雄として格好良く生きるための1分1秒の選択。ラッパーAK-69 × ダンサーMASAKI スペシャル対談

地べたから這い上がったキング・オブ・ヒップホップと称され多くのファンを集めるラッパーAK-69。
2014年には初の武道館ライヴを見事成功に収め、昨年、ヒップホップ界の名門レーベルDef Jam Recordingsと契約したこともさらなる話題を呼んだ。
そんな彼が、約3年半ぶりとなる日本武道館ライヴ「DAWN in BUDOKAN」を10月18日に開催する。
そして今回、当ライヴの出演ダンサーをダンスイベント「DANCE HOLIC」(通称ダンホリ)とタッグを組みオーディションで決定する。
そこでDewsでは、AK-69と、かねてより彼のライヴの演出、振り付けを手がけるダンサーMASAKI(SHOW GUN)の二人にインタビューを敢行。
アーティストとバックダンサーとしてではなく互いを同志と認めあい、熱く呼応し合う二人の想いとは?
長きに渡りさらなる高みを目指し続ける対談は、ダンサーだけではなく、夢がある人全てに読んで欲しい。そんな内容となった。

二人の出会いのきっかけ

STAFF
今回は、AK-69さんの武道館ライヴ「DAWN in BUDOKAN」のダンサーオーディションをDANCE HOLICとコラボし、その振り付け演出をMASAKIさんが担当されるということでお二人に色々と話しを聞かせていただきたく思います。
まずはじめに二人がこういった形で絡むようになったきっかけからお教え下さい。

MASAKI
きっかけは大阪のVenomのNAOMIちゃんがSHOW GUNにその時入ってて、ちょうど「BEAT CONNECTION」っていうフェスが「横浜アリーナ」であって、その時に東京の子を探してるんだよねって話して、「MASAKI君やってみーへん?」って感じから始まりました。
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STAFF
ダンサー繋がりで紹介されたのがきっかけなんですね。
AK-69さんからみて、第一印象はどういったイメージですか?

AK-69
雑誌とかで見て知ってたんで、「あっ、MASAKI君だ」って(笑)。
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なので元々知ってはいたのですが、絡んだのは紹介してもらってからですね。

STAFF
そこから関わり方としては、MASAKIさんはずっと振り付けですか?

MASAKI
振り付けとダンスの演出をさせてもらってます。
最初のうちはどうやっていいか分からないから窺いながらやってたんですけど、
演出とかをしていく中で例えば、こういうのをやったら楽しそうなんだけどっていう企画を持っていったら、それをちゃんとディスカッションして決めてくれたり、アーティストからの一方通行にならず、ダンサーの意見も取り組んでステージングを作ってくれるんですよ。

STAFF
年齢的には同世代ですが?

AK-69
MASAKI君の方が先輩ですね。
ラッパーでいうとDABO(ダボ)君とも一緒でしたっけ?

MASAKI
DABO君の一個下になるけど、出会い方でちょっとDABOにはタメ語になっちゃって。
俺最初はタメだと思ってて、うさぎ年で意気投合して話してて、そしたら早生まれだったっていう。
でも今更「DABO君ですよね」って言うのも何かおかしくなるからそのままにしちゃって(笑)。
。ラッパーでいうとラッパ我リヤのQ (キュー)とか、あとはHOKT(ホクト)とタメになるのかな!

AK-69
え?HOKT君はDABO君と一緒っすよ?

MASAKI
あれ?じゃあ、俺より一個上!?

一同
(笑)。

MASAKI
それすらももう(笑)。

STAFF
年取るとあんまり意識しなくなってきますよね。

AK-69
俺は年上って分かってたけど、若い時東京のラッパー全員タメ語でしたけどね。
「おい、DABO」とか言って。今は、DABO君って普通に話しますけど、昔アホだったもんで、東京の奴らに全員絶対敬語使わねぇぞって。

STAFF
それで怒られたりとかはないんですか?

AK-69
いや、ないっすね。

MASAKI
当時、名古屋とか北九州は東京のみんなも一目置いてたとこがあるからね。

STAFF
なるほど(笑)。
「BEAT CONNECTION」からは、ライヴなどでずっと一緒にやっているんですか?

AK-69
ライヴでダンサーに入ってもらうっていうのは、全国区になる前からやってたことで、当時は名古屋のダンサーに出てもらってずっとやってました。名古屋のダンサー以外で一緒にやり始めたのがVenomで。そこで初めて、自分たちの地元以外のダンサーと組んで勝負したりとかするようになって、その繋がりで2010年くらいにMASAKI君たちと出会って、そこからは一緒かな。
そうやって思い返すと自分のライヴにダンサーと一緒に出るっていうのは、2005,6年からやってましたね。

互いの絶大な信頼。その魅力とは

STAFF
出会ってからはずっとMASAKIさんにお願いしているということですね。
バックダンサーや演出家に関しては続けていく中で、人選を変更したりとか、そういうこともあるわけじゃないですか。
MASAKIさんに魅力を感じて毎回頼み続ける理由はなんですか?

AK-69
やっぱりアティテュードが一緒っていうところが大きいですね。
やればやるほどそれは確認できることではあるんですけど、知り合った時から考えていることが同じ匂いがするっていうか。
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ラッパー、アーティストの中でも色んなタイプがいると思うんですけど、俺はストリートでずっとやってきて、ストリートで名前売って全国区に上がってきて、それでもまだメディアにそんなに取り上げてもらえなくて。
でも、メディアが取り上げざるを得ないくらい名前を売り続けてここまできているタイプで。
その一方で、ちょっと芽が出たら東京の大きな事務所にフックされてメディアの力を使って名前を売る人たちもいるわけで。ダンサーでもそうだと思うんですよね。
MASAKI君はストリートで出会ってダンスをずっとやり続けて、しかも自分がダンスで何を表現したいかというのが明確にわかるんですよね。
アティテュードがしっかりしている中で、色んなシチュエーションとか環境がある中でもブレずにずっと自分たちで発信していくっていうことをやり続けてるっていうところが、なんかもう同志だなってすごい思って。
69ダンサーズのメンバーはみんなダンサー界のそうそうたるメンツなんで、他ジャンルの韓流のダンサーをやってたりとか、倖田のくぅちゃん(倖田來未)のダンサーやったりとかで日程が合わずにメンバーが変動することは多少あるんですけどね。
基本みんな同じアティテュードを持ったメンバーでずっとやってるし、MASAKI君はそこをずっと取り持ってくれてて、俺も絶大な信頼を寄せてます。
だからそこは人選を変える変えないじゃねぇなってのはすごいありますね。
それは例えば、MASAKI君が体が動かなくなったとしても、俺たちのダンスのことに関してはずっと関わっていてほしいなって思うくらい信頼しています。

STAFF
ダンサー冥利に尽きるといいますか、信頼関係が本当にあるのだと感じました。
逆にMASAKIさんがAK-69さんとやりたいと感じる理由、もちろん仕事ということもあると思うんですけど、この人だから熱くなれるっていう理由はなんですか?

MASAKI
お仕事だから。って基本的にそういう考えをしたことはここの現場にはまずないんだよね。

STAFF
なるほど。

MASAKI
とにかく俺がかっこいいと思ってやってきたものを体現している人だから。
そんな自分の理想の場所で自分の今までやってきたものを100%伝えられるっていうのは、現状日本にはここにしかないから。
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もちろんヒップホップアーティストは沢山いて、その中で俺もやりたいことをいっぱいできてるんだけどね。でもやっぱりメジャーのシーンとか、それこそアイドルだったりとアーティストとして互角にやりきれてるかっていうと、そうじゃない人も多い。
そんな環境の中で俺はヒップホップが本当に好きだから、この文化をもっと大きいシーンにしたいし、自分がやってることをもっともっと形にしていきたいと思ってるから、ノーギャラでライヴやることもあったし、今でもギャラが少ないからやんないよ何てことも言わないし。
とにかくシーンを大きくしていきたいなと思ったり、俺を助けてくれたというか勇気をもらえたヒップホップという文化に対してとにかく成長させていきたいんだよね。
AK君は、それを実行し続けている人だから、AK君とやれていることは幸せと感じることしかないっていうのが一番かなと。

AK-69
あざす!

一同
(笑)。

STAFF
仕事関係というより仲間に近い感じなんですね。

MASAKI
勝手に言っちゃうとソウルメイトじゃないけど、本当に同じ感覚な人というか。
だからライヴの内容もリリック聞いただけで俺は共感できるし、それを自然と俺のダンスというフィルターで表現できる。
例えば俺も仕事として色々なアーティストの振り付けとかもするから、やるからにはそれがアイドルだろうがなんだろうが、相手が欲しがっているものを全力で与えるスタンスでやってるんだけど、やっぱり妥協する部分ってあるじゃない?
俺はもっとこうしたいんだけど、でも求められてるのはそうじゃないっていう部分でさ。
だけどAK君の現場に関しては、俺がバックダンサーとして本人を引き立てるっていうのはもちろん大前提なのかもしれないけれど、むしろAK君がいるけど、俺が一番目立っちゃうよ?っていうつもりでやってる。
だからいつもダンサーとラッパーっていうアーティスト同士の戦いって感じで同じ土俵でやれてるのかなとは思ってやらしてもらってます。

AK-69
俺もバックダンサーって言葉があんま好きじゃないんですけど、ダンサーにフューチャリングしてもらってるみたいな感覚でいつもお願いしてるんですけどね。
自分がクラブとかそういう間口が狭いステージで、ワンマイクで圧倒するってことができるのが大前提として、間口が大きいステージとか大きな舞台に立った時に、自分のマイクと声だけでは伝えきれない歌のメッセージとか、表現しきれない部分をダンスで表現してもらってるっていう感覚が強いですね。
だから本当、ダンサーってバックでうまく決められた振りをしている人っていう感覚は俺の中では全くないですね。

STAFF
自分の音楽を一緒に表現してくれてるっていう?

AK-69
そうですね。

STAFF
これまたダンサー冥利に尽きるお言葉ですね。
ラッパーから見るダンサーだったりダンスシーンってどういう風に見えていますか?

AK-69
最近MASAKI君たちを筆頭に、日本語ラップで日本人のダンサーが踊っているっていう動画とかを見る機会がすごく増えました。昔はダンサーってちょっと別な感じがしてたんです。特に日本語ラップをやってる俺たちからすると、ダンサーの人ってちょっとおしゃれでUSのラップしか聞きませんみたいな、そういう、勝手なイメージですけどね(笑)。
だから交わることがないっていうか。
でも今ってアーティストとコラボしてるダンサーもいっぱいいるし、日本語ラップでショーをしている人も増えたし、なんかすげぇ俺はヒップホップ的に美しい環境になってきたんじゃないかって思いますね。
もちろん俺もそうですけど、日本語ラップを聞くっていうよりかはUSのメインストリームをメインに聞くんで。それってあっちで始まった文化で、あっちが本場なんで当たり前のことなんですけど、海越えてその文化が日本っていう島国にやってきて日本独自のヒップホップが出来上がってきているっていう、今はそれを象徴するシーンになってるんじゃないかなってすごく思うんですよね。
今キッズのダンサーっていっぱいいるじゃないですか?キッズのダンサーが普通に日本のラッパーの曲とか日本のシンガーの曲に憧れて、それで踊って育ってっていう世代がどんどん出てくるっていうのは、すげぇ未来が楽しみだなとは思いますけどね。

STAFF
MASAKIさんは、それこそ元々はUSというか、ショーケースでも海外の曲メインで活動していたイメージでしたが、日本語ラップに注目し始めたというか、ショーとかで使ったりとか、そういうポイントはどこでそうなったとかはありますか?

MASAKI
ターニングポイントはZeebraさんとの出会いになるのかな。
日本のヒップホップは俺も正直元々聞いてなくて。でも先輩がDJやったりしててミックステープの中に曲が入ってるから、気になってる部分もあったんだよね。
でも意外と踊れなくて。それこそ日本語の邪魔をしちゃうし、踊りたいように踊れなかったっていうのが正直あったんだよね。
そんな中Zeebraさんと出会ってツアーに連れて行ってもらえるようになった時に、しっかり聞くようになったんだよね。
そしたら、かっけーじゃんっていう風に思えるようになって。そこから色んな人を聞くようになってった。
音源自体もUSに負けてないじゃん!って知れたし!当時は世に出る日本語ラップっていうのが少なかったから、分からなかったっていうのも正直あったのかもね。
当時の自分たちダンサーはファッションから何からUSから学んでたのよ。向こうのMTVを見たりしてるから。
そこの中に日本のヒップホップっていうのは入ってこなかったから、何がかっこいいのかっていうのが分かんなくて。
それが自分で調べるようになってやっと分かるようになってきたかな。
一番最初のポイントはそんな感じかな。

常に前進を試みる彼らが作り上げるライヴとは

STAFF
ありがとうございます。
そんなお二人が作るライヴってどんなものになるのでしょうか。

AK-69
本当に生き様を投影している音楽なんですよね。
何でも「言う」のってタダですよね、音楽の良さって自分が何にでもなれるし、想像の世界を作ったり、何でも良いってのが音楽の良さでもあるので、そういう類の音楽を別にディスるつもりも全くないし否定もしないし、素晴らしいと思うんですけど。
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こと俺の音楽は、本当にガキの頃にどうしようもない生活を送ってて、その中でヒップホップに出会って一つのことに没頭することによって、特別な才能があるわけでもない人間が一つのことを成し得ることができるっていう一つのドラマなんです。俺がガキの頃言い放ってたこととかも今現実のものにしてるし。
勢いで「俺武道館やってやっから」とか「TVでMステ出るから」とか言うのは全然タダで。
例えば、若いラッパーで「俺、AK-69さん追い越してみせます!」とか結構言うやついるんですよ。その気持ちは全然良いと思うし、良いアティテュードだなって思います。だけど、それは追い抜いた時に、「俺追い抜いたんで、言った通りにしましたよね」ってなるのと、言うだけで終わるのとでは全然意味が違って。
俺は前者の言ったことを全部成し遂げるっていう、しかもそれが別に選ばれし者でもない俺が一つの想いの強さだけで成し得ていくってことを体現している人間なんで。
パッて俺のことを今、「AKって売れてる人でしょ?」みたいな、何となくの情報でしか俺を知らない人は、俺をある種の成功者みたいに思うかもしれないですけど、『いやいや全然違うよ、お前と一緒かそれ以下の所からずっとこうやって成り上がりを自分の看板に掲げてきてるやつだから』っていう。俺のライヴを観てくれたら、それが分かってもらえるんじゃないかなって思いますね。

STAFF
なるほど。
夢がある人には凄く勇気になりそうですね。

AK-69
でも、本当にまだまだ俺も全然挑戦者で、成し得てないことっていっぱいあるし。
俺が本当に挑戦者のアティテュードじゃなかったら、20代の子なんて年も離れているし、多分俺の音楽に共感なんてできないと思うんだよね。でも、今でも入れ替わって10代の子たちが聞いてくれてるっていうのは、やっぱり俺が挑戦者である証なんじゃないかなってすごく思うんですよね。
それがなかったらこんな年の離れた子たちに何か伝えるって中々難しいと思うんで、俺はまだまだ悔しい思いもしてるし、ギリギリの挑戦をしながら生きてるんで、それを感じてもらえたらなって思いますけどね。

STAFF
正直な所、ダンサーがラッパーのライヴに行く習慣とかってシーンとして根付いてないじゃないですか?
イベントで一緒になることはあっても。
ダンサーから見るAK-69さんのライヴってどういう風に見えますか?

MASAKI
AK君に関しては絶対に来た方が良いよって心から思う。
俺はダンサーみんなのモチベーション分かる訳ではないけど、自分がやりたいことをやって生きていこうって考えている人だったら絶対に見た方が良い、感じた方が良い。
これで感じない人は、相当不感症(笑)。これで感じなかったら一生無理ですからっていうくらいだね。
俺今年42歳なんですけど、俺は自分のやりたいこと・自分の思い描いている世界にまだ全然届いてないのよ。
とにかく自分が思い描くシーンに近づける様に一生懸命未だにおっさんになってもやってるんだけど、今までほとんど見えなかったビジョンを、AK君を通じてもらったパワーで現実に出来る光が少しづつ見えてきてる気がします。
それくらい諦めない勇気をもらえたりとか、絶対やってやるよっていう背中を押してくれるものだったりがすーっごく詰まったライヴだから。
もちろん歌も上手いから聴く耳としても良いライヴだし、視覚的にもステージの照明だったり演出だったり素晴らしいっていうのがまず大前提ね。
それプラスで心に響いてくれるっていうか、もっともっと他のライヴには感じられないものがそこにあるから。それはヒップホップとか関係なしに一回見てほしい。
もしダンサーになりたいっていう夢があるんだったら、絶対に来るべき。

AK-69
もっと言ってください!

一同
(笑)。

MASAKI
ダンサーの皆んながライヴに来れない理由の一つに、一生懸命すぎちゃって忙しすぎるっていうのもあると思います。
名前が売れてるダンサーほどワークショップとかで忙しい人が多いから、時間を空ける事って中々難しいんでしょうね。
でもこの1日は本当に休んででも来るべき。来た人と来なかった人で多分全然マインドが変わると思う。

AK-69
この人俺にむっちゃ興味ねぇだろうなって何かわかるじゃないですか?人間って。それがふとした時にたまたまイベントが一緒だったアーティストのダンサーが、何かの拍子に俺のライヴを見た後にコロッと変わる時ありますからね。
それってこっちも一緒で、その人とか、知らないものを知った時って素直に感じれるんだなっていうのはすごく思いますね。結構片意地はってそうな人ほどライヴを見たら、同じバイブスだったりして。別に頼ってねぇからみたいな人ほど、いや一緒だからっていう。そこを感じてもらえたらすごく嬉しいですけどね。
今のヒップホップのノリはどうのこうのとかそういうことにこだわってるやつには響かないかもしれないですね。
ただ一生そうやってやっとけばって。
人間根底に何か一つのことをやってるってことは、絶対それを頑張ってるってことがあるからやってるわけで、その部分は絶対伝わると思うんですけどね。

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