ヒップホップの文化、歴史、種類など詳しく知りたい人はこれを読むべき!ゼロからはじめるヒップホップ読書4冊をわかりやすくレビュー

本を読もうと思ったきっかけは、あるヒップホップダンサーの方の言葉。「ヒップホップは単なるダンスの1ジャンルではない。音楽・文化・ライフスタイルを全部ひっくるめたもの」。それを聞いた時から、「じゃあ、多くの人が目指し・憧れるヒップホップとは、そもそも何なんだろう?」と疑問に思うようになりました。

うなりながら読んだのは、「第3章 ギャングスタ・ラップの真相と深層」。暴力的で過激なギャングスタ・ラップの歌詞は、従来の道徳観や美意識とはずれたもの。ではなぜ、ギャングスタ・ラップがあんなに支持されたかを、当時のドラック事情や人々の心理から生々しく解説します。
特にここで書かれている、コミュニティがいわゆるホモソーシャルっぽいものになっていく集団心理は、読んでいて「なるほどな」と思いました。

私がこの本を読み始めて、本題に入る前から「いいなぁ」と思ったのは、著者がこの本について「ヒップホップとアメリカとの間の愛憎関係であり、そしてヒップホップとぼくとの愛憎関係でもある。」と書いているところ。
「愛」がある故に、著者は愛情が感じられないヒップホップの批判記事を読むと、どんなに正論が述べられていても腹が立つそうです。そういう感情的な部分を見せられると、私の気持ちは懐いてしまいます。
反対に「憎」もあります。著者はヒップホップを愛していますが、時々その考え方や表現に共感できないところもあり、そこは本の中でも批判的に書かれています。
しかし、長年音楽業界の最先端にいた著者だからこその見識ある意見が書かれていて、それも一つの意見として勉強になります。
何でもかんでもアメリカのヒップホップの出来事を肯定するのではなく、自分の中で「私はどう考えるだろう?」という問題提起が生まれます。

『ヒップホップ家系図 vol.1(1970s-1981)』エド・ピスコー

ヒップホップ家系図 vol.1(1970′s~1981)普及版(ソフトカバー)

最後にご紹介するのは漫画です。CDショップの書籍コーナーで見つけ、物珍しさから購入しました。オールフルカラー。風合いのあるラフ紙。A4よりもちょっと大きな大型本。ムード満点のアメリカン・コミックです。
「漫画でわかる○○」のような実用的なものではなく、アート性の強いマンガ。
漫画が約90ページ分あって、1970年代のヒップホップの誕生から1981年春までの出来事が、絵巻物のように描かれます。ストーリーに派手な起承転結があるわけではありません。ヒップホップ誕生の時代を生きたたくさんの登場人物とその交流関係を、糸を手繰るように連綿と描いていきます。
キャラクターの描き分けや、コマの端のちょっとした小ネタに、著者のヒップホップ愛を感じます。

漫画なので、どこまで事実なのか判断しかねる部分もありますが、漫画だからこそわかることもあります。
例えば1970年代は、音楽はレコードで売られていた時代でした。有名なエピソードで、アフリカ・バンバータは自分の使用しているレコードを他のDJに知られないよう、ラベルを貼り替えていたというものがあります。
現代人にとって音楽はPCやプレーヤーに入っているものですが、物として大量のレコードを持っていたDJにとって、その管理は大変な物。部屋一面につるされたラベルと、かごにどっさり入ったレコードという絵を見て、アナログ時代の凄まじさを感じました。
4冊目として読みましたが、あまりにも発見が多くて、自分の無知さを改めて知りました。
漫画というのは、やはりあなどれません。

まとめ

本を4冊読み、まだまだヒップホップの扉を開けた段階ですが、何となくヒップホップについて感じたのは、「みんなでたくましく生きる」ということ。
仮に社会に不満があったとして、世をはかなんで一人自殺するのはきっとヒップホップ的ではないし、ものすごくラップやDJなどのヒップホップの要素に長けていても、無人島で外からの情報を遮断して、培ったものを誰にも披露せず自分だけのものにしていたら、それもヒップホップ的でないような気がします。
人から影響を受け、人に影響を与え、そうやってみんなと一緒に進化していく感覚が、ヒップホップには流れているように思いました。今後この感覚が正しいものか、見聞を広げて確認していきたいです。
そして、ヒップホップを知ることにより、ダンサーが表現したいものを、より深く理解できるようになっていきたいです。

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