【インタビュー】辻本知彦〜今のダンスに足りないのは「芸術」
ストリートとコンテンポラリーのダンス世界をまたぎ、バレエからヒップホップ、アクロバットまでをこなす身体性と技術を持ち合わせる。
緊張と弛緩。野生と品性。抽象と具象。両性の具有。
両極をシームレスに行き来するかのような辻本のダンサーとしての魅力。
ひとたび舞台に出れば、圧倒的な存在感を放ち、ダンサーの枠に収まらないアーティスト=表現者として、辻本氏のキャリアはどんどん「逸脱」していく——。
「今のダンスに足りないのは、いや、僕がダンスに求めているのは、つまるところ“芸術”なんです。芸術には理解しにくい部分がある。けど理解できないものに対する探究心を、子どもの頃や学校で学んでいない気がする。わかる人だけわかればいい、という状況も良くないと思うから」
「10年後に自分が思っているダンスができるかなぁと思いながら、4年後にできたらいいなと思って今ももがいています。それは例えば、バレエとストリートを合わせたような、芸術性がありながらも、わかりやすいもの。いろいろ口で言うよりも、それを見て皆がそう思えるようなダンスを作りたい。それで出るとこに出ないと。そのために“自分の踊りとその環境”というバランスを作らないといけない」
キャリア途中から振り付け仕事の依頼が増えてきた辻本は、徐々に自分の思考が逆サイドに変わってきたことを感じたという。踊り手としての主観と、振り付けを受ける側の客観。あるいは、やる側と見る側。それは、直感的思考と論理的思考の具有と言えるかもしれない。
「踊る側の想いが強くなりすぎてしまうと、それを客観的に見る視点が薄くなってしまう。きちんと受け手のことや世の中の流れを見るのも大事です。だから、ダンスとは全然違う商売をやってみて、物事を広めるシステムを学びたいなと最近は思っています」
「踊る」という主観と、「広げる」という客観。
強烈な個性とセンスを武器に、ぶつかり合いながらキャリアを重ね、運と縁に恵まれ、こだわりながらも客観性とバランス感覚を磨き、やがては自らの強烈な「個」を救済するかのように、物事を広げるためのさまざまな手法を学んでいく。
「どんなことでも学びがある。そう思わないと傲慢な人間になってしまう。自分が踊っていればいい、自分が良ければいい、それでは社会との接点がないダンサーになってしまうから」
そう語る辻本は、自らの主観、ダンス観に対しても、すでに客観的に捉えている。
