人はなぜダンスを見るの?テクノロジーはあたたかく、凜として〜ELEVENPLAYダンスインスタレーション『MOSAIC Ver.1.5』レビュー〜

今回のコラムでは、2015年4月25日〜27日にスパイラルホールで上演された、ELEVENPLAYダンスインスタレーション『MOSAIC Ver.1.5』を取り上げます。

■個性豊かなダンサー
日ごろほとんどダンスインスタレーションを見にいくことがないので、こういった種類のダンスでは、集団で一つのものを表現することが重視され、ダンサーの個性はあまり出さない公演の作りになっているという先入観を持っていました。しかし実際見てみると、ELEVENPLAYは一人一人がとても個性豊かで魅力的。
体格や髪型が一人一人違っていて、ぱっと見たときもわかりやすく感じました。

公演の後半で着る、無地の布で作った衣装があります。この衣装がメンバーによってパンツもあればスカートもあり、バリエーションが8人全員違っています。柔らかそうな布の質感が着心地よさそう。

どれも形が凝っていてメンバーの雰囲気にも合っていてかわいい。個性を生かした衣装のファッションにも、ときめくものがありました。

メンバーの篠原沙弥さんはWebサイトに「容姿端麗なルックス」と書かれているのも納得の、等身が高くスタイル抜群の女性。
ステージ上のビジュアルが重要な場面でセンターにくることが多いのですが、彼女が目立つ位置にくると、ステージの絵が引きしまります。

Scene 7「右脳」のシーンでカメラをつけて登場する丹羽さんは、長身で意志の強そうな顔つきの女性。
頭に機械をつけても、機械に負けない強い存在感があります。
テクノロジーと人間では、物珍しさからテクノロジーの方が目立ってしまいそうなところですが、この公演では人間の存在感が機械に負けていません。人間と機械が共存しています。

ダンスでは、講免綾さんが特に魅力的。ダンスから佇まいまでエネルギーにあふれていました。
Scene 5「I WAS」では、講免さんが立方体の上に立ち、幸せそうな満面の笑みを浮かべます。ここでの講免さんの表情がとてもまぶしい。その後、酩酊状態で楽しそうに踊り、しばらくして酔いが冷めます。
すると舞台に一人立った講免さんが、無音の中で自分を確かめるようにソロを踊ります。動きの一つ一つは力強く美しいのに、肩から「私、なにやってるんだろう」という声が聞こえてくるような寂しげなダンス。ここも女性なら共感を感じるシーンだったと思います。


公演では、女性の面倒な内面がさまざまに表現されますが、最終的に女性たちは解放され、温かい雰囲気で結末をむかえます。
ということは、現実に生きる女性たちも、いつか晴れて解放される時がくるのでしょうか?
来るかもしれないし、来ないかもしれませんが、多分それはささいな問題なのでしょう。
なんてったって、女性ゆえの苦悩を表現する女性たちの姿もまた、美しいのですから。
自分自身がわからなくなったり、孤独を感じたり、他人に憎んだりするのはつらいですが、そんな感情に翻弄されるそのままの姿を愛しく思ってくれる人が、きっとこの世界のどこかにいるのでしょう。私がステージのELEVENPLAYを美しいと思ったように。

20代後半から30代というと、社会全体の中ではまだまだ若いですが、女性としては「薹がたった」と言われてしまう年齢です。
自分の体が下り坂に入るのを実感し、美容にかけるお金が増えていく年代でしょう。
私がまさにその年代なわけですが、ある時から自分の体に「もう若くないんだから、ダメだな」と見切りをつけたという意識がありました。

でも、ELEVENPLAYの身体表現は美しく、「私が見切りをつけたこの体は、実はこんなにも美しくなれたんだ」という、驚きと後悔と発見が入り交じった、不思議なひらめきが生まれました。
それにより、自分の体や、体を持つ自分自身についても、前向きな気持ちになれました。
人がダンスにひかれる理由の一つには、回り回って自分の体や自分自身に対して、ひいては人間や生きることに対して、前向きな気持ちになれるからかもしれません。

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