振付師の思考法【caori】山村国際高校ダンス部2022年作品をセルフ解説

ダンスク!より転載)

「振付師のアタマの中身を覗いてみよう!」ということで好評のこのシリーズ!
あの素晴らしい作品はどうやって生まれているんだろう??
…って、みんなも知りたいところだよね!?

すべて、振付師のイメージと戦略、そして部員との協力体制やマジックがあって生まれているものなのです!

MAAさん(叡明高校)TOMOKOさん(狛江高校)に続いては、今年関東初のダンススタジアム(スモールクラス)覇者となった山村国際高校
その指導とすべての振付を担当するcaoriさんによるセルフ解説。

>>caori(Violet Dance Studio):HP
>>caori:Instagram

●解説する作品
山村国際高校学校2022年スモールクラス作品”悪夢(マリオネット)
ダンススタジアム2022年スモールクラス【優勝】

【DCC2022】山村国際高等学校『悪夢(マリオネット)』
(引用元:YOUTH TIME JAPAN project

部員のアイディアでテーマ完成!

●制作の経緯
山村国際で振り付けコーチを始めて8年目なのですが、2021年度は初めてスモール編成にも挑戦することになりました。
急遽決まったことだったので、私自身がスモール編成での作品作りに対して情報がなかったのですが、なんとか全国大会に出場し、光栄なことにダンススタジアム決勝大会では産経新聞社賞を受賞することができました!

そして昨年の大会を見て勉強し、2022年は優勝を意識して作品を制作に取り掛かりました。オーディションで選んだメンバーは、2年生4名と1年生5名の9名。

スキルと表現力を押した作品にしたかったので、メンバーはかなり厳しくセレクトしました。1曲目の中島美嘉さんの楽曲「Delusion」を聴いた時は、自分の中で描きたいことが溢れていたんですが、それを言葉にするのがなかなか難しく……初めて部員に音を聴かせた時は
「テーマはお人形?みたいな感じで〜、、人形が踊ってるような踊らされてるような〜、なんかダークなイメージで〜、、」
みたいな曖昧なことを私は言っていましたね(笑)。

その後、DCCのテーマである漢字二文字を決める際、メンバーから『悪夢』と書いて『マリオネット』という案を見せてくれた時に
「あー!私のやりたかったこと、これだ!!」
となり、このタイミングで作品の核となる部分が見えたのです。
メンバーがたくさん考えてくれたからこそ、言葉でも表現できる作品になったと思っています。メンバーに感謝です!!

●使用楽曲リスト
01.Delusion / 中島美嘉
02.bad guy / Billy Eilish

●制作段階でのこだわり
音編集の段階から勝負どころを意識して編集しました。
まずマリオネット(操り人形)のネジマキを回すような音を最初に加え、1曲目サビの歌詞で耳に残る『チクタクタク』。時計の音を歌っているので1曲目終わりには時計の秒針の音を入れました。
あとは1曲目は3拍子の変則的な音からのビリー・アイリッシュの「bad guy」で一気に変化を出し、悪夢へ堕ちる様を描きました。音を聴いてるだけで世界観に引き込み、観客があっという間のステージに感じさせるような音作りを常に意識していますね。

●メイクのこだわり
個人的にですが、踊りは群舞として揃えることは大前提に大切にしています。ですが…
「顔に関してはみんな違ってみんないい!!」
表情、表現は自由!!と思っていて、メイクもその子に合ったアイラインの入れ方・ハイライト・眉毛の形があると思います。
この作品は特にメイクも武器にしたかったので、1人ずつメイク指導を行ないました。マリオネット感を出すために、つけまつ毛も上下につけたり、ダブルラインを入れたり…。
みんなが違うマリオネット
一人一人に美しいメイクができたなと思っています。ただ塗るだけでなく、自分の良さを引き出す。これは他校の皆さんもぜひ参考にしていただきたいです!

パートごとの解説

0:00〜0:03
●オープニング
出だしはマリオネットのネジマキが巻かれ動き出すのを表現しました。実はこの3秒にめちゃめちゃハイスキルなものが詰め込まれているんです。センターの子は足を縦に180度開き、足をキープしたまま上半身のみを起こします。映像だと映ってないことがたくさんありますが(汗)、ツカみの部分なので、失敗できないなか勝負しています!

0:04〜
●ご挨拶
マリオネットたちのネジが巻かれ踊り始め、ご挨拶(ぺこり)。
音は柔らかいのですが、あえて少しはっきり目に関節を意識して踊り、マリオネットっぽくカクカク見せています。

0:12〜
●歌詞「これは私が夢で見た時の話」パート
先ほどと同様、あえてカクカクした振りにしています。「夢で見た時の話」の歌の時に目をつぶる振りにして歌詞を表現。

0:21〜
●歌詞「裸足で抜け出し」パート
道を作りリフトでこの歌詞を表現。リフトも<裸足>という歌詞を表現するために、足先が主張するリフトにしています。
 
0:26〜
●歌詞「彷徨っていました」パート
上手の子が暗闇を彷徨うような動作をしてセンターに着地。全員縦一列になります(動画では映ってないかも、、、)。
 
0:30〜
●歌詞「冷たい(はあ〜)」パート
一番前の子が手が凍えているような表現をします。一列奥の人たちの後ろから覗いている振りは闇の中誰かに見られてる、、、的なのを表現しています。
 
0:35〜
●歌詞「川のほとり」パート
センターの子がピルエットトリプルソロ。サビ前に技を決めることで、グッと作品を締めます

0:39〜
●サビ
ユニゾンでは、マリオネットというよりオルゴール人形のように土台の上で踊っているイメージ。振りはしなやかさと柔軟性、体幹を求められます。ここで山国と私にしか出せない踊り方の特徴として、バレエのようなしなやかな振りの中でも流すだけでなく音を刻むようにして踊っています。決してマリオネット感は消さずに、、、。こだわりの振り付けです
 
0:50〜
●歌詞「辿ってくと」パート
これも手振りで歌詞の意味通り<手を辿る>振りになっています。
 
0:54〜
●歌詞「見つけた!!」パート
全員ロンダートからの着地で、望遠鏡(?)みたいに手で丸を作り何かを見つけたような表現。このロンダートは、倒立状態の時の滞空時間が違うと、着地の音が合わずインパクトが半減してしまうため、メンバーも練習を重ね仕上げました。

0:57〜
●歌詞「そっと しー!そっと しー!」パート
歌詞の通りそっと触れたり近づいたりする振りと「しー!」のとこは本当に言ってるような表情を意識。

1:01〜
●歌詞「近づいてみる〜」パート
立っている人は、手を前に伸ばして遠くの光に手を伸ばすように。
ブリッジの子たちで気持ち悪さ不自然さ、マリオネットだからできる動きを表現。


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