神秘的で奇妙な世界観!暗黒舞踏とは?

三島由紀夫、澁澤龍彦、瀧口修造、加藤郁乎、埴谷雄高など名立たる作家を魅了した踊り「暗黒舞踏」についてご紹介します。

百聞は一見にしかずという言葉が最もよく当てはまるのは、暗黒舞踏かもしれません。まずは、ご覧になってみて下さい。

「千と千尋の神隠し」や「もののけ姫」に出てきそうな、神秘的で奇妙な動きに、思わず目を奪われてしまいますね。「奇妙」という一言で済ませてしまってもいいのかという迷いと、これはいったい何なのか?そして美しいのか?という疑問の洪水の中で密かに光る「もっと見たい」という思いはきっと、日本人固有の感性に働きかける何か。プリミティブで衝動的に心を揺さぶる力をもったこの表現に、ぜひ魅せられてみてください。

暗黒舞踏(あんこくぶとう)とは

外国で大人気?!

日本の舞踊家土方巽を中心に形成された前衛舞踊の様式で、前衛芸術の一つとされています。そもそも土方巽って?と思ってしまう方のために後程ご紹介しますが、彼によって生み出された「暗黒舞踏」は今や、日本よりも海外で絶大なる人気を誇っているんですよ!日本国外では単にButoh(ブトー)と呼ばれ、日本独自の伝統と前衛の混合形態を持つダンスのスタイルとして認知されていますが、定義があまりはっきりとしていないため、誤解や独自解釈をしたものも多いそうです。 なお、現在は、「暗黒舞踏」ではなく、たんに「舞踏」とだけ呼ぶのが一般的なのですが、「舞踏」には様々な流れがあるため舞踏がすべて「暗黒舞踏」なわけではありません。日本の舞踏家が海外フェスティバルに招聘されるだけでなく、多くの外国人舞踏家が増えている事実は注目に値しますね!西洋の文化が形成してきた舞踊と対極にあるため、磁石のN極とS極のように、惹きつけられるものがあるのでしょう。

海外のButho家も美しいですね。静止画がもはやアート。でも、暗黒舞踏は美しくあってはならないという考え方もあるのだそうです。

バレエの対局!?

西洋のバレエの対局の位置に存在するダンスが「暗黒舞踏」だという考え方もあります。確かに、「美しく優雅だなあ」と感じさせるバレエに対して、「暗黒舞踏」はやや、「不気味さ」を感じさせますよね。でもそこには、「暗黒舞踏」にしかない独特の考え方があるのです。バレエやコンテンポラリーダンスは、どちらかといえば気持ちを動きにのせて伝える芸術ですが、「暗黒舞踏」は違います。「暗黒舞踏」は「身体には身体の命がある」という考え方なのです。あなたの身体ではなく、身体はあなたから独立した別の何かなのです。また、この「暗黒舞踏」を生み出した土方巽は「舞踏とは命がけで突っ立つ死体」だとも述べています。分かるようで、分からないような…でも惹きつけられてしまう言葉ですね。頭で考えてはいけないのです。肉体が肉体のままに動くのが「暗黒舞踏」。
やや恐怖感を抱く方もいるかもしれませんね。
例えば白鳥を表現するために、クラシックバレエは大きく両腕をしならせます。

それを見た観客は「白鳥」という言葉の自分の頭の中にある意味を引っ張りだします。でもそれは頭脳的なメッセージであり、言語化されて認識されるメッセージなので、肉体そのものが純粋に発しているメッセージではなくなってしまうのです。

こちらは、海外で人気の高い山海塾という暗黒舞踏ダンサーの舞踏です。
言葉に出来ない、普通に考えて人間がすることのない動きをすることで、理性の秩序の中に組み込まれない肉体の言語を表している気がしますね。そして、言語を間に挟まないこの舞踏こそが、世の中の踊りの中でも最もピュアなものかもしれないと感じてしまいます。

どうしても、心惹かれてしまいますよね。

土方巽(ひじかた たつみ)とは

日本の舞踏家、振付家、演出家であり俳優でもあった土方は秋田県秋田市に11人兄弟の末っ子として生まれ、増村克子(江口隆哉門下)に師事し、ドイツの新舞踏「ノイエ・タンツ」を学びました。そして、その「ノイエ・タンツ」が土方の「暗黒舞踏」に多大な影響を与えたと言われています。

こちらが「ノイエ・タンツ」。確かになんだか「暗黒舞踏」に影響を与えていそうですね。その後大阪万国博覧会みどり館アストロラマ上映作品 「誕生」に出演したり、「陽物神譚」に賛助出演したりしていましたが、最終的には振り付けと演出に専念するようになりました。また、若き日の土方巽は前衛芸術集団「ネオ・ダダ」の中心人物・吉村益信の新宿百人町のアトリエ兼住居(新宿ホワイトハウス)に出入りしていたといわれ暗黒舞踏の成立にはその影響も見られると言われています。

コンテンポラリーダンスとの違い

暗黒舞踏の思想は、蟹股、短足といった日本人の身体性へのこだわり、神楽、能、歌舞伎などの伝統芸能や土着性への回帰、中心と周辺の視座による西欧近代の超克など様々な切り口で語られるため、簡便に語るのは困難です。ダンスの定義を拡大しダンスを単なる「動きの芸術」ではなく

「肉体の質感の提示」

としました。カウントによる振り付けは一切行わず、言葉とイマジネーションによって動きを引き出すという「舞踏譜」が存在するのですが、そのメソッドは「イマジネーションと身体を結びつける回路の開発」とでも呼ぶべきものであり、その核心部分の多くは、現在のコンテンポラリーダンスに引き継がれているといわれています。

まとめ

わからないからこそ心惹かれてしまう「暗黒舞踏」。気になった方は、インスタなどでもご覧になってみてくださいね。

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