大切なのは“今後のあり方”。6月23日に施行された風営法改正について、ダンサー弁護士NONman氏(一撃)に話を伺った

従来の規制を緩和し、一定の条件の下、終夜営業を認める改正風営法が6月23日施行された。
ダンサーたちもたちまちそのニュースをシェアし、クラブという場所が認められたことに喜んでいる様子だ。
しかし中には、今回施行された内容で、具体的にどうなったのか、今後シーンはどうなっていくのか、いまいちピンとこない方も少なくはないのではないだろうか。

そこでDewsでは、以前も風営法改正についてコメントをいただいた、関西を代表するブレイクチーム「一撃」のメンバーであり、現在は弁護士として活動するNONman氏に話を伺った。
我々ダンサーにとって、発表の場、切磋琢磨の場でもある『クラブ』を巡る今回の改正の経緯や内容、今後の課題とは??

石垣元庸弁護士(一撃 NONman)
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BOTY2005 準優勝&BESTSHOW獲得等、2000年初頭に活躍した関西を代表するブレイクチーム「一撃」のメンバー。
2010年には司法試験に合格し、現在は弁護士としても活動中。

風営法改正に至った経緯

全国的にナイトクラブの無許可営業摘発が行われて以降、ダンスを規制するのはおかしいという声が、若者中心に上がり、署名活動等全国的なムーブメントになった。加えて、大阪の老舗クラブ『NOON』の無許可営業摘発事件が、刑事裁判として社会的に注目を集め、結果、無罪判決が出た。さらには、2020年東京オリンピック招致が決まり、世界中の方たちをもてなす夜の場が必要となったことも、大きな追い風となり、風営法改正の機運は高まっていった。
そんな中、クラブ関係者のみならず、アーティストや法律家などが、地道なロビー活動を続け、今回の改正にこぎつけた。

具体的な改正内容について

改正内容については、まず、風営法から『ダンス』という文言が消えた。つまり、客にダンスをさせるダンスホールやナイトクラブ等を規制していた条文が消えた。
一方、客に『遊興』を提供する飲食店について、新たに『特定遊興飲食店営業』という類型を設けて、明るさが上映前の映画館並みの10ルクス超などの基準、指定地域内であること等、一定の条件下で許可を与え、終夜営業を可能とした。

警察庁によれば、この『特定遊興飲食店営業』には、ナイトクラブが含まれることとされている。
つまり、深夜のナイトクラブ営業は、依然として特定遊興飲食店営業許可を取らなければ、許されない。以前のナイトクラブ営業同様、無許可営業は処罰される。

ちなみに、改正前は、ナイトクラブ営業の許可を取ること自体が非常に難しかったうえに、許可をとったとしても最高午前1時までの営業しか許されていなかったことから比べれば、許可条件や営業時間と規制緩和されたものと考えられ、クラブカルチャーにとって大きな一歩だという声も上がっている。

今回の改正は、実は『改悪』?

一方で、去る6月7日、最高裁において、『NOON』事件の無罪判決が確定した。
最高裁がお墨付きを与えたNOON事件控訴審判決では、ナイトクラブ営業にいう「『ダンス』とは、男女が組みになり、かつ、身体を接触して踊るのが通常の形態とされているダンスを指し」、いわゆるナイトクラブ営業は、「設備を設け、このようなダンスを客にさせ、かつ、客に飲食をさせる営業であると解するのが相当である」としている。
つまり、ヒップホップダンスを踊らせる一般的なクラブは許可なく営業しても問題ない、という判断だ。
このような判断を基準にすると、改正において『特定遊興飲食店営業』の中にナイトクラブ営業を含めて、『許可』を得なければナイトクラブを終夜営業することができない、とした今回の改正は、実は『改悪』だという考え方も出てきている。

警察庁によれば、事前の許可申請は5月末までに14都府県で70件に上ったそうだ。思ったより少ない、というのが正直な印象だ。
かたや、従前営業をしていたクラブが指定地域から外れた結果、閉店することにらなったというケースも耳にする。
具体的な運用が始まった今、今回の改正が、規制緩和か、改悪か、について議論することにあまり意味はないように思う。
現場では、利用客のマナー向上や、周辺住民との関係調整努力が求められ、試されはじめている。

今後のあり方について

ダンサー目線で考えれば、ダンスホール営業やナイトクラブ営業が撤廃された上、特定遊興飲食店営業が創設されて深夜帯に発表する場やステージに法律上お墨付きが与えられた。昼夜共に適法な発表の場、ステージが設けられた。その意味では、少なからずダンスシーンやカルチャーに広がりが出たと言っていいように思う。
しかしながら、現状に満足しきって良いか、というとそうは思わない。さらなるダンサーの地位向上や、シーン、カルチャーの発展を望み、目指していく必要かあるのではないだろうか。

我々ダンサーにとって、クラブはどうあるべきで、クラブをどう利用すべきか、改めて、問われているように思う。

文:石垣元庸弁護士(一撃 NONman)


その他にも今回の改正について、ネット上では話題となっており、物議を醸している様子だ。
ダンサー、クラバーの方々、今回の改正について、クラブが認められたという事実がシンプルに喜ばしいのはもちろんだが、是非ともその先、今後についても考えていただきたい。

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