【評論】ダンス部の教育的効果〜DANCEで創る未来を生きるチカラ(後編)
#6 ダンス部ならでは
身体性と芸術性、カラダとアタマ
スポーツ的な側面と文化的な側面を併せ持つダンス部。だからこそ、得られる能力や社会に役立てる可能性は大きい。
緒方先生:音楽を楽しんで踊るという行為は、言語活動よりもはるかに古くから存在し、人間の本能的な活動だと思います。教育的な効果はもちろん、何らかの障害のある方でも踊りたいという欲求はあると思います。以前、知的障害を抱えた方々に対してダンス指導をしたこともありますが、施設の職員の方も驚くほどに皆さん楽しんでくれていました。どのような形であれ、自身を表現し開放するという欲求は、誰もが持っているものだと思います。このような面にフォーカスしていけば、競技だけではないダンスの魅力を教育活動に活かしていけると思います。
桜井先生:ダンス部ならではの活動の特徴は、身体的活動でありながら、創作の部分が重要である点ですね。舞踊だけではなく、音楽や装飾のセンスも必要。だから私としては、ダンス部は文化部に分類したいんです。
神田橋先生:他の部活に対抗するわけではありませんが「ダンスが一番ええぞ」って気持ちはずっとあります。お金がかからないし、どこでもできるし、一生できる。アスリート的な身体性も必要だけど、芸術性や音楽性も必要。得点や記録を目指すわけでもなく、お手本があるわけでもない。勝てる方法をゼロから考えなくちゃいけないけど、考えられる自由がある。既成概念をぶっ壊していく挑戦も面白い。カラダもアタマも、ダンスが一番高度なことをやっているんじゃないかなぁと思いますし、そこで若者が伸びていく能力も本当にたくさんあります。三重高校の場合、ダンス部は文化部にしているんです。やっぱりダンスはカルチャーだから。いつか、文化部が集まって「文化部総攻撃」みたいなコラボやってみたいですね!
#7 ダンスで未来を切り開く
ダンスは心にエネルギーを与えるもの
ダンス部員は全員がプロダンサーになるわけでもなく、実際は高校でダンスやめてしまう場合も多い。しかし、その経験はダンス以外に活かされていき、思わぬ形でみなさんの未来を切り開くお手伝いをしてくれるでしょう。
桜井先生:ダンスは芸術です。音楽と同様、これらは心にエネルギーを与えて浄化していくもの。教育と社会にはむしろ、心の健康のために芸術的分野を普及すべきだと思います。できれば一人よりもグループで。「音楽を合わせることは心を合わせること」ということに気づくだけでも、充分に社会で生きていけると思います。
八木先生:久米田高校の場合は、大会でも準優勝止まりが多いのですが、その時の生徒は卒業する頃には、結果についてはこだわっていませんね。結果は結果、やってきたことに意味がある。大学へ進学して就職面接する頃にも、ダンス部の経験を話すことが多いみたいです。「他の大学生にはない経験を私たちは持っている」って言ってます。
神田橋先生:卒業後の生徒には「面接に強くなった」という話をよく聞きます。国公立の推薦入試にもけっこう受かってますしね。高校生活に頑張ったこと、部活動の内容、イベントやメディアへの出演、仲間や外部との関わり方など、ダンス部の活動にはたくさんの話題や経験がありますからね!
矢下先生:私の考えでは、ダンスは「たかがダンス」なんです。学校やいろんな分野でとりあげていただけるようになりましたが、もっと軽いもので良いし、そもそもは遊びの延長だし、だから自由で面白いという魅力がある。「自由になりたいダンスにしばられてどうすんねん!」と言った先輩ダンサーの言葉も心に残っています。そういう気持ちは忘れてはいけないなと思います。そして、ダンスは一つのツールです。未来を切り開くツール。高校3年間の中で、ダンスを通じて見えた世界を次に活かしてくれれば良いし、もっと追求したい人は続ければいいと思います。
緒方先生:ダンスは、コミュニケーションツールとしてとても有用なものだと思います。一度でも一緒に踊ればもう仲間です。それにより言葉で語るよりもずっと人間関係が円滑になります。それは言語も国境も軽く超えてくれると思います。ダンスの持つ魅力を発信していくことで、まだまだ無限に可能性は広がっていくと思います。
参考アンケート:私はダンス部でこう変わった!!!
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