胸を貫く美しい世界 ーDAZZLE「ASTERISK」感想ー ビジュアル&ダンスシーン編

5月11日に、ダンスカンパニーDAZZLEが演出・脚本を行う舞台公演「ASTERISK」を見に行きました。 舞台に広がる美しい世界に胸を打たれて帰ってきたので、ダンスシーンやストーリーなどいろんなところにフォーカスしながら公演の感想を書いていきたいと思います。

公演の登場人物として、看守の3人が、もう、とにかくかっこよく感じました。當間さんは凜としているし、TATSUOさんNAOさんはアウトローな佇まいで3人ともかっこいい! でも、振り返ってみればセリフも少なく、登場人物のキャラクターを表す要素は脚本的にあまりないかと思います。
それでもキャラクターを感じ、それがかっこよく感じるのは、ダンスの印象によるものでしょう。ただダンスがかっこよかっただけでなく、ダンスがちゃんとストーリーや登場人物の印象に反映されて返っていたように感じました。すてきなパートでした。

2幕「手術」

続いてこのパート。ここで登場するタイムマシーンは、いつもの衣装といつものネタで登場しました。

参考動画↓
http://youtu.be/pr41qotGmlw

タイムマシーンが「いつもの」感じでの登場だったので、公演の中ではちょっと異質な感じもありましたが、そこがある意味すごく「タイムマシーンらしいな」、と感じてニヤリとしました。

その一つ前の「新聞」のパートで、市民達が新聞を広げながら美容整形の噂話をするシーンがあるものの、ストーリーの本筋である兄と妹のエピソードでは、医療を感じさせるような部分がほぼなかったため、「まさかこれをストーリーに組み込むことはできないだろう」と思いながら見ていました。
しかし、ここでのタイムマシーンの登場が、後に妹が自らの意思で、美容整形のプロの手により瞳を失うという、終盤に向けての重要なシーンにきちんとつながっていくので驚きました。
(後で知ったのですが、タイムマシーンは再演からの参加であるものの、「手術」パートは初演時からあったんですね。)

2幕の「貢物」

さて、公演自体は静謐な雰囲気で進んでいく中、唯一ハートフルを振りまいていたのがこのパートで登場した梅棒でした。梅棒ならではの歌詞ハメや、思わず「おおい!」と突っ込みを入れたくなるおもしろ演出があって、見ていて心が温かくなりました。
休憩明けの2幕冒頭という位置も、リフレッシュ気分で見れてよかったです。

普段は主に既存のJPOP一曲使いで作品作りを行う梅棒ですが、今回の公演ではコテコテのアイドルソングなノリの、自分たちで歌うオリジナル曲「がむしゃらMy Heart」で登場します。そしてこの曲がすごくいいんです!
公演ストーリーに合わせた曲になっていて、風船売りの若者が高嶺の花である令嬢(妹)に恋をして、お金持ちなライバルに笑われながらも、自分なりの方法で思いを届けようとする姿が歌詞に綴られています。
健気で、前向きで、疾走感があって聞くと元気がでます。

(iTuneStoreで購入しました!)

この曲は梅棒の伊藤今人さんが作詞をされています。
サビの歌詞「♪破れかぶれ叫べ愛の歌 体の芯が軋むほど」で出てくる「叫べ」「体の芯が軋むほど」という比喩が、身体感覚を感じる珍しい使い方だなぁと思いました。こういう言葉を使うのも、ダンサーならではなのかな? と個人的に思いました。

2幕の「軍隊」

ダンスについての最後に、一番私の印象に残ったパートのことを書いて終わりたいと思います。この「軍隊」でのダンスが、私には兄の孤独やあきらめが流れ込んでくるようで、あまりにも悲しかったんです。
位置づけとしては、兄が向かった戦場の様子を表現したダンスです。
DAZZLEと男子新体操のBLUE TOKYOが共演し、BLUE TOKYOの手具を使った動きやアクロバットがバンバン入ります。派手なパフォーマンスシーンです。

アクロバットというと、「力強い」「ダイナミック」というイメージがあると思います。このシーンでも確かにそれはあります。でも、この軍隊のシーンのダンスは決定的に悲壮感を感じるんです。で、その原因が新体操の美しさなんじゃないかと思います。
アクロバットがあるダンスのジャンルはいろいろありますが、手先を伸ばし、足先を揃え、技のきれいさが求められる新体操のアクロバットがあまりにも美しかったからこそ、兄の今までや、これからの戦場で運命に対して不吉な影を感じてしまったんだと思います。
アクロバットなのに悲しい。アクロバットだから悲しい。そんなことを考えました。

コンテンポラリー調のDAZZLEと、DAZZLEには無いアクロバットの要素がある男子新体操BLUE TOKYO。
ジャンルは違えど、この2組の共演するダンスシーンはとても相性が良く感じました。この相性の良さは絶妙なキャスティングによるものなのか? それとも初演以前から何か親交があっての相性の良さだったのか? 背景が気になります。


上に挙げた以外にも、たくさんのダンサーが登場してきます。
私もそうですが、公演を見に来た方の中にはすべてのダンサーを知っているわけでは無い人も多いでしょうし、そういう人にとってはさまざまなダンスに新しく出会えるのが、ASTERISKの一つ魅力になっていたと思います。

そして、そんな魅力を強力にサポートしてくれていたのが公演パンフレット! これがわかりやすくてよかったです。
ASTERISKのパンフレットには、PROGRAMとして、すべてのパートのタイトルと、そのパートの振り付け・出演・音楽制作のクレジットが載っているページがあります。このページがすごく役に立ちました!

ダンス公演にかかわらず、舞台などでも、パンフレットに出演者の写真と名前が載っているのはよくあると思います。でもそれだけだと、席が後ろだった場合見分けがつかなかったり、動いているのと写真とでは印象が変わってしまったりして、後から見返して「あのシーンに出ていたあの人は誰だっけ?」と演者が特定できない場合があります。
その点、パートと演者の一覧があるのは非常にうれしいです。

すてきなダンスと出会って、ダンサーの名前がわからなくても後から調べてちゃんとファンになることができる。いいパンフレットだと思いました。


思い入れが強すぎて長くなってしまったので、ここで一旦記事を切ります。
次の記事では、「ストーリー」に注目しながらASTERISKの感想を語っていきます。

続き「胸を貫く美しい世界 ーDAZZLE「ASTERISK」感想ー ストーリー編」

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