃を繰り出し、Kの手の癖などもオマージュして挑発するようにKをフロアに誘い出す。

2ムーブ目、Kのステップとフロアをよどみなく繋げていくムーブは、ニュートラルに見えて腱の柔軟性と姿勢を保つための筋肉がバランスよく味方しないとできない動きだ。わざとダーティに踊っているが、しっかりと芯をくった音の取り方と武器である膝のバネや強さ、そして張り手のような挑発も含め会場を爆発させる。

ダンスを通した対話に嬉しげなYoukiだが、ウェーブとクレイジーレグなど、オールドスクールなHIPHOPのかっこよさ渋さを見せながら、フロアを叩き相撲をイメージしたアンサーもしっかり返していく。首の位置や肩の使い方、ロッキンのフレーバー、一歩一歩動くスタイルのシルエットにこだわりが見て取れる。甲乙つけ難いバトルではあったが、ジャッジの結果は爆発力の差でKが勝利した形だ。

もう一つの準決勝、TakE/SlasH VS Evion Mantisは、世界を股にかける若手と関西のベテランダンサーの対戦カード。

先行Evionのアニメーションのような動き、上半身をブラすことなく精密なウェーブやボディコントロールで一つの音に濃密なダンスを載せていく。彼なりの音遊びをした後はフロアで浮遊感のあるムーブ。座り込んだ状態でのムーブは力が抜けてしまいがちだが、しっかりと困難な体勢をキープしたまま音を外さず自分の世界を示していく。

Evionのバトンを受け取るように深いダウンから始まったTakE/SlasH のムーブは音遊びなら負けないと言わんばかりにタイトなサウンドアプローチで攻める。フロアでのスローアンドクイックの緩急あるムーブと、ビートの芯をわずかにずらすことで太く不思議な音どりを表現する。

Evionの2ムーブ目は、足首と腰のツイストで音を取る遊びから、HIPHOP SIDEでは珍しい高速ステップで、シンバルの音まで漏らさず拾っていく。まさにMantisの名の通り、カマキリのように手を尖らせたタットのコンボと、膝を組んだハードな体勢からのフロアに入り、最後のスローモーションとティッキングで会場が歓声をあげる。

TakE/SlasH のラストムーブ、モネスティからEvionに応えるように倍速でのボディコントロール。そのままアームスウィング、フロアでの粘り気のある足運びからさらに高速な音どりで爆発力を見せつける。

双方が自分の得意なスタイルを武器にしながらも、実験的でクリエイティブなムーブを見せつけた熱い試合となったが、7−0のストレートでEvion Mantisの勝利となった。

上質なゲストショーケース。ハプニングが起きた決勝戦。優勝はどちらに?

決勝戦を前に、東京アンダーグラウンドを代表するCREWであるGRAYSOURCEと豪華ゲストの一夜限りのコラボショーケースが行われた。新プロデューサーのTatsuki や決勝に上がったKも所属するGRAYSOURCEの、ファットな音に合わせたゴリゴリのHIPHOPスタイルは海外から「JAPANESE HIPHOP STYLE」と呼ばれ、アジアを中心に定着しつつあるという。スピード感とダイナミックさを全面に押し出したダンスのショーケースと、知る人ぞ知る上質なゲストパフォーマンスの数々に会場は熱気を帯びていく。

そんなゲストショーの汗もひかぬまま、HIPHOPの決勝戦、K VS Evionのバトルはハグによる平和な雰囲気ではじまった。

ビートが始まるとすぐにKが低空姿勢からスタンスの広いダンスで音を体現していく。タオルを頭にかけながらも、今回はしっかり相手に視線を送り、適度に脱力したムーブをする中、ボトムスの裾を踏むアクシデントが起こる。Kはそのアクシデントを逆手に取り、わざと不安定に見えるスタイルのダンスを展開していく。そうしてタオルを顔にかけ、視界が不安定な状態で相手を探し、最後に日本刀で切り付けるような踊りで威嚇する。

対してEvionはKがフロアに落としたタオルを拾い、ヌンチャクのように使いながら、体に巻き付け独創性の高いムーブを展開する。軽やかな身体操作も見せつけ、トラブルやハプニングを、楽しむべきイベントとしてエンジョイしている。

Evionのムーブ中にKはしっかりと裾を固定し、ラストムーブはEvionから受け取ったタオルを掴み、音を取り込んでは体の中で爆発させるようなスタイルで会場を沸かせる。足首の使い方が巧みなEvionを意識したムーブや、歌舞伎で見栄を切るような動き、上半身を振らずに下半身だけで深くリズムを刻んでいくムーブを見てEvionは楽しんでいる。

Evionラストムーブ、しなやかなグルーブと小幅なステップで自分に注目を集め、偶然か阿波踊りのようなムーブを繰り出す。フロアムーブではつま先だけで体を支えるフィジカルの強さ、カマキリのようなキングタットにKRUMPのようなパワフルなハンドジェスチャー、ボーンブレイキングなど引き出しの広さを見せつけ会場を沸かせ、最後はハグでお互いを讃え、勝負を終えた。

ジャッジの結果は6-1でEvionが勝利した。心の底からダンスや音楽、そしてバトルの駆け引きを楽しんでいたEvionに刺激を受けたダンサーも少なくないだろう。

試合後のインタビューで、「ドラゴンボールやワンピースなど、世界的なコンテンツが生み出された夢の国で、こんな大きなイベントに招待してもらったことが夢のようだ」と述べていた。

帰り際、ALL STYLESで優勝したMAiKAに対し、「アフターパーティでバトルしないか?」と楽しそうに声をかけていたのが印象的であった。

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マイナビDANCEALIVE 2024 FINAL 優勝者コメント

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