「ヒップホップにリアルもクソもない。」ラッパーANARCHY × ダンサーKEITAが対談

ラッパーANARCHY(アナーキー)とダンサーKEITAによる対談インタビュー。長きに渡りシーンの一線で活躍する彼らにとってのヒップホップとは。

1995年より活動をスタートし、最近ではAWAのCM出演やPKCZ®とのコラボなど幅広い範囲で活動をみせるラッパーANARCHY(アナーキー)。
そして2000年代初頭から現在に至るまで、クラブショーケース、アーティストバックアップなどシーンの一線で活躍するKEITA。
ヒップホップというカルチャーの元、それぞれのシーンで光を放つ二人が3月28日、「SHIBUYA O-EAST」にて行われる「DANCE HOLIC」にて共にステージを作り上げる。
今回Dewsでは、あらゆる手法でシーンを刺激するこの二人に密着する。
出会いからコラボに至るまでや今回のライブについてなどダンサーのみならずヒップホップファン必見の内容。ライブに向けてバックダンサーオーディションも行うとのことで、ダンサーに向けてのメッセージも盛りだくさんとなっているのでラストまでお見逃しなく!

「DANCE HOLIC」
-ANARCHY BACK DANCER-オーディションの詳細
https://m.facebook.com/danceholic11/


STAFF
お二人とも長きに渡って、ラッパー、ダンサーとしてヒップホップシーンの一線で活躍し続け、ここ10数年のヒップホップシーンを歩み続けてきたと思います。
今回はお二人の出会いから現在のシーンについても触れながら、色々と語っていただきたく思います。
まずはじめにラッパーとダンサー、現場などでは一緒になることもあったかと思いますが、ちゃんと話したという意味でのお二人の出会いは?

KEITA
出会いは多分渋谷のクラブVUENOS。
もちろんその時は知り合いじゃないですけど、知人のDJがやっているイベントで、ANARCHYのライブを見たのが最初。
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確かその日に俺が話しかけたのかな。

ANARCHY
ダンサーと接点がけっこうあんまりなかったから。
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会ったときからイケてるっていってくれるダンサーの1人やったし、「わかってるやん」みたいな人でした。

KEITA
わかってた1人だった?(笑)

ANARCHY
そうですね。
わかってくれるダンサーの1人だったし、KEITA君のダンスも好きやったし。
あとは友達みたいな気持ちになったのは、京都で遊んだ時とか。

KEITA
そうだね。
ANARCHYが「今度ショーケース見に行くよ」みたいなこといってくれて、京都で俺らがショーやった時にいきなり突撃みたいな感じで登場して。
もう会場中もどよめいて、本拠地(ANARCHYの地元は京都)のダンスイベントにANARCHYが来たぞみたいな感じで。俺らも「うわほんと来た。やば!」みたいな。
その辺から他の人とちょっと違うのかなーなんて思いだしてより興味をもったなー。

STAFF
それはどのくらい前ですか?

KEITA
BASE HEADSの中期ぐらいだから、いつぐらい?

ANARCHY
6~7年とかですかね。

STAFF
それがきっかけで、出会って徐々にというわけですね。
クラブでは洋楽のヒップホップが流れることが多いですが、そんな中、日本人のラッパーANARCHYさんに食らったポイントっていうのはどういうところですか?

KEITA
ANARCHYの楽曲がすごい好きだっていうのが根本にあって、ANARCHYのいってることとか、育ってた環境とかっていうのにむちゃくちゃ興味が出ちゃって、ネットでめちゃ調べまくって。
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やっぱりそれって日本語ラップのいいところじゃないですか。言葉がわかってしかもそのカルチャーがそこに見えて。で、なおかつかっこいい。
それからは、もう至る所でANARCHYをみんなに推薦して、雑誌でも言いまくりました。
もちろんラップ業界では既に有名だったんですけど、ダンスの方にはまだ日本語ラップって入ってこない時代だったから、なんとかみんなにわかってもらいたいなと思いつつ。

STAFF
そんな中、初めてのコラボの形となった2015年の夏の「DANCE HOLIC」。
全国5都市で開催されたバックダンサーオーディションで勝ち抜いたダンサーをバックにつけてのライブがありましたね。
おそらく初めてバックにダンサーをつけてのライブだと思うのですが、どういった心境でしたか?

ANARCHY
そんな事やったこともないし、正直話聞いた時は想像はできなかったです。でもKEITA君は、信用できるしコンセプト聞いた時点で普通のダンサーつけてやるだけより面白いなと思ったし、興味がわいたというのが一番。

STAFF
その興味を湧いてもらうために自分で考えた事とかあるんですか?

KEITA
もう単純に、ANARCHYに喜んでもらおうっていうよりは、やっとANARCHYとやれるって気持ちが強くて、今持ってるイマジネーション、、ANARCHYに日本のダンサーが捧げるLOVEっていうか、それを彼の背中に集めたら絶対かっこいいものになるし、ANARCHYも絶対これは納得してもらえるだろうなっていう、もうただ単純なそんな気持ちでしたね。

STAFF
それは出会って4~5年経ってからですよね?
逆にいうと今まではそういうタイミングがなかったんですかね。

KEITA
ANARCHYがダンサーとやるとは思えなかったし、逆にいうと「DANCE HOLIC」がそのきっかけを作ってくれた。
オーガナイザーに「ANARCHYにオファーしようと思うんですよね。」みたいなことを言われて。ANARCHYはOKしないだろうなっていう風な気持ちも半分くらいあったんですが、OKになりましたって聞いたときは驚きました。

STAFF
ANARCHYさんにもKEITAさんを信用する気持ちがあったからこそ実現したんですね。
その時のダンサーに対するイメージというか、ダンスシーンに対するイメージってなにかありますか?

ANARCHY
ダンサーはダンサーのコミュニティっていうイメージが強かったです。
でもやっぱ日本語ラップとかで踊ってくれたりするのも嬉しいし、それが俺みたいなラッパーと、俺が好きなダンサーと、それに色んなやつが集まってやるって、面白いなと思いました。
最近では日本語ラップも様々な種類が出てきたし、それで日本語ラップで踊りたい子たちが出てきて欲しいとも思うので、昔より考え方は変わってきたかなって気はしてます。

STAFF
今ヒップホップシーンといえば、フリースタイルダンジョンきっかけのブームが来てたり、ダンスはバトルやコンテストなどと、競技的なものがフィーチャーされてますけど、現在のシーンと昔を比べてお二人はどう思っていますか?

ANARCHY
楽しいですよね。
盛り上がってきていると思うし、ヒップホップは今のほうが熱くなってきてると思う。俺らも耐え抜いてきたのが今に繋がってきたなーと思うし、それにもっと若いやつも出てきて、シーンとしては盛り上がってきてるって思ってます。今なんじゃないかなって思います。

STAFF
今なんじゃないかというと?

ANARCHY
色んな若いやつにOGもいるし、みんながもう一度大好きな事真剣にやるようになったって思ったっていう。
だから大事なのは今なんです。

KEITA
うん、やっぱり多様化してるようでフォーカス当たるところって結構限定されるっていうか、バトルとかコンテストとか。今ラップはフリースタイルでしょ。
そういうとこにフォーカスが当たっていて、それはそれですごく好きな事なんだけど、やっぱり一番好きなのって街並みがあって、そこに人が集ってて、遊びがあっての中のラップ、ダンスみたいな延長線上のアートをホームっていうのが俺は一番好きな形で、自分がやりたいなーって思うのはそういうところ。
なので他の部分に関してはすごく応援して楽しんでるっていう感じ。

STAFF
その辺に通じる話なんですが、今こんなにブームになってそれこそ街ではラップでフリースタイルやってたりとか、ダンスは子供たちがたくさん習ってたりっていう環境の中で、昔の独特のヒップホップの雰囲気や色を持っている子って少ないのかなと思うんこともあるんです。
シーンで生きるお二人の目にはどういう風に映っていますか?

ANARCHY
俺、ヒップホップは永遠に進化するもんやと思ってるので、今の子供たちが感じるヒップホップのままでいいと思うし、あん時のヒップホップがヒップホップとは俺は思わない。これがヒップホップって決めつけるのがまず間違いで、今の若い子たちがやってる事とか聞いてる音楽とか、そういうところがヒップホップって思う。まだまだ変わっていくだろうし。
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だからその時代の一番フレッシュなものがヒップホップなんじゃないかな。ロックはいつまでたってもロック。ヒップホップはずーっと進化していく物だと俺は思っています。

STAFF
なるほど。

KEITA
ていうのがやっぱ俺もすごいANARCHYが好きなところで、そうじゃない考えの人ももちろんいて、それを否定するつもりは全然ないけど、ANARCHYがいってるからすごく説得力があるというか、ダンサーにはなかなか担えないことで、俺はANARCHYとやらせてもらうことによって自分の何かをANARCHYの背中に託させてもらってるっていうか。
やっぱりANARCHYもずっと色んな事を経て今があって、それでも最新のものが一番いいっていえるってすごい事だと思うんですよね。
それを色んな人にダンスっていうフィルターを通してANARCHYの声に乗せたいなっていうのが今自分の考えるヒップホップの表現の仕方かなっと思いますね。

STAFF
一番フレッシュなものがヒップホップ。そういった意見もあるんですね。
逆に人によっては、ヒップホップはこうでないといけないって言い切る方もいますよね。
そういった意見に関してはどう思いますか?

KEITA
ダンスでいうとステップの名前、呼び方とか、言い方とか必ず由来とかあるじゃないですか。
それはとても大切な歴史だと思うんだよね。
こういう技が、こういう年代で、どういう地域で、どういった人達が、どういった環境で生み出したっていうね。
先人が作り上げてくれた物にリスペクトを持ちそれを知る、伝えていく事はどちらも重要だと思うよ。そうやって理解する事に費やす時間や労力がダンスとは関係ないように見えて実はとても大切な時間だと思ってる。
ただそれに外れるものや、違った価値観、新しい物などをひとくくりにしてヒップホップじゃねーみたいな事を言われたら、ん?って思うね。

ANARCHY
それこそ「あいつはリアルじゃねえ」とかよくいうじゃないですか?
けど本当にリアルな奴なんか1%しかいないですよね。ぐらいの中でみんな音楽探してるわけじゃないですか。
それをなんかこれがリアル、あれがリアルって全部フェイクやから、それいうんやったら。リアルな奴なんて1%。お前らの目に見えてへんがなと俺は思ってる。

STAFF
確かにリアルじゃねえって言葉がよく聞きますよね。

ANARCHY
口喧嘩で勝った奴がリアル、下がぺこぺこしてる奴がリアル?そんなのリアルじゃなくね?って。
それはひとつのジャンルで競技じゃないすか?その形、そのルールの中でやることのリアルとか正解とかはあるかもしれんけど、ヒップホップにリアルもクソもないと思うんですよね。
誰がどんな事いうか。オタクやったらオタク、そいつしか言えんものがあるし、俺らみたいのには俺らにしかできんこともあるし、それがリアルやから。

ヒップホップとしてのリアルなんて1%。今でいったら俺しかいーひん。

て、みんな思ってるんすよ。

一同
(笑)!!
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KEITA
そのリアルかフェイクかって、オリジナルなのかオリジナルじゃないのかっていう事ももちろんあると思うんだけど、オリジナルなんてさっき言ったみたいに1%もあるかどうかですよね。
やっぱりその派生型っていうので、新しい形っていう風にはなるけど、それが完全なオリジナルなのかって言われるとちょっと微妙なところももちろんある。

ちょっと違った考え方ですが、ANARCHYのバックアップをするために、オーディションをするんだけど、それを個人でオーディションするんのじゃなくてチーム単位でエントリーする形式をとったんです。
それはなぜかっていったら、オーディションまでにANARCHYの曲を聴いて、ANARCHYのリリック、何のためにこういう事いうんだろうってきっと考えたりすると思うんですね。
その中で、ANARCHYのことを調べてみたりとか、ANARCHYの本を読んでみたりすることによって、そのANARCHYのリリック、音楽を理解していくと思う。で、その理解した上で踊ることって、俺はどっちかっていうとリアルに近づいてるような気がする。
その聞こえた音と、聞こえたリズムだけで体を動かしていく事ももちろんリアルだけど、リリックに対して形を創っていくっていう意味ではそっちの方が近づくと思うんだ。

だからやっぱり、何がリアルか何がフェイクかっていったら、やっぱりより感情移入するために何かを費やすこと事が、リアルに近いんじゃないかなーと俺はダンサーとして思います。

STAFF
すごくわかりやすいリアルの定義ですね。
では、そういった押しつけとかではなく、自分の中で大切にしているもの、自分にとってのヒップホップに求めてるものってなんですかね。

ANARCHY
遊び。
スケートボードやバスケットボールとかと一緒じゃないですかね。
それを仕事にしようと思ってラップを始めたんですけど、今でも遊んでるつもりでライブやってるし、真剣に。
鬼ごっこでもやってるときは真剣ですよね。それと同じ。
もう1個いうならライフというんですかね。

KEITA
言葉にしろっていわれるとすごく難しいですよね。正直わかんないこともいっぱいあるよね。

ANARCHY
でも結局は遊びっすよね。好きだからダンス踊るんですもんね。

KEITA
そうだね。俺をこうやって色んな人に会わせてくれた大切モノだけど、何か得体の知れないモノ。

オーディションについて

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