【インタビュー】辻本知彦〜今のダンスに足りないのは「芸術」

ダンスク!より転載)

揃えることと逸脱すること

「面白くなかったです」


ダンススタジアム全国決勝大会、審査員を務めた辻本知彦の閉会式での講評だ。


ダンス大会の講評といえば、まず出場者の労を労い、全体のレベルアップを讃え、その上で具体的な指導や指摘を付け加えるのが常と言えるが、彼のこの言葉はその場をピリッと引き締め、ダンス部全体の足元を見つめ直させる意味があったように思える。


「良いことって、勝手に広がっていくと思うんだけど、同時にその裏の良くない部分も早いうちに考えてしまう癖が自分にはある。ダンス自体は20年前に比べたら遥かに広まってるけど、それで薄まった部分も確実にあるから」 

「優勝チームは素晴らしいと思いました。でも、2位も3位も同じようなダンスで、なぜもっと違うことをやらないんだろう? “こう来たらこう”みたいに、なんでみんな同じようなことをやるんだろう?というのが単純な疑問だったんです」


世間一般的には『パプリカ』ダンスの振付師として知られるプロダンサー・辻本知彦は、このたび自身のキャリアを振り返る書籍『生きてりゃ踊るだろ』を上梓した。

そこには、常に自分らしさを求め、もがき、苦しみ、逸脱し、それでも踊り続けてきた辻本の激しい半生が綴られている。


「確かに、自分は子供の頃から変わっている部分はあったと思うけど、変わってないとも思いたかった。変わっていてもいい、そう教えてくれるのが本当の教育なんじゃないかなと今は思います。協調性も揃えるのも良いこと。でも揃えないこと、自由なこと、逸脱したことも同じぐらい大事だって子供達に教えることができれば、世の中もっと変わるんじゃないかなと思うんです」


大阪生まれ、学生時代はバスケに熱中し、18歳からダンスキャリアをスタートさせた辻本は、テーマパークダンサーからアーティストのバックアップ、コンテンポラリーの舞台、そしてシルク・ドゥ・ソレイユ出演など、順調にキャリアを重ねてきた。世界大会のJUSTE DEBOUT出場などストリートダンスシーンでも名前を知られる存在となる。


「でもどこにも満足したことはないんです。いつも次に次に。名声にも過去にもこだわらない方なので……、いい言葉じゃないですけど、ずっと不満を感じていますね」


写真・鈴木七絵 

ダンスに足りないのは芸術

常に人と違うこと。誰にも似ていないこと。

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