「私自身も、最大の挑戦だった」 プロデューサー KANU、NAIL the NAME最終オーディション直後インタビュー
2020年に産声を上げた日本発・世界初のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」。当初9チームで幕を開けた熱狂は、6シーズン目を迎えた現在16チームへと拡大。さらに来期の26-27シーズンは新たに4チームが参戦し、プロダンスシーンは未知の領域へと突入する。
その新チームのひとつを率いるのが、キッズ時代からダンスの全国大会を席巻し、今なおフィメールダンサーとしてトップを走り続けるうちの一人、KANUだ。チームを発足する上でまず最初に始動したのは、約10ヶ月にわたる過酷なプロジェクト『NAIL the NAME オーディション』。プロデューサーとして、コンセプトの構築からブランディング、そして選考まですべてを担い、332名の熱き志願者の中から精鋭を選び抜く。
自身初となるD.LEAGUEへの挑戦。ゼロからチームを創り上げる重圧。そして、初めて「選ぶ側」に立つという葛藤。最終審査の熱気が冷めぬ中、オーディションを終えた率直な気持ちや26-27シーズンに向けた想いなど、その胸の内を訊いた。
KANU Instagram:@kanu_k_
◼︎正直、9割不安だった
— まずはオーディションを終えた今、率直な感想をお聞かせください。
今は、やっと一区切りついたという安堵感と、これから始まる未来への責任感が入り混じっています。正直に言うと、最初にこのオーディションのお話をいただいた時は「不安が9割、期待が1割」でした。私はこれまでD.LEAGUEを経験したことがなかったので、プロデューサーのお話をいただいた時は「なんで私なんだろう?」という気持ちの方が大きかったですし、やっていけるか不安の方が先に頭を過りました。
— その不安な状態から、引き受けることにした理由を教えてください。
今回のオーディションのお話をまず最初にいただいた時、プロデューサーというこれまで経験が無い役割のオファーでした。「あれだけハイレベルのD.LEAGUEの戦場に自分が挑みに行けるのか」というプレッシャーが物凄くありました。でも昔から、ナンバーなどで生徒にダンスを教えることや、その子の魅力を引き出したりすることには自信がありました。振付の仕事でも「KANUが関わるとその子の良さが更に輝くね」と言ってもらえることが多くありました。まずは「オーディションのプロデューサーをやって欲しい」というお話をいただいたので、それなら「人の魅力を引き出す力」を活かせる大きなチャンスなんじゃないかと思えるようになりました。
— 背中を押された決定打は何かありましたか?
母から言われた言葉が大きく影響しました。悩んでいた私に、母が「怖いところに飛び込むのは、ステージアップするってことだよ」と言ってくれたんです。最近の自分を振り返ると得意なことや慣れている環境の中でしか動いていなかった。楽しいけど、震えるような怖さを感じることがなくなっていたんです。だから「怖いことは悪いことじゃない」と思えて、飛び込む決意が固まりました。私はこれまでも、何かある時は両親に相談をしてきました。今回も両親に沢山話を聞いてもらい、決断することができました。
◼︎寄り添うことで見えてきたプロデューサーの適性
— このプロジェクトを通じて、ご自身の中で変化はありましたか?
「プロデューサーに向いてるかも」と、日に日に手応えを感じるようになりました。メンバーとのコミュニケーションもそうですが、クリエイティブ面も合格発表時のアー写のコンセプトやポージングプロデュースなど、全部チェックをさせてもらっています。細かい確認作業も、こだわりたいから全部目を通してきました。むしろ「全部私に見せてください!」って自分から言っちゃうほど、こだわりが強いかもしれません(笑)。
— 参加者ひとり一人への接し方も、とても丁寧に感じましたが意識していたことはありますか?
プロデューサーや審査員という高い立場から見るのではなく、私もオーディションを受ける側の気持ちが痛いほど分かるから、常に参加者と同じ目線でいたいと思っていました。LINEで悩み相談に乗ったり、ダンスの動画が送られてきたら真剣にフィードバックを返したり。私自身、RIE HATAさんのオーディションを受けさせていただいた時に、RIEさんが参加メンバーをリラックスさせてくれて、同じ目線に立ってくださったんです。その影響も大きいかもしれません。
今回のオーディションに参加してくれた子から「こんなに寄り添ってくれるプロデューサーはいないです」という言葉をかけてもらったのですが、それが本当に嬉しかったです。不安を打ち明けてくれる子には「怖いと思うことに飛び込んでいる今、あなたはステージアップしてるんだよ」って、私が母からもらった言葉をそのまま伝えたりしました。実際、私はその言葉に勇気づけられたから、絶対力になると思ったんですよね。気づけば「私がみんなのお母さんの気持ちになっている」と思えるほど(笑)。それくらい、このオーディションを通じて参加メンバーの子たちとの関係性も深くなったように思います。
◼︎両国国技館に光る涙|20人で走り抜けた記憶
— 最終審査である両国国技館のステージが始まる直前、KANUさんが胸を押さえている姿が印象的でした。あの時は、どんな想いだったのでしょうか。
実は本番前から、全員で泣いていたんです。落ちてしまった子たちが応援に来てくれて「不安になったら私たちのことを見てね」なんて声をかけてくれているのを見て、もう涙が止まらなくて。プロデューサーとしては泣いちゃいけないって分かってるんですけど、これまでの10ヶ月、みんながどれだけ人生をかけて努力してきたかを知っているから、見守る親のような心境でした。審査は一旦置いといて「とにかく、この舞台で全員かましてこい!」っていう気持ちでした。
— 結果として4名が通過することができなかったと思いますが、身を削る決断だったのではないでしょうか?
本当に苦しかったです。別室で待っている合格できなかったメンバーのところへ行った時、みんなが私の存在に気づかないくらい泣き崩れていて。毎回、この時間は私にとってもすごく辛い時間なのですが、最終オーディション後はやっぱり一番辛かったです。スキルが高い子も、魅力的な子も沢山いましたが、マネージメントチームとも何度も話し合い、結果を決めました。
— 合格したメンバーに対しても、また特別な感情があったのではないでしょうか?
合格したメンバーの名前を呼んだ瞬間に、涙があふれる子ばかりで(泣)。そんなに、このオーディションにかけてくれていたんだなと改めて実感しました。きっと、色々な感情が入り混じっていたんだと思います。やっと「このチームのメンバーだよ」って伝えてあげることができたので、私もとっても嬉しかったですし何物にも代えがたい喜びがありました。これから同じチームとして「運命共同体」として歩んでいく覚悟が、あの瞬間に固まった気がします。
— 332名もの応募があった今回のプロジェクト。今、全ての参加者に伝えたいことはありますか?
まず、数ある選択肢の中から『NAIL the NAME』を選び、人生をかけて挑戦しようと思ってくれたこと自体に、心から感謝しています。オーディションを受けるのって、本当に勇気がいることだと思うんです。自分を信じて一歩踏み出してくれた、その勇気に対して「ありがとう」と伝えたいです。学校や仕事がある中で、このプロジェクトのために必死に時間を割き、真剣に向き合ってくれたことへの感謝が大きいです。合格できなかった子たちにも、それぞれの「色」や「輝き」が必ずあります。結果に関わらず、みんなが私に最高の刺激と情熱をくれたことは変わらないし、自分自身のフィールドでこれからもキラキラと輝いて欲しいなと願っています。
◼︎KANUを動かす静かな炎
— メンバーに寄り添う姿が印象的なKANUさんですが、ご自身も苦労をしてきたタイプなのでしょうか?
苦労はあったかもしれませんが、私自身がそれをあまり苦労と感じないタイプかもしれません。ダンスを4歳から始めたのですが、それから今に至るまで自分では「特別にすごいことをしてきた」という感覚はありません。ずっと楽しいから続けてこれたんだと思っています。いわゆる苦労とか、ストイックに努力しているともあまり思わないので、周りから「頑張ってるね」と言われても「え、そうかな?」って本気で思ってしまうタイプです。ただ、ひとつあるとしたら、自分に満足したことがありません。だからこそ、日常の中で「いいな」と思ったものを自然と吸収して、試してきたのかもしれません。ダンスのスキルはもちろん、海外の映画や日常の中にある表現からもヒントをもらって、気が付いたらそれらが自分の中に積み重なっていた、そんな感覚です。
— このオーディションにおいて、KANUさんを突き動かした一番の原動力は何ですか?
確実に「参加メンバー」の存在です。みんなが本当に人生をかけて挑んでいる姿を見ていたら、私もそれ以上に人生をかけてこのプロジェクトに向き合わなきゃいけないと強く思わされました。彼女たちが短期間でどんどん成長して新しい姿を見せてくれるのが、私にとって何よりの刺激であり、負けてられないというエネルギーになりました。
あともうひとつ、陰で支えてくれた運営チームの存在も大きな原動力となりました。運営チームが私を信じてくれたことも大きな力になり、初めてのことばかりで不安な私に「KANUならいける」と常に背中を押してくれました。私の一言を大切にしてくれましたし、こだわりを尊重してくれました。参加してくれたメンバーのみんなとスタッフ、その両方の信頼に応えたいという想いが、私を最後まで突き動かしてくれました。
このプロジェクトを引き受けて、後悔は一切ありません。 もちろん辛いこともプレッシャーに感じることも沢山あるのですが、参加者のみんなが真剣に向き合い、目に見えて成長していく姿を見せてくれたので「やめたい」と思ったことも一度もなかったです。 むしろ、最終日には全員で泣けるほど素晴らしい空間を共有できて、オファーをいただいた時「できない」と断らなくて本当に良かったと思っています。
◼︎挑戦する「理由」
— D.LEAGUE参戦に向けてKANUさんの今の「覚悟」を教えてください。
私がこのプロジェクトのお話をいただいた時は不安の方が勝っていましたが、今は違います。メンバーが決まっていく過程でその不安は徐々に解消されました。今は「このみんなとなら、どこまでもいける」という確信に変わっているし、私が不安になっていたら、みんなも不安になる。だから私は常に自信を持って「私の存在自体で引っ張る」ようにあり続けたいです。そして、私自身がトレンドメーカーであり、みんなのロールモデルでありたいと思っています。16人の人生を背負っている責任を胸に、自分のクリエイティブのすべてをこのチームに注ぎ込む覚悟ができました。不安な気持ちももちろんありますが、今はそれよりももっと未来に向けた「やってやる」という強い気持ちが勝っています。
— 最後に、KANUさんにとって「挑戦する」とは、どういう意味を持ちますか?
私は幼少期から周りの友達に比べて少し違う感覚を持っていたかもしれません。今では普通かもしれませんが、ランドセルを選ぶ時は周りの子に多かった赤とかピンクじゃなくて水色を選ぶような子でした。人とは違う選択をしたくなる性分なんだと思います。それと、人生一度きりなら、誰よりもビッグになりたいとも思っています。ただ、私にとっての「ビッグ」に特定のロールモデルはいないんです。誰もいない場所、誰もやっていないことに挑戦し続けて“唯一無二”の人物像をダンスを通じて叶えていきたいと思っています。
私はあえてゴールを決めたくありません。例えば何か夢や目標を決めてしまうと、それが限界になってしまうような気がして…。すべてを通過点だと思って、限界を決めずにどこまで行けるか。都度自分と向き合い反省をしながら、目の前の物事に恐れずチャレンジしていきたいです。そしてどんどん吸収をしていけば、きっと「自分でも想像のつかないなりたい自分」になれる日が来ると思うんです。その為に、これからも怖い場所に飛び込み続けようと思っています。
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