【市ケ尾】青春ど真ん中!生徒自主制作で全国2位!その難しさと素晴らしさ【山口先生】
ダンス部顧問の寄稿シリーズ「顧問の考え」は、昨年度まで神奈川県立市ケ尾高校ダンス部の顧問を務めてきた山口太平先生。
市ケ尾高校は、先日のハイダンFINAL(レポート記事)で準優勝を獲得。コーチもいないダンス部で、作品の振り付けも生徒自主であることを考慮すると、快挙と言える出来事だ。
学生時代からストリートダンスを続けてきた山口先生だが、市ケ尾高校で振り付けをすることはなかったという。
ではどのように、手綱を引いて、生徒たちを全国TOPへ導いていったのか?
その秘訣を、「ダンス部ダンス」に関する明快な分析とともに語っていただこう。
⬇︎今年のハイダンFINALへ挑戦する市ケ尾高校の姿を追ったドキュメンタリー。⬇︎
生徒自主制作の難しさと素晴らしさ
作り手と踊り手が必ずしも同じではないという点で、「ダンス」と「漫才」は似ている、と思います。
文化祭などで、プロの漫才を高校生が丸々「リスペクト(もとい丸パクリ)」しても、十二分に面白い。それに対して、生徒自身が作ったネタの漫才はたぶん大事故多発でしょう…。
それは、やっている生徒自身のスキルの問題ではなく、その前のネタ作り(作品)のところですでに勝負が決まってしまう、ということです。
プロの漫才師のネタに、素人の高校生のネタが勝てるわけがない。勝てないからこそ「プロ」なのです。これはダンスにも同じことが言えてしまいます。
すなわち、ダンスには…
① 作品づくりの勝負
② ダンスの勝負
の二重の勝負があるということです。
そして、②「ダンスの勝負」は同じ高校生同士の戦いですが、①「作品づくりの勝負」においては「プロ対高校生の直接対決」になってしまうのが、今の高校ダンス部の大会です。
①と②どちらが大切かと言ったら、絶対に①。だから、自主制作のダンス部は前提から非常に厳しい。なんなら絶望的なところからのスタート。これが「プロの監督がいるからといっても、直接戦うのは同じ高校生」となる他のスポーツとの圧倒的な差だと僕は考えています。
でも、それでもなお、生徒自主制作の高校が勝つこともあるのが高校ダンス部の世界です。逆に、生徒自主制作が強みになるケースさえある。だからこそ高校ダンスはとても面白い!
では、なぜそんなことが起きえるのか? どうすれば起こせるのか?
僕が生徒完全自主制作の「神奈川県立市ケ尾高等学校」で顧問を務めて蓄積してきた「ポイントかな」と考えている部分を、少しだけ書いてみたいと思います。
あ、個人的にはコーチ作品も大好きですので、誤解なきようよろしくお願いします!
自主制作の強みは「高校生らしさ」
大会を見ていると、コーチ作品か生徒自主制作作品かは一目でわかると思います。
<コーチ作品↔生徒自主制作作品の違い>を僕なりにまとめてみました。
・音どり…小洒落ている↔ストレート
・振付 …小憎い抜きがある↔ぎゅんぎゅんに詰まっている(常にクライマックス)
・構成 …シンメが少ない(四方八方を向いている)↔「0」を中心とした正面向きシンメが多い
・展開 …斬新↔読める
・空気感…洗練されていてプロっぽい↔泥臭いからこそ青春っぽい
こう比べてみると、自主制作系を悪く言っているように見えるかもしれないですが(笑)、決してそういう意図はありません。もちろん振付と構成は、シンプルにコーチ作品を見習った方がいいです。
でもこの違いにこそ、自主制作系で勝つためのヒントがあると思っています。
端的に言えば、「高校生らしいストレートな表現が、感動を呼びやすい」ということです。
ド直球だからこそ、ズカンとダイレクトに胸に来る。プロのダンス作品を見慣れてきた現代だからこそ、一周回って新鮮。目の肥えた審査員の方々なら、なおさらかもしれません。
「プロ野球よりも高校野球の方が好き」という人がいるように、この『高校生らしさ』は唯一無二の武器になりえると思います(これは涙腺の緩んでくるお歳になってきた我々大人の方が腑に落ちるのではないでしょうか?笑)
そして、この作品における『高校生らしさ』は生徒自主制作の方が絶対に出しやすいと、これだけは断言できます。自分たちで作っているからこそ(自分の言葉で話しているからこそ)、そこに想いが全部乗る。「一生に一回」感がちゃんと出る。そして成し遂げた時の達成感がものすごいことになる。
▲自主制作だからこそ、勝った時の喜びはひとしおなのだ。
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