EXILE 世界スペクタクルインスタライブ レビュー


日本のストリートダンスの隆盛を御存知ない皆さんにもお伝えしたく、以下、注釈MAXでお送り致します。ダンサーの方々やダンスファンの方々には話が長く読みづらくなり、恐れ入ります。

一般的に「ストリートダンス」=「ヒップホップダンス」と捉えられることが多いですが、ストリートダンスという大きな括りの中にヒップホップダンスを含む様々なジャンルがあります。バレエ、ボールルーム(社交ダンス)、ジャズ以降に発祥したダンスで、新しい音楽が生まれる毎に、新しいダンスも生まれてきました。

ヒップホップカルチャー(ラップ+DJ+ダンス+グラフィティー)の誕生から約半世紀経った今、ヒップホップ生誕の地アメリカから遠く離れたこの日本がストリートダンス大国になっています。

ストリートダンスを競技として見れば、五輪や世界選手権のメダル常連種目のように、世界トップの強豪選手を輩出しています。
ビジネスとして見ても、全国公演するチームもあり、自身のパフォーマンスや振付に加えて指導や育成でも身を立てられるプロダンサーも多く、裾野の広い事業が展開されています。

日本のストリートダンスは、日本人の持つ間合いと動作のハヤサ×うまさ、繊細さ正確さ、日々精進といった民族性や、日本人ダンサー達のブラックミュージックとそのダンスへのぶっ飛んだ愛情によって、伝え高められてきました。

EXILE世界(FANTASTICS/ FTHEB)さんのスペクタクルインスタライブ(不定期、世界さんの気まぐれライブ)では、その日本のストリートダンスの継承と進化の様子がリアルタイムで見られます。

Toyotaka(Beat Buddy Boi/FTHEB)さんとの練習時に配信され、ダンスと音楽がマインドマップのように繰り広げられています。
おもしろを利かせながら教則的に実演されているので、はじめてストリートダンスやブラックミュージックを知る方も、ダンスを頑張っている方も、ダンスファンもお二人のファンの方々も、皆で楽しめて皆のためになるコンテンツです。

こちらでは、サプライズゲストも登場し驚異の4時間放送となった6月21日(水曜日24時頃〜)の回を中心に内容を紹介してまいります。

その前にしばしば見受けられる誤解を正しておきたいのですが、「エグザイル」はマイルドヤンキーの具現化ではなく、世界最大規模のステージパフォーマンス集団『EXILE TRIBE』であり、アンダーグラウンドのシーンでも活躍を見せていた本格派ダンサーが多数所属しています。

オープニングを彩るスターダンサーのコメント

配信はコメント読みから始まります。序盤の魅せ場は、ファンの方々にまぎれてダンサーの方々が残される「これぞ」な一言です。

4時間の巻でも、EXILE TRIBEより中務裕太(GENERATIONS)さん、Beat Buddy Boiよりgash!さんとYASS(零/FTHEB)さん、お二人とチーム(FTHEB)メイトのB-BOY TAISUKE(THE FLOORRIORZ/RedBull BCONE ALLSTARS)さんと元ダンサーの奥様、加藤やよい(女優/モデル)さん、(B-BOY兼MC)KENSAKUさん、oguri(s**t kingz)さん、KAZANE(LUCIFER)さん、れお☆(BEAT SOLDIER)さん、MiYU(Lil’K)さんと、ストリートダンスの各ジャンル各世代のスターから各人らしいコメントが寄せられました。

所属会社やジャンルや立場の違うダンサーが集うのも、「ダンス界の架け橋になりたい」と願う世界さんのインスタグラムならでは。

流派が数多いストリートダンスのファンには、「もしかして派閥間の抗争があるのでは」と要らぬ心配がつきまといます。「あ、それはあのチームのパ……」等と大きなお世話で気を揉む時は、世界さんのOne WOORLDなインスタグラムが安心毛布になるでしょう(WOORLDはかつてのダンサー名)。

世界さんとDAPUMPのKENZO(ALL GOOD FUNK/SHUFFLE!!)さんのやり取り等、スクショしてハナシの分からない方々に暑中お見舞いしたくなります。

4時間の巻では、TAISUKEさん夫妻以外の皆さんは暫くして旅立たれましたが、ジャズダンスをリクエストされたMiYUさんの一言が、元『劇団四季』子役の山本世界さんのバレエとジャズの超絶技巧を召還する事態に!※MiYUさんは海外からの視聴で、夜更かしではありません。

EXILE世界が4分44秒に凝縮したダンスの潮流

世界さんの「ジャズ」はストリートダンスの【JAZZ-FUNK(ジャズヒップホップ、ストリートジャズ)】ではなく、バレエを基礎としたブロードウェイスタイルのシアタージャズです。

音楽は、アメリカの大作映画でかかりがちな万人に沁みるR&Bを自ら選曲。好みのとんがりソングをかけたいのもやまやまですが、かけても少数民にしか響きません。
瞬時に光った演出力、そしてこのR. Kellyの『I Believe I Can Fly』(1996年)が世界さんの全ポテンシャルを呼び覚まし、ヒップホップ×バレエ×ジャズの奇跡の融合をもたらします。

前奏からBメロにかけては、アイソレーション(各関節を個別に動かす)やウェーブ(体の中に流れを見せる)といったヒップホップダンスの技術を用い、想いに浸る芝居で見る者をミュージカルのステージへと誘います。
一転、サビではバレエ技術が火を吹き、アティチュードジャンプ(片足を反らす空中姿勢)からゴム底でピルエット(片足の回転)。

その研ぎ澄まされた音の見方と技の見せ方に、バレエが生んだ巨星Mikhail Baryshnikov(ミハイル・バリシニコフ)がFrank Sinatraの『One for My Baby』で踊ったソロ(振付:Twyla Tharp トゥワイラ・シャープ、1982年初演)を思い出し、純度の高さに目が眩みました。

曲の盛り上がりにつれ、ジャズハンド(死ぬ気で開いたパー)、肩の回しと膝の曲げ、張り×垂らし、シャッフル(足を左右交互に横滑りさせる)とBob Fosse(ボブ・フォッシー)が生み出したジャズの王道も突き進みます。

なかでも出色だったのはフォッシー・スタイルの定番、小道具使いです。タオルを落としたり拾って顔にかけたりかなぐり捨てたり、(バレエ技の精度も考慮して?)靴を脱いだりその靴を放って弧を交差して描いたり、「もう失うものは何もない(Toyotakaさんの解説)」とばかりにTシャツも脱ぎ去り、魂の解放を表現しました。……安心して下さい、アンダーでタンクトップをお召しでした。

目を引くフックを常に見せてくれる世界さんですが、4分44秒のこの曲ではフックのカブセも見られ、フレーズを描出。即興で様式美も創り上げました。

1回目のサビに続き、2回目3回目のサビでも今度は靴下姿でバレエを魅せます。エカルテ(片足を頭上近くまで横に跳ね上げる)や高速のシェネ(両足の回転移動)等が決まり、R. Kellyも「フォウッ!」とエキサイト。……したかのように音ハメも完璧(フェイクに合っていました)!

終盤にかけては「I can fly」の歌唱に合わせて腕のウェーブで羽ばたきを描き、モチーフとして印象付けていきます。最終盤、怒涛の「Fly!Fly!Fly!∞」のゴスペルが轟くフィナーレでは両腕を大車輪に回し、羽ばたきから飛翔してみせました。

カブセていた後ろ姿で演じ終えた世界さん。お戯れのカーテンコールに拍手喝采しながら脳裏に浮かんだのは、アメリカの黒人女性ダンサー、Katherine Dunham(キャサリン・ドゥナム 1909-2006)です。
世界さんと同じくバレエ出身で、ヒップホップ以前に人類史上初めてアフリカンの舞踊をステージに取り入れ、ブラックダンスの母と呼ばれています。

世界さんの『I Believe I Can Fly』は、バレエ×ジャズ×ブラックダンスをフュージョンさせたドゥナムの振付に奇しくも重なるものでした。ダンスを通じ文化人類学者としても活躍し、日本にも長期滞在したことのある親日家の彼女に、是非見てもらいたかったです。