ダンスがくれた美しい生きるヒント ~Memorable Moment『GIFT』レビュー~
人生の終盤
人生も終盤にくると、パートナーは他界し、娘も親元を離れ、主人公は独りになります。そして、これまでのシーンの数々が、ステージ背後の壁面にシルエットとして投影されます。そこにKAORIaliveさん本人の影を合わせながら、今までの人生を振り返ります。演出がとてもおもしろかったです。
そしてこのシーンは、とても清々しいんです。最後は独りになってしまった人生ですが、今までの人生の苦しみや悲しみの重さがなく、開放感いっぱいに美しく演じているんです。
彼女の人生は、いじめや戦争や死別など、さまさまなつらい出来事を乗り越えたうえにあったと思いますが、その姿からは「生き抜いてきたんだ」という気負いがなく、足取りは羽のように非常に軽やか。そして、人生に関する深い満足を感じます。
それを見て私は、これが、フライヤーにも書かれている「生かされている」という意識なのかな、と思いました。
生かされているから、命があるだけで感謝の気持ちを持つことができるのかもしれません。生かされているから、例え毎日が自分の思い通りにならなくったって、ありのままに受け入れながら、生きていけるのかもしれません。ある種の達観ですね。
とかくストレスだらけの現代社会ですが、この「生かされている」という意識は、現代人にとって自分の心を助けるために良く効くんじゃないかなと思いました。
ストーリーのラストは、箱に入った命というギフトが、さまざまな人たちの手を渡ってくシーンで終わります。人は皆、誰かの命が関わることによってこの世に生まれてきます。そして、自分自身も、ただ生きているだけでも誰かの命に関わっているんだ、という命の繋がりを感じさせる素敵なラストシーンでした。
単に命の素晴らしさを語るだけでなく、生かされていること、繋がっていることを表現することで、自分も、自分に関わるすべての他人も愛おしく思うことができる。これは「命」というテーマに対する切り口として、とても清新に感じました。
そして、ユニゾンやチームワークを大切にするMMだからこそ、美しさをもって表現できることなんだと思いました。
この公演を終わりまで見て、「あっという間に終わった」という印象を持ちました。それは、物足りなかったという意味ではなく、ずっと集中して見続けることができたという意味です。
世の中にストリートダンス系のダンス公演がたくさん出てきた中で、特にこの『GIFT』は素晴らしかったと思います。それはダンス自体が素晴らしいということももちろんあります。さらにその上で、一貫したテーマの感じる演目選びだったり、見る人を飽きさせない多彩な演出だったり、シーンとシーンのつなぎのテンポの良さだったり、約90分の公演作りという意味での素晴らしさをとりわけ感じたからです。
次回の単独公演としては、来年6月に京都公演が決まっています。このきめ細やかな公演作りが、次回さらにどれだけ進化するのかも楽しみです。
