胸を貫く美しい世界 ーDAZZLE「ASTERISK」感想ー ビジュアル&ダンスシーン編

5月11日に、ダンスカンパニーDAZZLEが演出・脚本を行う舞台公演「ASTERISK」を見に行きました。 舞台に広がる美しい世界に胸を打たれて帰ってきたので、ダンスシーンやストーリーなどいろんなところにフォーカスしながら公演の感想を書いていきたいと思います。

ASTERISK5月11日に、ダンスカンパニーDAZZLEが演出・脚本を行う舞台公演「ASTERISK」を見に行きました。
舞台に広がる美しい世界に胸を打たれて帰ってきたので、ダンスシーンやストーリーなどいろんなところにフォーカスしながら公演の感想を書いていきたいと思います。


公演「ASTERISK」とは?

「ASTERISK」(アスタリスク)
公演期間 : 2014/5/9(金)〜 2014/5/11(日)
会場 : 東京国際フォーラム ホールC

-あらすじ-
未来に何の不安も抱くことなく、全てにおいて満たされていた兄と妹。しかし、父の死を契機に没落してしまう。みじめな生活から抜け出そうとした矢先、二人は離ればなれに。二人の運命は、再び交錯するのか。答えは月だけが知っている。(webサイトより)

この公演の演出・脚本を行っているDAZZLEは、長谷川達也さん主宰の結成18年のダンスカンパニーです。特色はストリートとコンテンポラリーを融合させた独自のスタイル。国内で積極的に自主公演を行うほか、海外の演劇祭などでも高い評価を得ています。
「ASTERISK」は、DAZZLEメンバーの他にも多数のダンサーがキャスティングされた舞台公演です。出演者の数なんと100名以上!
2013年に初演が行われ、今年はキャストもシーンも増やし、装いを新たに再演が行われました。
コントロールされたビジュアル、多彩なダンス、巧みなストーリーテリングなどどれもすばらしく、東京国際フォーラムに美しきDAZZLEの世界が広がる、圧巻の約2時間でした!

以降、「ビジュアル」、「ダンサーの登場シーン」、「ストーリー」の3つの点にスポットをあてながら、詳しく感想を書いていこうと思います。

※ 一部公演内容の核心に触れますのでご了承ください。

コントロールされたビジュアル

私はDAZZLE演出の公演を見に行ったのは今回がはじめてだったのですが、驚いたのはビジュアルの美しさでした。
どの瞬間を切り取っても、ダンサーのポーズ、立ち位置、衣装などなど、目に映るものが美しく緻密に計算されていて、生ものの舞台なのに、一枚の絵のようでした。

例えばちょっとしたことなのですが、1幕に「窃盗団」というパートがあります。ここでは兄(長谷川達也)率いる窃盗団に扮するSAGGA FLIKKA(初演ではs**t kingz)の4人がセットの階段に座っています。
言ってみればただ座っているだけなのに、それがすごく構図としてはまりがいいんです。
座る位置、ポーズ、何をとっても洗練されていて、ただそれだけの瞬間なのにものすごく見入ってしまいました。こういう舞台作りの緻密さが、あらゆるシーンで感じられます。

他にもパートごとに例を挙げていきましょう。

1幕「サーカス」

色づかいの美しいシーンがあります。
このパートの終わりの方で、幼い兄と妹が離ればなれになります。
このとき、モブを表すダンサーは灰色っぽい衣装を着ているのに対し、兄は白いシャツに黒いズボン、妹は白いワンピースを着ています。ここで、灰色のモブとコントラストがついて兄妹2人の姿がくっきりと浮かび上がります。
さらに、妹は手に赤い風船を持っています。モノトーンの色調の中に、ぽつんと一つ、赤い風船が美しく引き立ちます。
セットも黒と赤しか使用されていないので、舞台上にはモノトーンと赤のみの、そぎ落とされた世界が広がります。それがとても退廃的で、それでいてどこか甘美なニュアンスも感じて、ゾクリとくる美しさを感じました。

2幕「新聞」

ここでは、ダンサーが舞台上に散らばり、一人一人異なるポーズで新聞を広げ、ナレーションでは国内情勢についての説明が入ります。その間、持っている新聞の角度を次々に変えていきます。
この時の立ち位置、広げた新聞の角度、ポーズを変えるごとに見えてくる舞台上の絵が、どの瞬間もすごく美しかったです。
視界にたくさんの人がいながらも、その一人一人の立ち位置やポーズに意味があり、構図にとって大事な要素になっているように思えました。まるでピーテル・ブリューゲルの絵のようなんです。

1幕「記者たち」

これは「氷の瞳をもつ令嬢」として社交界の噂の的になっている妹を、記者たちが追いかけ取材をするというシーンです。
ここでは記者に扮したDAZZLEメンバーがボックスを動かし、仲宗根梨乃さん扮する妹がその上をナレーションに合わせて歩いていきます。
2階席で見ていましたが、縦横無尽に変わるボックスのフォーメーション、移動するボックスの描く軌跡が、計ったように正確で無駄が無く、人間業とは思えないほどきれいでした。

さらにそのボックスの上を一切下を見ずにスタスタ歩く仲宗根さんの美しいこと!
「ボックスの上を歩く」というのは、孤児であることを隠しながら社交界に生きる妹の、「一歩踏み間違えれば今の生活から落してしまう」という生活基板の不安定さを表しているかなと思いました。
それ故に、妹がボックスの上を気高く毅然と歩けば歩くほど、妹がまとっている心の殻の厚さを感じるようで、とても切ない思いがしました。そういった意味でも印象的でした。

1幕「孤児院」

ビジュアルにとって大事な要素と言えば衣装。このパートに登場するVanilla Grotesqueの衣装が好きでした。
Vanila Grotesqueは孤児院の子どもたちという設定なので、衣装は真っ白なチュニックワンピースを一枚ぶかっと着ているのみになります。このワンピース、袖口や裾口がダブッと大きめに作られいて、激しく踊ると布が偶発的にめくれたり、動いたりします。
Vanila Grotesqueは人数が多いチームなので、集団で踊ると一人一人の衣装が見せる表情が違います。それが孤児院の子どもたち一人一人のキャラクターのようにも感じられ、おもしろいなと思って見ていました。


特に印象的だったパートをいくつか挙げましたが、他にもどのシーンも現実を忘れるほど美しく、別世界にいるようでした。

例えば自然とか奇跡とか、私たちが最高に美しいと圧倒されたり、感動したりするものは、人間では無く人智を超えた「神様」のような存在(がいるかいないかは置いておいて)によって与えられるもの。人間が創造するものはそれに及ぶことができない。どこかそんな認識が、私たちの頭の中にあるんじゃないかと思います。
だけど、ASTERISKは神様ではなく人間が、自分たちの体を使ってあんなに美しい世界を作り出していました。
だからこそ私は、舞台上の世界の美しさにこんなに心を打たれたんだと思っています。

多彩なダンス

この公演の一番の見どころはなんと言っても、大勢のダンサーがチームごとに見せる多彩なダンス!
まず出演者計「100名以上」という数のすごさがありました。数が多いことを抜きにしても、どのダンスシーンもすばらしかったです。
さらに、さまざまなジャンルのトップダンサーがそれぞれのスタイルをそのままに、どのダンスシーンも公演のストーリーの中で生きていた。これはとてもすごいことだと思いました。
ここではそんなダンサーの登場シーンをいくつかご紹介していきます。

1幕「留置所」

兄側のストーリーにあるこのパート。ここではタップダンス(當間里美)とハウスダンス(TATSUO、NAO)が披露されます。このタップとハウスのシーンがすごくかっこいいんです!
タップの音色を使ったハウスとのセッションもあり、ダンスとしての見応えは十分。しかも、ストーリー中のダンスの登場のさせ方もとても印象深かったです。

このパートでは、夜の静かな牢獄に「コツーン、コツーン」と當間里美さん扮する看守の足音が響き、それがタップのステップに変化し、タップダンス、ハウスダンスのシーンにつながります。ストーリー上「夜の静かな牢獄」という状況だから、タップの音色がより心に響き、音にも集中してダンスを見ることができました。ハウスの方は、「留置所」「看守」といった設定が、男性2人が踊るハウスを、よりタフでスタイリッシュなものに感じさせてくれました。

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