“元ダンス部”のダンス部顧問〜二松學舍・京都文教・初芝立命館・関西大倉

 ダンス部の顧問の先生たちは、キャリアも年齢もさまざま。それぞれの世代や感覚でダンス部を指導するからこそ、ダンス部全体の作品の多様性も広がっているのだ。その中でも、高校時代にダンス部だった部員が、その後教員になってダンス部の顧問を受け持つような形も増えてきた。ダンス部出身だからこそわかること、生徒に寄り添えること、ダンス部の昔と今の違いなどについて語ってもらった。

インタビュー&文:石原ヒサヨシダンスク!
写真:今田和也、村田卓
「ダンスク!」42号より転載

二松學舍大学附属高校 / 松澤龍先生
「顧問は一番長くダンスに関わっていられる立場」

バチバチのポッピングとスタイリッシュなヒップホップで、ダンススタジアムのバトル東日本大会を8連覇中の二松學舍大学附属高校。その顧問を務める松澤先生は、部員の兄貴的存在でもあり、憧れのストリートダンサーだ。

「ダンスは中学生の頃から見よう見まねで始めていて、國學院高校でダンス部に入りました。その部はブレイキン中心でしたが、より個性を求めてヒップホップやポッピンも取り入れるようになりましたね」

当時テレビ番組が入るほど注目されるダンス部だったそうだが、番組内で高校時代の松澤先生は「将来の夢は踊れる先生になることです!」とコメント。実際、それをきっかけに部員へのダンス指導により力が入るようになり、その後大学ではダンスサークルを創設、
初心者部員のダンス指導に熱を入れていく。

「単純に知識がないと教えられないなと思ったので、いろんな映像を見まくって、自分でやってみて、ジャンルや技の成り立ちなども調べて、それらを言語化して指導できるようにしていました。自分は学生時代にトップのダンサーではなかったし、そういった劣等感があるからこそ、初心者がうまくできない気持ちもわかる。だから、教えることでは一流になろうと、毎日トライアンドエラーを重ねていましたね」

大学卒業後は現在の学校へ赴任し、ダンス部を立ち上げ。自身いわく「一番長くダンスに関わっていられる立場」としてダンス部の顧問の道を選択するのだ。今年で10年目、先のバトル8連覇はじめ、常に全国のトップを走り続けている。

「昔のダンス部はただ自分たちがカッコいいと思うことを追求していたのですが、今のダンス部は大会で勝つためにやっているところはありますね。ウチでは何がカッコ良くてそうでないか? その感覚を養うことを大事にしています。ダンス部で自分の感覚を養って、卒業しても就職しても、生活の中にダンスがある人材になって欲しいですね」


▲二松學舍と松澤先生によるダンスバトル講座。8連覇の秘密が明らかに?

京都文教高校 / 矢下修平先生
「他者との違い=リスペクトを学べるのがダンスの良さ」

大会での入賞やメディア出演など、年々頭角を表している京都文教中高。ストリートダンスのファンキーなノリを武器にする京都の代表的ダンス部だが、その顧問も元気でノリ良し、まさに文教ダンス部を体現するような先生だ。

「私の出身は三重県で、ダンス部は高校なのにインカレで、他の高校の生徒も集まってくる部活でした。三重高校の顧問の神田橋先生もその仲間ですね。活動は地元のイベントに出るぐらいでしたが、当時京都にすごいブレイキンのチームがいて、ダンス部の仲間みんなで京都の大学に進学して、それぞれの大学のダンスサークルに入ろうってことになったんです」

そして矢下先生は京都の教育系の大学に進学し、卒業後は京都文教中高に赴任。その当時からダンス部はあったのだという。

「今とは違って、そんなに大会にガンガン出るようなダンス部じゃなかったですね。アクセサリーをつけてメイクして、ガールズヒップホップやっているような、よくある感じでした。そこでストリートダンス系の大会に出てみたところ、部員たちは周りとのレベル差に唖然としてしまい…、生徒徒が“ 自分たちもあんなにうまくなれますかね?”と言ってきたので“ほな、一緒にやってみようか”って、真剣に取り組んだのが始まりですね」

基礎体力作りから、技術の向上、規律や礼儀、もちろん学業との両立も。ダンスのジャンルは、矢下先生も経験のあったロックダンスにフォーカスし、ストリートダンスらしさと高校生らしさがミックスされた作品作りで、徐々に大会で目立ち始める。メディアからの出演の引き合いも増え始め、矢下先生の同級生だったアーティストとの共演MVでは130万回を超える再生回数を叩き出した。

「ありがたいことなんですけど、何かを達成した時には次のことをやり始めてしまっているので、なかなかこれで満足という感じにはならないです。まだまだやりたいことがたくさんありますから(笑)」

教育者としての考えの多くを自身のダンス経験で培ってきたという矢下先生。ダンスを通じて、人や社会と関わることで信条としていることは?

「リスペクト(尊敬)ですね。他者の違いを認めることです。部内でも各自のダンスへの取り組み方への違いを認めること。それに、ダンスって特にうまくなくても、見せ方や見せる対象によって、価値を出すことができる。そういう表現の幅の広さを、ダンスを通じて学べると思います」


▲ただいま絶好調?!京都文教の練習の秘密と部員の素顔に迫った動画。


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