女に生まれて、戦えてよかった〜『*ASTERISK Goodbye, Snow White 新釈・白雪姫』レビュー〜

一番の盛り上がりである結婚式のシーンでは、YUYUさん演じる雪菜と、KITEさん演じる結婚相手が、とても幸せそうにポップを踊ります。それを見ていても、「私と雪菜は違うな」、と思います。
だって私あんなに弾けないですもん。
もちろん私の人生において、別に弾けなくても十分に生きていけるのですが、それでも嬉しそうに踊る雪菜を見ていると、祝福だけではない敗北の感情が同時に生まれます。負けを感じる必要なんてどこにもないと頭ではわかっているのに。
そうやって、ただありのままで存在しているだけで負の感情を生み出すのが、魔女にとっての姫という存在なんでしょう。

このストーリーで、魔女が幸せになる方法があるのならば、考えられるのは白雪姫のことなんて気にしないこと、自分を白雪姫と比べないこと、戦ったりしようと思わないことだと思います。でも私は戦おうとする加々美と、彼女を鼓舞する鏡の精の言葉に非常に共感します。
鏡の精のセリフに、「あなたは戦ってきた自分を誇りに思いながら死ねるはず」というものがあります。私はあのセリフが大好きです。
ストーリーの中で加々美は不幸に見えました。それでも私は、自分自身と戦い、何かを成し遂げようとしている人を応援したいと思います。それこそが人を成長させる原動力だと思うからです。
加々美には、雪菜と戦ったことは無駄じゃなかったし、戦ってよかったと思ってほしいです。


ストリートダンス系の舞台では、原作をダンサーが自作するものも多いですが、今回の*ASTERISKでは、原作者が起用されました。*ASTERISKとしては初の試みです。

公演の初めの方に、録音されたセリフを流す加々美の独白のシーンがあります。牧さん演じる加々美の動きが、中村うさぎさんの言葉に乗って、より映えます。
音楽がかかってのダンス…とは少し違い、録音された加々美のセリフと、カメラのシャッターなど効果音の入った音源に合わせ、牧さんがポーズを変えていきます。人形のようなちょっと不自然な感じがあり、自然の摂理に反して美を保つ、加々美というキャラクターの印象を強めます。
プロの方が原作を手がけているので、やはりセリフの言葉が非常に豊か。作り込まれた質の良い言葉の上に牧さんのダンスが乗っているというのが、とても贅沢に感じました。

ダンスの魅力というのは言葉がいらないこと。それは事実だと思いますが、以前それをうたい文句にしている公演を見に行った際、言葉を使わない故に、ストーリーや感情の表現が非常に窮屈だと感じたことがあります。これでは「言葉がいらない」というダンスの魅力が、公演の足かせになってしまいます。
その公演は普段はストリートダンスを見ないお客さんもたくさん来場していたようだったので、その人たちが「言葉がいらない」というダンスの魅力を「その程度のものか」と思ってしまったら悲しいな、と思いました。
今回の公演では、よい言葉があることによって、ダンスの魅力をより豊かに伝えることができると、改めて実感しました。

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