日本ヒップホップ第一世代 HORIE “Harucalloway” HARUKI【Dewspeak vol.09】

BE BOP、UK JAZZ DANCEについて


TAKUYA
僕が覚えてるのは、まあ早い時期にMEGAMIXでもBrothers in Jazz(ブラザーズインジャズ)ぽいスタイルは
やってたと思うのですが、90年代中期にSCSになってChick Corea(チック・コリアでやってたじゃないですか?エレクトリックシティ。
あれ?少し違うビバップだなと。今思えばあれはIDJで。あの映像は持ってたんですか?

HORIE
あれはYUKIが坂見誠二さん(BE BOP CREW)ルートから仕入れてきたやつだね。

TAKUYA
なるほどー。
あれは僕はYouTube元年が来てからからしか見たことがなくて。

HORIE
だからランニングマンよりちょっと前にイギリスのIDJ達はある程度近いことを先取りしてやってたってことになるか、相当センスのいいチームだったとは思うんだよね。
イギリスの奴らロンドンのダンサー達はね。

TAKUYA
HORIEさんたちは90年代初期にIDJの情報を掴んでたんですか?

HORIE
いや掴んでなかった。
96年だったかな?Brothers in Jazzがハーバーシアターに来日して日本で公演打ったときに共演してて、Brothers in Jazzの三人組が日本に3ヶ月くらい住んでた。
そん時にもういろいろ喋って、彼らもビデオを持ってきてくれてて、夜な夜なダンス論議みたいなのをとしているときに「Sound Cream SteppersはIDJを見ろ」って言われたんだ。

TAKUYA
わざわざ、言ってくれるんですね。

HORIE
Brothers in Jazzの人達はちょっとバレエとかも入るから、

TAKUYA
ストリートだけって言うよりはそうですよね。

HORIE
「お前らは見た感じストリートボーイだからIDJを勉強したらいい」って言われるのよ。
何の事を言ってるか最初わかんなくて。「DJをやれって言ってんのかな」とかって思ったりして。
なんだろうなんだろうって思ってたら「これビデオ見せてやるから、これこれ」って。
あーこれChick CoreaのPVの人達だって。

TAKUYA
そこでもう解ったんですか?
それは凄いです。

HORIE
チック・コリアの人達は、誠二さんからは、JAZZ DEFEKTORSだったっていう風に聞いてた。
当時情報も少なかったので、The New York City Breakers(ニューヨークシティブレイカーズ)とROCK STEADY CREW間違えてましたみたいな感じだったんだと思う。

TAKUYA
しかもIDJよりJAZZ DEFEKTORSの方が登場がちょっと前ですよね。

HORIE
まあ向こうの人に言わせると一緒らしいんだけど。

TAKUYA
一緒なんですか?

HORIE
一緒くらいらしい。
ちょっと名前間違えたりとかして入ってきたんで、混乱してたんだよね。
あ、この人達の事をIDJっていうのかって、そこで知ったんだ。そこから3、4年して後輩のSTAXGROOVEがロンドンにIDJに会いに行って色々また解るんだけど。
けどSTAXより先にIDJは少しかじってんだよね。Brothers in Jazzに言われて勉強しだして。

TAKUYA
JAZZ DEFEKTORSは掘ってはないですか?

HORIE
JAZZ DEFEKTORSもその後に掘り出した。

TAKUYA
僕JAZZ DEFEKTORSは名前ぐらいであんまり詳しくないです。

HORIE
俺も一人一人のメンバーまでは解らないんだけど、すごい味を持ってるんだよね。

TAKUYA
レコードとか出してましたよね。

HORIE
そうそう。
ダンサーと言うよりはアーティストとして日本来てライブしに来たりもしてるから。

TAKUYA
バンドですもんね。

HORIE
そう、80年代のね、

TAKUYA
日本にも来てるんですね。

HORIE
JAZZ DEFEKTORSは当時のウォーターフロントのクラブとかでライブをやりに来たりしてるんだよね。
そういうのもちょっと掘っていって、シルエットとかもかっこいいんで、すごい影響受けてるよ。
IDJほど激しくやんないしBrothers in Jazzほどアクロバットでも無いし、ちょっと抑えが効いてるんだよね、JAZZ DEFEKTORSは。
だから年々JAZZ DEFEKTORSがいい合言葉的になってきてるのよ。
暴れてぶん回すぜっていう歳でも無くなってくるからさ、こっちもね。

TAKUYA
あ、映画『ビギナーズ(Absolute Beginners)』に出てるのもJAZZ DEFEKTORSでしたっけ?

HORIE
そう、ビギナーズの中のシャーデーが歌うシーンでダンスを踊ってるのが、JAZZ DEFEKTORSだね。

TAKUYA
JAZZ DEFEKTORSはロンドンじゃないんでしたっけ?
 
HORIE
ロンドンのビバップヒストリーはヒストリーで、ロンドンのだけじゃなくて、各地で動きが起こったって言われてるからね。
どっかの街だと思う。ロンドンはIDJの縄張りなんだよ。

TAKUYA
けどアメリカの音楽で踊るんですよね。

HORIE
ジャズだからね。
ヒップホップも入ってきたって言ってたよ。
後々IDJのリーダーのジェリー(jerry)が2000〜2005年とかに何回か来てくれたから、その時には俺もかなりを勉強して。

TAKUYA
多分HORIEさんもいらしたと思うんですけど、僕もレッスン行ったことあります。

HORIE
いろいろ彼に聞いて、そしたらロンドンでいっぱい起こって、ヒップホップも同時に入ってきたよって言ってたよ。
だから、エレクトリックボールルームってのがロンドンに当時あって、

TAKUYA
ポールマーフィー(Paul Murphy)でしたっけ、DJ?

HORIE
1階のフロアはブレイクダンス、アフリカ・バンバータ(Afrika Bambaata)なんかを流して、2階のフロアはジャズミュージックでビバップダンサーが踊ってる、そんな時代があったみたい。
だからSound Cream Steppersみたいにヒップホップ、オールドスクール、ビバップやってても全然いいんだよ、ありだよみたいなので、元気づけられたりとかして。
お前ららしくやっていけと言ってくれていた。

TAKUYA
あのジャズで踊るUKのダンスのムーブメント改めて凄いですよね。
一ジャンルとして確立したアシッドジャズもそういうムーヴメントから生まれたみたいな話もありますよね。
それをHORIEさんたちはキャッチして日本で深めてったみたいな感じなんですかね。

HORIE
そうだね。だからやっぱりスーツ着たりとかハットかぶったりとか、音がジャズだったりとかってのはもう・・・ハウスとかも相当影響受けたけど、同じくらいジャズも俺にとってはたまらなかったね。仮面ライダーになるみたいな気持ちになるっていうかさ。
あそこまでピシッと着るとさ、完全変身できて、自分じゃなくなれるみたいなさ、コスプレ感なのかな。

TAKUYA
ズートスーツも日本には売ってなかったですよね?あれもわざわざ作られたって話しですもんね。

HORIE
99年のZEALスタジオのイベントではじめて作ったかな。
ZEALの立ち上げが99年で、立ち上げの公演打つのに「THE ORCHESTRA OF JIVE」というのでYOSHIBOWさん(BE BOP CREW)を呼んだんだ。

TAKUYA
あれはそうなんですね。

HORIE
そうそう。
まあ立ち上げだけに予算があったからYOSHIBOWさん、SUSUMUくん(BE BOP CREW)も呼べた。
で衣装も作っていいよって、予算が出るよって。

TAKUYA
あそこからなんですか、ズートスーツは。

HORIE
そうそう。
日本のダンサーが着出したのはあそこからだと思うけどね。

幻の映像「15歳」

TAKUYA
これかなりマニアックな話なんですが『15歳』でしたっけ?テレビの映像。
これ見ている人誰も解からないくらい突っ込んだ話かもですが・・・あれはたまたま見つけたんでしたっけ?

HORIE
おおっ!『15歳』。
あれはGOTOさんがNHKのBSを見てて「驚いて録っちゃったよ」とかっていって見つけたんだよね。

TAKUYA
よく録りましたね。

HORIE
よく録ったよね。でも新聞欄みてビクッときたんだと思うんだ。
ある一人の映像ディレクターが世界を回って、世界中のおもろい15歳を取材するって番組なんだよ。
その日は、南アフリカのプリンスくんっていう黒人の少年ダンサーに密着する話だったわけ。
それをGOTOさんが撮って皆で見てみたら衝撃だった。

TAKUYA
僕ら世代のステッパーのある種『ALIVE TV』みたいな衝撃はありました。

HORIE
それ見たことあるの?

TAKUYA
持ってました。

HORIE
マジで?回ってきたんだね。

TAKUYA
多分ダビングされて回ってきました。
それはSound Cream Steppersさんからだって話は聞いてました。

HORIE
元はGOTOさんだからね。
でもさ、今はパンツーラって名前でちゃんと残ってるんだよね、あのスタイル。

TAKUYA
そうですね、一つのスタイルになってますもんね。あの当時始めてみた時は衝撃でしたね。
でSound Cream Steppersは当時にあれを取り入れてもうショーやってましたよね。

HORIE
そうそう、正にあれを入れようって。

TAKUYA
めちゃくちゃカッコよくて、ハウスじゃない踏み方のステップで、しかし強烈にアフリカンを感じるみたいな。

HORIE
ちょっとした変化球と言うか、やりたかったんだよね。
あの映像、凄かったね。
あの子らが家にいるシーンとかがあって、お母さんとか家にいる時にラジオから、メアリージェーブライジ(MARY J. BLIGE)とかが流れてんのよ。
つまりアメリカの音楽も結構聴いてるのよ。ヒップホップも30%位は入ってるんだろうね。

TAKUYA
入ってますよね。
あの曲も僕あとで掘ったんですよ。そしたら出てきて。
しかも意外とヒット曲なんですよね。多分アメリカだと思います。

HORIE
あの子ら、レコード屋の前で踊るやつね。あの曲突き止めたの?凄いね!

現代のシーンについて


TAKUYA
現代のダンスシーンはざっくりいうとどう見えますか?
80年代、90年代、2000年代、2010年代、で、何と2020年代に差し掛かろうとしてるじゃないですか。その時代から今尚踊り続けられているHORIEさんにはどう映っているんでしょう?

HORIE
凄い時代だよね。

TAKUYA
昔HORIEさんが、何年代は男の時代、何年代は女の時代、でそのあとはキッズの時代みたいなことを言っていたことがあるんですよね。

HORIE
そうだね。
80年代はとにかく男の時代。
90年代は女の子の時代。
2000年代、2010年代になって女の子から子供に移ってきてっていう時代がきたんだよね。
まあけど2010に入って男たちが救われてないかって言ったらそうじゃないんだよ。
一度救われた人は救われ続けてるから。

TAKUYA
主役はずれるだけで。

HORIE
そうそう、今のメインはキッズダンサーですよって言うかもしれないけど、大人の男たちだって全然救われてるし。
全員救われてるんだけど、まあそういう意味で言ったらこれから救うのは老人だろうね。
シニアヒップホップ。
それはボーイズがきて、ガールズきて、キッズがきたら、それはシニアがくるしかもう無いじゃん。

TAKUYA
それは続けてる人がって意味ですか、今から始めるってことですか?

HORIE
60歳くらいの人が始める、そういう人達をヒップホップダンスが今度救っていうような気はするけどね。
事実そういう動きもちょっとあるしね。
でもそういう人たちがメインストリームに出てステージでバンバン、ショーをやれるかって言ったらそうでは無いと思うけど、もっと国民的なものとしてヒップホップが取り入れられるかもしれない。
俺自身ある種の、解かる人じゃないと解らないっていう閉鎖的なダンスシーンは昔からそんなに実は好きじゃないんだよね。

TAKUYA
なるほど。

HORIE
例えば、床屋さんの刈り上げコンテスト見たいのがあるわけよね、刈り上げをどんだけ綺麗に刈れるかみたいなことを選手権やったりしてるわけですよ。
そりゃ一般の人は見れないよ。

TAKUYA
けどそれって相反する意見に聞こえると言うか、HORIEさんはある種一番解りづらい音楽や踊りを選択しているようにも見えますが・・。

HORIE
確かに。おかしいね。

TAKUYA
JAZZな音楽やら内股から鍵足とか一番解りづらいニュアンスっていうところをやっていて、その観点で言うとちょっと反比例する気もするんですけどね。

HORIE
だけど踊ってる時の姿勢とか、踊ってる時のエネルギー自体は、すごく開けてるんだよ。
もう全然ダンス解らない人に訴えかけてるんだよ実は。
マニアックな1mm、2mmみたいなことやっときながら、打ち出し方は意外と励ましたいって気持ちでやってるんだよ。

TAKUYA
確かにそうですね、それはそうかもしれない。
そういうアティテュードの問題ってことですね。

HORIE
そうアティテュ―ド。けどそれが同業者同士の競い合いの意味が強すぎると、実はそんなに好きではないのかもしれない俺は。

TAKUYA
今シーンのメインの一つとも言えるバトルやコンテストもある意味そう見えるって事ですか?

HORIE
うん。
嫌な言い方なんだけど、ダンサー同士がガツーンとぶつかって、でダンス知ってるやつは、今の50cmが、みたいなこと言ってる。
だけどそこの横にいるダンスの事全く知らない女の子が何の感動もないっていうのに負けちゃいけないような気して。
その何もダンスを知らない子が、「私ダンスの事知らないけど、なんかジュンときた」みたいのがないと駄目な気がする。

TAKUYA
ジュン(笑)。
そのジュンとくるってのが大事なんですね。

HORIE
まあ現在シーンにそのジュンとさせるダンサーがいないかってそういうこと言ってるわけじゃないんだよ。

TAKUYA
ただHORIEさん的にはもう老人も含めてみんな巻き込むような開けたものを求めていると。

HORIE
俺自身はそういうのが好き。好きというかそうしないと生きられないからね。
まだ同業者同士のガツーンだけで食っていけるだけの地位にはなってないじゃない?

TAKUYA
正直そうですね。

HORIE
なっちゃえば、本当に侍同士の戦い、侍は侍同士で生きていくんだ、ダンサーはダンサーとして生きていくんだみたいでいいんだろうけど。
しかしまだ直前の時代なんじゃないかな。
例えば、プロ野球選手はインタビュー受けてもプロ野球選手として出てくるもんね。
別に芸能人みたいな顔しないし、大げさにはサービスをしないでいいよね?
「今日は打てなかったですよ、まあ明日頑張ります」って言うだけじゃない。

TAKUYA
ではそういう時代が来るかもしれないって事ですか。

HORIE
それはまだまだこの先なのかなとは思うね。
ダンサーの立ち位置も今はまだ芸人みたいにしないといけないところが半分くらいはあるから。
だからより芸人みたいな事をやってるやつのほうが、ダンスの実力と関係ないところでクローズアップされたりとか、芸人の枠に入れられちゃうかもしれないよね。

TAKUYA
今はまだ境目的な時代。

HORIE
一つ前の時代にいる気がするね。

TAKUYA
なるほど。

HORIE
俺はどっちも行けるんだけど、たいてい普通のダンサーは芸人の方には行けないと思うよ。
例えばうちのYUKIとかは本当に職人。プロ野球選手とかプロゴルファーみたいな感じだよね。
でも本来YUKIなんかのダンスは美しいわけだから、それで十分表現してるわけで。

TAKUYA
そういうストリートダンス的美しいって恐らくグルーヴってものが深く関係してくると思うのですが、その黒いグルーヴみたいなものって一般の人や初心者に見えづらいじゃないですか?
ダンス自体はどんどん一般に広がっていい事なんですが、一方でどんどんそういった見え辛い部分が薄れて、それで幸か不幸かそういうのにいち早く反応出来たダンサーこそ生きづらい?というか。

HORIE
薄れてんだろうね。
けど黒人系って、実際20世紀のアメリカで生まれた黒人が生み出したものがダンスミュージックのダンスで多いのは事実で、20世紀が終わって21世紀になって、この様になってきてるけど、それは前の100年を振り返ったら、ブラック・パワーは影響受けない方がおかしいでしょう。
我々はそれを20世紀の終わりくらいに感じられた世代だから、やっぱり幸運だよね。
でそれを精一杯伝えていいと思うし、理屈を話すと一般の人だったりも解るんだよね。
例えば、実は黒人系から始まっていて、主なダンスはそれとかちょっと浅黒系、南米系プエルトリカンとかあっち系が強くて。
黒人がリズム感がいいとか、黒人が身体能力が高いとか、世界一速い人誰?黒人だみたいな上だからダンス上手いのは黒人ってイメージある?って聞くと皆、うん、って言うんだよね。
なので今確かにそういうのに興味ないダンスが増えた時代だけど、
時代はやっぱり繰り返すというかまたそっちメインになりそうな時代も来そうだよね。

TAKUYA
確かにそうですね。

HORIE
黒人のあの感じは、他の民族には出せないものを出したよね。
まあラテン系のプエルトリカンもちょっと外せないけど。

TAKUYA
BBOY的にも。
プエルトリカンって言うとハウスも多いですもんね。

HORIE
そうだよね。やっぱ浅黒だよね。
ああいう南国の南アメリカ系もあなどれないって言うし。
GOTOさんがね、キューバ、ジャマイカ、ブラジルとプエルトリコと回って来た時に、やっぱりそのダンス偏差値が高かったっていうね、それらの国の国民のね。「どういう意味?」って言ったら、「20代のね、バキバキ動くダンサーはそんなに尊敬されないんだよ」って。

TAKUYA
なるほど。

HORIE
60歳くらいの、ネトっとコクと味があるダンサーがめちゃめちゃ尊敬されてんだって。
そういうのは民度が高いって言うんだよ。
日本はまだ20代のバリバリ動くやつが尊敬されてるわけじゃん?
これはダンス偏差値が低い証拠ってGOTOさんが言うんだよね。

TAKUYA
なるほどー、面白いですね。 

HORIE
要するに見た目の、炭酸の量にごまかされてるだけみたいな。
俺も、GOTOさんもYUKIも技に走らなかったって意味では、炭酸には惑わされないぞみたいなところは若い頃から持ってたんで、やっぱりその味とかコクとかをもっと攻めていきたいよね。

TAKUYA
そう考えたら未来は楽しいですよね。
ずっと踊れますよね。
体力勝負じゃないですもんね。

HORIE
ないところにね、行けるはずだしね。
60歳になってショーとかできるんですかって、そりゃ20代のフォーマットに入れたらそれは無理だよ。
だけど、渋い茶とかの旨さ知ってるみたいな。
一番茶の、静岡の一番茶の濃いやつ飲んだことあるみたいなところにむかって走って行きたいよね。

TAKUYA
素晴らしいと思います。

HORIE
そうは言いつつも、ガンガン動く方だようちらは。
どこどこの大御所のダンサーとかね、体力ないくせに半分の体力で踊るから、見てられないよもう。

TAKUYA
いや、僕はそこは何とも同調できませんが・・・(苦笑)。
しかしながら確かにHORIEさんめっちゃまだ全然動きますよね。

HORIE
そう。
もう行ける限りは、全力をお見せしなけりゃ、とにかくショーとか、人様にお金を頂いて踊るんだったら、失礼だよ、全力で行かなきゃ。
そういうある種の男らしさみたいのはあるね。ごまかしたりしない。
ネローンとやったりとかね。「終わりかよ!汗かいてねーじゃん」みたいなのが大御所の人とか多いじゃん?
自由ですけど、俺はあんな風にはできないね。やっぱりガチしかできないね。
いつもガチがやっぱり一番誠実。
好きなアダルトビデオの女優が「やっぱりガチしかできないの」って言ったときは一番影響受けたね。

TAKUYA
(笑)!
演技はできないと。

HORIE
もう持ってかれたね全部、あ、ガチだったんだーって。

TAKUYA
(笑)!

HORIE
まあアダルトビデオの女優ほど尊敬してるものはないですよ。
アダルトビデオの女優大尊敬。
どんだけお世話になったか、今もお世話になり中ですけどね。
本当最高リスペクト、アダルトビデオの女優。
最上級のリスペクト。

TAKUYA
何の話ですか・・・?(笑)。

ダンサーという職業について

TAKUYA
以前お話させて頂いたときに現代はダンスとは別の仕事した方がいいよっておっしゃてましたよね。
普通に働いたほうがいいよみたいな。

HORIE
ダンスとの付き合い方なんだけど、食っていきたいとか、プロ志向になればなるほど、どうしてもそれ用のダンスにせざるを得ないじゃない。
それを良しとするくらいの人だったらいいんだけど、やっぱりダンスと付き合うにはアマチュアが一番付き合いやすいんじゃないのかなって思うんだ。
だって好きな踊りだけ踊ればいいんだから。
これほど楽しい事はないでしょう。
そういう意味で、仕事はちゃんと別で正業を持ってダンスは自分を慰めるものや、周りを幸せにするものとしての機能は充分ある。

TAKUYA
それはHORIEさんは、ダンス一本で来た上で思うことですか?
凄いですねその意見は。

HORIE
だから悲しい男なわけよ、そう考えるとね。

TAKUYA
その世代ですもんね。
世代というかそうなってしまったって言ったら失礼ですけど。

HORIE
プロって悲しいじゃんどこか。嫌って言えないわけだから。
でもアマチュアだったら嫌って言っていいんだから、嫌なことはやんなくていいんだから。
そういう風にダンスと付き合ったほうが付き合いやすいのは確かなんじゃないのかなって。

TAKUYA
昔のインタビューでHORIEさんが、ダンスはある意味では逃げ場所なんだみたいな、書いてて。
そんなに優等生にならなくていいっていうか、頑張らなくていいみたいな、せっかく逃げ場所なのに今のシーン苦しいよねみたいことですかね。

HORIE
覚えてるよ。
そう、今でも感じるよ。

TAKUYA
真っ当に生きなければいけない現実社会から外れている自由に尖ったことを表現していい場所だったものが今は良くも悪くも一般化されてそれ自体が評価を得られる時代にもなった。
嬉しいことなんですが・・。
しかし同時に人からの評価がかなり大きな価値を持つようになってきている時代なので、逃げ場所というか尖ったことを表現する場所としては機能し辛くなってるかもですね。
ダンスしてる子はコンテストやバトル出て結果!みたいな時代ですからね。

HORIE
例えば何かのコンテストやバトルで入賞できなかった人が泣いたとします。
でも俺の中では、ダンスで泣くってないけどなーって思っちゃう。
普通に考えて、賞取れなかったから悔しくて泣いてるんだよね?
でもその賞に何か大事なものを預けちゃってない?みたいな。

TAKUYA
わかります、言ってること。

HORIE
何か大事な物を、精神的なものを全て預けるからこそ、泣けるわけで。
でもその賞を作ったのは所詮同じ人間なわけだし。

TAKUYA
そこに真実があるかないか怪しいよってことですね。

HORIE
そうそうそう、そんなものに何泣いてるんだみたいな、何を左右されてんだみたいな、心底左右されちゃ駄目だろうとは思うよね。
自分自身がかっこいいところをレペゼンできたらそれでオッケーにしないとね。
だって100人いたら100人イエスなんてないでしょ世の中。おまえら駄目だとかって言われても、次の人に会ったら良かったよーとかって言われるわけだから、良かったよって言われた事が事実なら、泣くまではないだろうし、泣くのとかはちょっと俺には理解が出来ないんだ。

TAKUYA
解ります。正直僕も何でそんなに一喜一憂するんだろうとは思いますよね。
むしろ負けたら「俺の事理解できてねえな」くらいなはずですよね。本来は。
けどいい子なんでしょうね今の若い子達。

HORIE
かもね。

TAKUYA
純粋で素直なのでそこに左右もされるし、で同時にそこで有名にもなりたいしとかも含みで、
だから悔しかったり。

HORIE
そこにダンスドリームもあるし、いわば高校野球のような。

TAKUYA
そこで勝っていく事こそがステータスと言うか、昔から勿論それはあるんですけど。
けど今ほどでもないですもんね、むしろ結果よりかっこいいと思っている事をやってる事こそがステータスというか。そういう人の方が目立ってもいたというか。

HORIE
だからその時代の差もあるんだねきっとね。自分たちでやりたいことをやりたいようにやっていいのが本来のストリートダンスの世界でね。
何かに合わせたりすることじゃないからね。

TAKUYA
でそのままで表舞台にも出てこれたら一番いいですよね。
まあ出てくるみたいな事もそもそもいい事かもはや解らないですけどね。
別に目立たなくてもいいですもんね。
かっこいいや美しいと思える事やってればそれでいいはずですもんね。

HORIE
無責任なこと言うとね。

TAKUYA
はい。仕事論度外視でいうと。
まあけどみんな出てきたいんですもんね、やってる以上は目立ちたいんですよね。
でそれを職業にもしたいし。なのでその手段が今そうなってるんでしょうね。用意された場で競い合って。
まあけどやはり人が決めるから委ねられないですけどね僕とかは。

HORIE
だよね、どこかに怪しさはつきまとう。
でもどの時代もきっと言えるんだろうけど、かっこいいやつとかセンスのいいヤツはダンス人口自体が増えようが狭まろうが少数なんだよ。少数派。
ブレイクダンス大ブームの時も大抵は大勘違い野郎だよ。かっこいいやつはいつの時代も一握りなんだよ。

TAKUYA
少数という事は理解されづらいじゃないですか?
て事はお金になりづらい、となるとやはりそういう人は職業としては成立し辛い。

HORIE
常にかっこいいセンスのいいダンサーたちはそこを嘆いている、いつの時代も。
「俺達はかっこいい事やってるのによー、アピール力がないから貧乏なんだようちら」っていつの時代もそう言ってる。
もうそれは受け入れるしかない。
いつの時代も、センスの有るやつは常にそういう事を言ってた。
で、そういう奴らってかっこいいけど仕事は無いの。
それがかっこいいやつの定めなの。

TAKUYA
何か切ないですね・・。
改めてかっこいいの定義はなんなんですかね?
僕はHORIEさんの言っているような人達なんとなく解りますけど、見てる人に敢えて言うなら共通点はどこですか?
どの時代もかっこいい人達のセンス、そこらへんが伝わりづらいじゃないですか。
別に正解とかは勿論ないので一言じゃ言えないとは思いますが、総合的にセンス、ファッション・・・とか?

HORIE
ファッション、選曲、振り付け、リズムのとり方、立ち振舞、醸し出す雰囲気。

TAKUYA
言葉でいうと簡単そうにも聞こえますが・・・結局結構見えないところですよね。

HORIE
だね、数値化しにくいところだよね。

TAKUYA
そういう人に限って今の時代で言うとバトルとか途中で負けるタイプ・・というかむしろ出ないんでしょうか。

HORIE
そうだね、そっちになっちゃうんだよね。
大人の手が入ってない感。

TAKUYA
大人の手が入ってない感!
ある意味で社会適応型じゃないってことですか?こう言うと勘違いされそうですが・・。

HORIE
けど俺がセンスいいと思うのはそういうところになっちゃうんだけどね。
これは少し俺独特の感覚かもしれないけどね。オールドスクールの感覚だから。
無難なところで言うと、全員同じ服着てるとか、没個性の作品なんだろうけども、何が面白いんだろうとは思うよね。
そういうのは俺から言わすとセンスねーなっていうことになるのかもね。
養殖じゃない天然物だわみんな出してるわ、うわー、やりたいようにやってるわ、それでいて魅力的、かっこいいってとこだろうね。
そういう部分が心惹かれちゃうっていう部分かもしれないね。

TAKUYA
個々が成り立つ。

HORIE
本来、そんなユニゾンとか、アンサンブルとか崇高な芸術を知らないんだよストリートダンサーは。
もう個々のせめぎあいだから、それはやっぱり長い時代の中でアンサンブルとかユニゾンって言葉を覚えたんだろうね。

TAKUYA
そういう意味ではビジネスとアートとは盛り上がってくれば盛り上がってくるほど絡み合うというかせめぎ合いますね。

HORIE
そういう風に見えるかもね。 
だからストリートダンスは本来の意味で言うとローカルにやっていいんじゃない。
こんな時代だから、SNSでなんでも発信できるんだからね。
結構居るよね、昔踊ってた心が今も忘れられずに、たまに仕事帰りに公園でワンムーブやっちゃいましたとかって人は、今の時代に結構いるよね。
そういう人がそれで自信を持っていいと思うもの、ストリートダンスってそういうものなんじゃないかな。
でとにかく、まず自分を救わないと。他人を救うのはその先。

TAKUYA
まずはダンスで精神的に幸せになろうと。
今日は改めて貴重な話沢山聞かせて頂けて光栄です。
僕も頑張ってダンスで幸せになります!
貴重なダンスビデオからアダルトビデオな話まで本当に有難うございました!

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TAKUYA (SYMBOL-ISM / worcle co.,ltd)

90年代初頭ストリートダンスに触れ、様々なジャンルを模索、横断する。 その後ダンスチームSYMBOL-ISMを結成。ハウスを基盤にしつつも様々なスタイル、音楽性を 反映させた独自のスタイルを形成し、DANCE DELIGHT、DANCE@LIVE、JUSTE DEBOUTをはじめとする 様々なコンテストにて優勝、入賞多数、その他様々なステージを通し強烈なインパクトを残す。 そのスタイルは彼の拠点東京・代々木に因んで「代々木系」とも呼ばれる現象を起こし、 ダンスのスタイルのみならず音楽、ファッション、ライフスタイル、様々な切り口からあらゆるヘッズに影響を与えている。 またダンスプレイヤーと並行し2004年に起業。レンタルスタジオの先駆けとなったstudio worcleをはじめイベントスペースANCE、その他音楽バーshirokumaやレコードレーベルyygrec、セレクトショップCONTE-NU、等、これまでに無かったダンスやカルチャーに直結するコンセプチュアルなスペースやビジネスアイディアを数々生み出しダンサーのライフスタイルを変革させ続けているキーパーソンとしてもシーンに大きな影響力を持つ。

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