Dorothée Gilbert

伝統のもとで輝き続けるパリオペラ座バレエを紹介!

「伝統」がどのように「今」の中で生きていくのか。そんな「歴史」の課題を解決する姿を見せてくれるのがパリオペラ座バレエ。変わりゆく不安定な情勢の中で、芸術がどんな力をもつのかを教えてくれるバレエ団だといえるでしょう。

実は今、様々な問題で揺れるパリオペラ座バレエ。

バレエに詳しくない方も、上のような映像を昨年末にご覧になられたのではないでしょうか。
このニュースこそが、パリオペラ座バレエの権威を物語っているのです。
こちらでは、このパリオペラ座バレエがどんなバレエ団なのかをしっかりご紹介いたします。

パリオペラ座バレエとは

まるでお城!ですが、このガルニエ級がパリオペラ座。パリオペラ座バレエのダンサーたちはこの中でレッスンやリハーサルをし、この中とオペラ・バスティーユで公演を行うのです。これだけでも、パリオペラ座バレエが特別だということがわかりますね。

建物の中の美しさも格別!バレエダンサーも含め、絵のようです。

美術館のようでうっとりしてしまいます。

天井の絵はなんとシャガール!

こんな建物の中でレッスンを行っているなんて信じがたいですが、実際にレッスンを行っています。

リハーサルを行うのは天井に一番近い部分。天井のアーチが素敵です。

こんなに特別な場所でバレエが行われるのは、このパリオペラ座バレエが世界最古のバレエ団だから。
絶対王政時代の国王ルイ14世によって1661年に設立された「王立舞踊アカデミー」を起源としていて、今年で創立359年の歴史を誇るのです。「バレエの歴史」に登場するダンサーや振付家、作曲家の多くがここで育っていきました。

パリオペラ座バレエの特徴

階級

このバレエ団の最大の特徴として、厳格な「階級制」があげられます。どのバレエ団も主役を踊る「プリンシパル」、ソロを踊る「ソリスト」などといった多少の階級はありますが、パリオペラ座バレエほど厳格ではありません。
オペラ座の階級は5つ。最上級の「エトワール(étoile)」から始まり「プルミエ・ダンスール(premier danseur)」「スジェ(sujet)」「コリフェ(coryphée)」「カドリーユ(quadrille)」と続くのです。スジェ以下の団員は、大勢で踊るコールドという部分を担い、年末が来るたびに昇級試験を受けるのです。

コールド(群舞)だって上の動画のように、コールドならではの美しさがありますが、ダンサーたちはやはり、「星」という意味を持つエトワールを目指すのです。エトワールは、150名程度いる団員の中で10~20名。そもそも入団することすら難しいパリオペラ座バレエの中の15名ですから、選ばれたものの中の選ばれたものになるのは至難の業。
でも、そこを目指して団員同士が切磋琢磨するからこそ、パリオペラ座バレエのレベルが高くあり続けるのだともいわれています。
また、優れたエトワールがパリオペラ座バレエに在籍してきたのは、パリ・オペラ座バレエ学校の存在に理由があるともいえるでしょう。こちらも1713年創立という歴史を誇るバレエ学校で、徹底した指導を行うとされています。

ダンサーたちの社会的地位

パリオペラ座バレエのダンサーたちはみな国家公務員として扱われ、42歳で定年が認められています。そして、その定年後は年金で生活していくことができるのです。特別に狭き門を潜り抜け、厳しい環境下で己を律し続けながら美しい芸術を提供してきたダンサーへの敬意が、フランスでは絶大なのです。
しかし昨年末に、フランスのマクロン大統領が定年の年齢を引き上げようとしたため、冒頭のような抗議行動が行われたのでした。

パリオペラ座バレエの麗しきエトワールたち

堅苦しい話はこれくらいにして、ここからはパリオペラ座バレエが誇る美しきエトワールたちをご紹介いたします。

Mathieu Ganio(マチュー・ガニオ)

17歳でオペラ座に入団したのち、異例の早さで昇進した実力者。端正なルックスを上回る美しい動きに日本にもファンが多くいます。20歳の若さでスジェからエトワールに大抜擢されました。

「美しい」の一言につきますね。音楽と表情がマッチし、「跳んだ」というより「浮かび上がった」かのようなジャンプと次の動きへと滑らかにつながる回転には息をのんでしまいます。腕の揺らぎは人間のものとは思えません。一人でも十分に魅せる力がありますね。

Dorothée Gilbert(ドロテ・ジルベール)

自宅でのレッスン風景がもうすでに美しく、筋肉の付き方に見惚れてしまいますね。手前の頭は彼女の娘さんです。

チャーミングな笑顔が印象的な彼女は、とても努力家。でも舞台ではそれを全く感じさせずに堂々と、そして繊細に踊り上げるのです。

動きが止まっても見ていられるのは、彼女に圧倒的なカリスマ性が備わっているから。ぐっと腕を伸ばすだけの姿をずっと見ていられるほどに、強くしなやかで美しいのです。

ガルニエ宮がこんなにも似合うのは、彼女だけかもしれません。

オニール八菜(プルミエール・ダンスーズ)

次のエトワール!との呼び声が高いオニール八菜さんは、バラエテ番組などでその姿をご覧になったことがある方もいらっしゃるでしょう。彼女は、前述のバレエ学校出身ではなく、オーディションでオペラ座バレエへの入団を勝ち取った実力者。
彼女については、下の記事でご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

まとめ

あまりにも輝かしい伝統の下で、パリオペラ座バレエは「革新」も目指しています。コンテンポラリーやモダンの作品も多く取り入れ、変わりゆく姿も見せてくれます。
パリオペラ座バレエに注目することは、「バレエの歴史」を目の当たりにしていることにほかならないのです。

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