第一生命 D.LEAGUE 23-24 CHAMPIONSHIP!!!王者KADOKAWA DREAMS、2連覇の偉業を達成!!MVDは2年連続で颯希(SATSUKI)。

王座防衛に挑戦者として挑んだKADOKAWA DREAMSの軌跡と背景

昨シーズン、無名の選手たちを鍛え上げ、ついに王者となったKADOKAWA DREAMS。今シーズンはユニフォームカラーを白から青に変え、1から挑戦者の気落ちで挑むと宣言していた。若き王者にとって王座は居心地が良くない。王であれど戦場に赴いては、壁や困難を見つけ、敗北も経験し、屈辱を糧に自分を磨き、何度も壁を乗り越えていく。

自らハードな環境に身を置き、新たなスタイル、新たなビジネス、新たな価値観を産む着想力、”アントレプレナーシップ(起業家精神)”こそがこのチームの最大の強みに思える。

ディレクターKEITA TANAKAはシーズン中のインタビュー記事の中で「今年はKDが負けて欲しいというのが世の中の流れだと思っています。僕がファンだったら、まず、CyberAgent Legit に負けて欲しい。DYM MESSENGERSやLIFULL ALT-RHYTHMにも倒されて欲しい。色んな期待を背負っていることがエンターテイメントだと僕らは理解しています。賛否を乗り越えて、D.LEAGUEを面白くするためには悪者が必要なので、悪者になります。」と語っていた。

自分達の置かれた立場を逆手に取り、試合前の煽り映像ではわざと尊大に振る舞い、ダンスだけでなくD.LEAGUEや試合そのものを楽しんでもらう。そんな広い視座からの駆け引きがKDの仕事であった。

そしてKEITAの予言通り準決勝ではDYM MESSENGERSと、決勝戦ではCyberAgent Legitと勝負することになった。

KDは準決勝から決勝へ、TSYとMINAMI以外全てのメンバーを変えて挑んだ。メンバーを分けることで2作品の完成度を高めること、何よりメンバーが準決勝から決勝へのバトンを渡してくれることを信じての采配には、ドラマを感じてしまう。

KDの初戦となる準決勝ではValuence INFINITIESに勝利したDYM MESSENGERSとの対戦。DYM MESSENGERSは今シーズンからの新規参入チームにも関わらず準決勝へ進む快挙を成し遂げた。KDは後攻となる。

「What is dance?」をテーマに、ダンスの自由さや楽しさという本質的な部分を伝えるというパフォーマンスを披露するMESSENGERS。それぞれのソロから始まり、ドープなビートに合わせてのHIPHOP、深いダウンの音どりで難易度の高いルーティーンを見せる。

用意したお酒で乾杯したのを起点にビートが変わり、よりセクシーによりパワフルにロッキンのルーティーンを展開し、それぞれが順番にソロを展開して自分達の武器である「個」の力を爆発させる。競技としてのダンスで自己を磨きながらも、ライフスタイルとしてのダンスを楽しんでいる姿をしっかりと表現してみせた。

対してKDは、煽り映像で颯希(SATSUKI)が尊大な言葉でヒール(悪役)を装いながら、「1.2.3.KD !」の合言葉を盛り込み、会場の空気を盛り上げ、パフォーマンスでは「等身大の私達」をテーマに、ジャズ、コンテンポラリー、バレエ、アニメーションなどの要素を緻密に盛り込み王者たるKDの強さを見せつける。

難易度の高い板付き時点からブレずに肩の上に立ち続ける技術、質感を合わせたカノンを見事に成功させ、リリックに合わせた颯希(SATSUKI)のアニメーションのソロに会場が大きな声援をあげる。クイックなルーティーンで空間をロックし、サイファーラウンドからの伏線回収と言えるASUHAとRyoによる柔軟なコンビネーションが披露される。

アクロバットもバレエのターンもリフトも、ジャッジに厳しい目で見られる傾向をあえてわかった上で、武器として盛り込み、ジャッジだけでなく見てる人全てに感動を与える「KDの黄金比」がそこに埋め込まれていた。

ジャッジの結果、3-9で勝利し、KDは昨年に引き続き決勝進出を決めた。

どんな場面でも決して油断しない。Legitの優勝への執念

2年連続レギュラーシーズン優勝を経験し、特に今年は圧倒的な強さでレギュラーシーズンを勝ち抜いたCyberAgent Legit。昨シーズンの決勝でKDに敗北してからの臥薪嘗胆。勝っても勝っても謙虚に自己を省みチーム全体でスキルを磨き続ける姿を、ドラマの主人公のように見ていたファンも少なくないだろう。

CSは決勝戦以外、レギュラーシーズンの順位が高いチームにアドバンテージとしてジャッジに一票加算されるが、準決勝からの試合となるLegitはアドバンテージがあるからといって気を抜く様子もない。

レギュラーシーズンで唯一敗北を喫したKOSÉ 8ROCKSと準決勝でリベンジマッチとなったLegitは「THE TRUTH」をテーマに密度の濃いダンスを披露した。Legitというチーム名自体に「本物」という意味が含まれており、真実と本物、言葉を重ね合わせることで真に輝く自分達のダンスをこのステージにぶつける。

また、ダンスも他のスポーツ同様、一度ステージで踊ると体が温まるだけでなく不要な緊張が取れ、パフォーマンスが向上することがある。8ROCKSがトライアルマッチで一度踊っているアドバンテージを侮らず、ステージ上でギリギリまでストレッチを行なっていた。

逆さ吊りの1chという衝撃的な一枚絵からスタートしたLegitのショーは、1chの雷、B-BOY SHOSEIの竜巻のようなソロに合わせフォーメーションを変え、アニメーションでのルーティーンへと続く。ブレや瞬きなど全て意識することでノイズを削ぎ落とし「寸分狂わぬ」という表現がマッチするタイトさだからこそ、表情や首の揺らぎなどの細かな要素でのアピールが際立つ。

2エイトごとに盛り上がりを用意し、エースTAKUMIのソロは照明との相乗効果で空間が歪んでいる錯覚すら覚える。テンポアップしてからのボディコントロール、タット、バイブレーションからカノンへとつながるラッシュの攻撃力は凄まじく、全体を通して一つの生命体のような空間のうねりを生み出していた。

ジャッジの結果は5-7と大接戦での勝利だが、Legitは喜ぶのではなくすぐに円陣を組み、お互いに気持ちを引き締め直すように語りかけ合う。CS優勝への執念と本気度が伝わってくる。

そうして迎えたKDとの決勝戦。両チームとも世界でのパフォーマンスを経験し、一回り大きくなって決勝の舞台に帰ってきた。Legitにとっては昨年の雪辱を果たす最高の舞台となる。出演順はCSランキング順位が高い方が後攻となるため、Legitが大トリとなる。

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