バレエ『エスメラルダ』を解説!美しく心震える舞台とは?

バレエの「エスメラルダ」の物語や有名なヴァリエーションがどのようにしてできたかをご紹介します。「エスメラルダ」について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

バレエ『エスメラルダ』とは?

『エスメラルダ』は物語が複雑であり、捉え方や振付、音楽にも諸説があるため、説明するのが難しいです。
バレエコンクールや、発表会などで、タンバリンを叩くエスメラルダのヴァリエーションを見たことがある!という方は多いかと思いますが、「エスメラルダ」全幕を見たことのある人や、エスメラルダがどんな物語なのかを正確に把握している人の数はあまり多くありません。

タンバリンを爪先で弾く下の動画のヴァリエーションは、全幕「エスメラルダ」に着想を得て、コンクールの為に特別に作られたものです。

バレエ『エスメラルダ』のあらすじ

プロローグ

寺院の前にある、幼いイエスを連れたマリア像の前で、赤ちゃんを抱いた女性が行き倒れてしまう。近くを通ったジプシーたちは、その女性が死んでいると思い、赤ちゃんを連れて行ってしまう。しかし女性は、赤ちゃんがジプシーたちとともに遠くへと行ってしまってから息を吹き返し、いなくなった我が子を探して半狂乱となる。

第1幕

赤ちゃんがジプシーたちと行ってしまってから16年後、エスメラルダと名付けられた赤ちゃんは美しい女性へと成長を遂げている。正義感もある彼女は、ノートルダム寺院の広場に迷い込んで殺されそうになっていた詩人・グランゴールを助けた。その時、エスメラルダを見ていた聖職者のフロロは、エスメラルダの美しさに魅了されてしまう。もちろん助けられたグランゴールもエスメラルダに夢中。ノートルダム寺院の鐘つき役であるカジモドは、エスメラルダに優しくされて、エスメラルダを好きになってしまっている。しかし、エスメラルダは、自分を助けてくれたフェビュスと恋におちていた。フロロは、当時権力を握っている寺院の聖職者であることを利用し、あの手この手でエスメラルダに迫るが拒否される。グランゴールもエスメラルダに拒絶され彼女のもとを去るが、フロロはエスメラルダを諦められず、彼女の恋のお相手フェビュスへの憎悪を募らせた。

第2幕

フェビュスと婚約者フルールの婚約の宴が催されている。フェビュスに婚約者がいたこと、自分がジプシーという身分であることなどを嘆くエスメラルダだが、自分の恋人の婚約の宴の余興に、ジプシーとして招かれてしまう。エスメラルダは、悲しみをこらえながらグランゴールとともに踊る。そんなエスメラルダに、婚約しているフェビュスはやはり惹きつけられてしまい、婚約の宴が終わってから、エスメラルダのもとへとやってくる。愛を確かめ合う2人。しかし、そこに、嫉妬に狂ったフロロが現れ、フェビュスを刺し殺してしまった。逃げ出すフロロの後に、フロロを止めようとしていたカジモドも現れるが、エスメラルダは、フェビュスを殺したとして捕まえられてしまった。

第3幕

無実の罪で処刑されようとしているエスメラルダに、フロロは、自分のものになるなら処刑を取りやめてやると告げる。拒絶するエスメラルダに、フロロは怒り狂い、彼女のもとを去る。一命をとりとめていたフェビュスも、エスメラルダが自分を殺そうとしたと信じており、エスメラルダのもとを婚約者とともに訪れ、彼女に背を向ける。なんとか彼女を助けようとするジプシーたちや、カジモドの頑張りも虚しく、処刑の日。エスメラルダのもとに、彼女を探し続けていた母が辿りつく。しかし、衰弱しきっていた母は、エスメラルダの現状を知りショックで息絶えてしまう。辛いことばかりが続き茫然としているエスメラルダは、さしたる抵抗もせずに、処刑されてしまった。怒り悲しむジプシーたちと、カジモド。怒りと悲しみに突き動かされたカジモドは、ノートルダム寺院の上からフロロを突落した。

補足

ブルノンヴィル版、プティパ版、ボヤルチコフ版と、様々なパターンのある「エスメラルダ」は、 「ああ無情」を書いたヴィクトル・ユゴーの「ノートルダム・ド・パリ」という小説が原作です。なるべく原作に近いあらすじをご紹介しましたが、詩人が登場しないものや、フェビュスが婚約を破棄してエスメラルダを選ぶというものもあります。

バレエ『エスメラルダ』の踊りの特徴

バレエ「エスメラルダ」の踊りの特徴は、もちろん主人公エスメラルダの妖艶でありながらも、どこかに哀しみを漂わせる動きにあります。ただ妖艶で華やかな美女ではなく、哀しみや悲劇の予兆を漂わせて踊ることができるかどうかは、エスメラルダを踊るダンサーの腕の見せ所ですね。

バレエ『エスメラルダ』の特徴がわかる動画

うなだれるエスメラルダこそが、エスメラルダという女性の本質です。華やかな友人たちとの踊りも素敵ですが、嘆きに身を任せる姿も魅力的ですね。

まとめ

重く、救いのない物語だからあまり上演されないという声もありますが、ドラマチックな演目なので、是非ナマの舞台を鑑賞したいですよね。2018年秋に法村友井バレエ団が上演した「エスメラルダ」は、とても美しく、心震える舞台でした。「エスメラルダ」がもっと様々なところで上演される演目となって欲しいですね。

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